トークリレー

氏名: 東根 まりい

職種: 歯科医師/所属: 医療法人佳聖会深川歯科医院

私のルーティン

 深川歯科医院院長の東根(あずまね)まりいです。やばせ内科クリニックの小山昌平先生よりバトンをいただきました。小山先生がせっかくイタリア料理のお話を書いてくださっていたので、ワインの話で繋げてみようかと思います。
 とにかく開けるまではわからないのがワインなのですが、抜栓してどのタイミングで美味しさのクライマックスが来るかは1本1本違います。はじめから終わりまで味や香りが安定しているものもあれば、浮き沈みの激しいもの、ほんの一瞬だけ華やいで静かに終わるものなど。光と闇、寄せては返す人生の波のようだといつも感じます(御託を並べても一緒に飲んでくださる心優しい友人を募集中です(笑))。 
 さて、我々は毎日、そんな味の機微を感じることができる繊細な口腔内と向き合って仕事をしています。ルーティンというテーマを頂きましたが、仕事に関しては「常に爪を短く切っておく」ぐらいの非常につまらないルーティンしかないことに気づき戦慄しております。ですがつまらぬことも意外と深い話になりそうなので、あと3分ほどお付き合いください。
 駆け出しの頃、入れ歯の内面に材料を敷いて調整したときのこと。外面に余った材料の一部が付着したまま、気づかずに口腔内へ。直ぐにそっと入れ歯をはずした利用者さんから「こういうところに気づいてくれるといいわね」と言われ、猛省したのを覚えています。歯科はよく外科領域と言われますが、狭く敏感な口腔内で処置し、治療の終わった瞬間から日常で機能させる「ライブ」の仕事です。ですから「患者さんの日常を邪魔しない」というのが治療で目指すべきところの一つであると愚考しております。また、色々なインスツルメント(道具)を使う職種でもあります。刃物は研ぎ、精密機器は分解して丁寧に洗い、付着した材料は綺麗に拭き切る。マイナスのファクターを限りなく潰し、同じことをやり続けることで変化や問題に気づくこともできます。そして気付けるようになることがいつしか他人への心配りにつながります。尊敬する心臓外科医の天野先生は、「痒いところに手が届く、否、そろそろ痒くなりそうだという時を見計らって掻く準備をしている、そこまでできたら真の寄り添いだ」と仰います。影の看護部長とも言われるほど、質の高い医療を提供することに余念のない厳しい先生だそうです(ちなみに天野先生ははさみで爪を切ります。私は爪切りです。さいごまでつまらぬ情報をすみません。)
 そんな私は普段、秋田市と能代市、お呼びがあれば岩手に赴き、訪問歯科診療・外来自費診療を行っています。最近は嚥下内視鏡による摂食嚥下機能評価のご依頼が多く、医科の先生方や事業所の皆さん、そしてご家族の方々と繋がる機会が大変多くなりました。在宅診療では、私たち医療者側は切り取られた日常の中で診察をします。一緒に過ごす時間の長いスタッフさんやご家族の皆さんからヒントを頂くことは本当に多いです。昭和の時代、治療後は「痛くなったらまた来てね」が当たり前でした。ですが治療が終わったその日は患者さんの日常生活の始まりでもあります。病気だけをみてきた歯医者は、そろそろその人とその日常に目をむけるべきだと現場で教えていただく毎日です。
 日々みなさんとやりとりをする中で、私が足を向けて寝られない、頼れる看護師さんがいらっしゃいます。SSだんだんの大野詩織さんです。自分の家族のように利用者さんと向き合う、ポジティブで突き抜けて明るい看護師さんです。当院の診療にもいつも真剣に向き合ってくださいます。ぜひご紹介させてください。

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