第38回医療を考えるつどい

長生きのコツとエンディングノート
“幸福な老いを迎えるために”
~あなたは、秋田で健康に長生きするにはどうしたらよいとお考えですか?~

ポスター

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平成28年2月20日(土) 午後1時30分~午後4時40分
秋田ビューホテル・4階

 「健康寿命」は病気などで日常生活が制限されること無く、自立的に生活出来る期間のことで、世界保健機関(WHO)が健康の指標として提唱しています。国際チームの研究の結果、日本の健康寿命は71.11歳、女性75.56歳で世界一でした。さらに、日本は平均寿命も男性80.50歳、女性86.83歳と世界一です。しかし、健康寿命と平均寿命に男女ともおよそ10年の差があります。この差を少なくして健康寿命を延ばし、より幸福な老いを迎えるための「長生きのコツ」を考えます。

 「エンディングノート」とは万一の際の残された人への伝達事項を記載する者です。その作り方や必要性を知ることは、人生を振り返りまとめる際に役立つはずです。
 
 今回はテーマを「長生きのコツとエンディングノート~幸福な老いを迎えるために~」としました。現場の第一線で活躍されている方をお招きし、「長生きのコツ」と「エンディングノート」を軸としてディスカッションします。人生のゴールを見つめ直すことで、それまでの道のりを充実させることができるかもしれません。

たくさんのご参加をお待ちしております。

総合司会   小 貫   学  (秋田市医師会広報委員会委員)
あいさつ    松 岡 一 志 (秋田市医師会長)
祝   辞   穂 積    志 様 (秋田市長)
         小山田   雍 様 (秋田県医師会長)

-基調講演1-
「与命を考える」  秋田大学名誉教授 眞 木 正 博 氏  

-基調講演2-
「支援を受けて、ゆっくり自分で決め、それを記録に残す」 中京大学法科大学院教授 稲 葉 一 人 氏


-パネルディスカッション-    

司会  秋田市医師会広報委員会 担当理事 田 中 秀 則
                       広報委員長 市 原 利 晃 



パネリスト
● クリニック漫談「楽しく笑って長生き人生」
   すずきクリニック 院長               鈴 木 裕 之 氏

● 秋田大学名誉教授                 眞 木 正 博 氏

● 中京大学法科大学院教授            稲 葉 一 人 氏



アンケート結果
総合司会 (秋田市医師会広報委員会委員・小貫 学)

 本日は多くの方にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。総合司会を務めさせていただきます秋田市医師会広報委員会委員の小貫学と申します。よろしくお願いいたします。
さて、最近はメディア等で終活という言葉をよく耳にします。誰しもが人生のエンディング、終焉を迎えるわけですが、長らく日本ではそのような話をすることがタブー視されておりました。しかし、最近は人生のエンディングの事前準備をすることが注目され、さらにそこから自分がどのように自分らしく生きていくのかを考える手段となっています。
 今回はテーマを「長生きのコツとエンディングノート」とし、様々な分野のパネリストの方をお迎えしました。今後をいかに幸せに楽しむかのヒントをいただければと思っております。そしてパネルディスカッションでは、会場の皆様と一緒に考えて行きたいと思います。
皆様のお手元にはアンケート用紙があるかと思います。アンケートは来年度以降の会の企画の参考にさせていただきますので、ぜひご記入をお願いいたします。
それでは開会に先立ち、秋田市医師会長 松岡一志よりご挨拶申し上げます。
松 岡 一 志 秋田市医師会長

 皆さん、こんにちは。秋田市医師会長を務めております松岡一志です。
 本日は週末のお忙しいところ、またお足元の悪いところ大変多数の方にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 この会は秋田市医師会で主催しておりますが、今回で38回を迎える歴史のある会です。テーマはその時々の世相や医療界で話題になっていることなどを参考に広報委員会の先生方が相談して決定しております。広報委員会で決定されたことが理事会に上がって参りまして理事会で最終的に承認を得るという段取りになっています。今回のテーマのエンディングノートが協議題として上がってきたときに私は最初「ん」と思いました。ちょっとどうかなと感じましたが、まずやってみようかといった気持ちでした。今日会場に来るときにどの程度の聴衆が集まってくれるか大変に関心がありました。私は開始30分ほど前に到着したのですが、その時点で250人とのことでした。これほど多数の方に参加していただけたのは、今回のテーマ「長生きのコツとエンディングノート」が真に時宜に適ったテーマであったのだろうと思っております。
基調講演の1として秋田大学名誉教授の眞木正博先生をお迎えしました。先生は大正15年のお生まれで、昨年卒寿をお迎えになっております。今回の講演タイトルの「与命」は、もうどれだけ生きるかという「余命」ではなく与えられた命となっております。与えられた命をいかに生きるかというお話になるのではないかと推察いたします。
基調講演2では中京大学法科大学院の稲葉一人教授をお招きしてエンディングノートについての講演をいただきます。エンディングノートはウィキペディアによりますと高齢者が人生の終末期に迎える死に備えて自身の希望を書き留めておくノートとのことです。今医療の現場でも終末期の医療をどう決定するかということがしばしば問題になります。私はいわゆる団塊の世代で高齢者の範疇に入る人間ですが、子供たちには延命治療はしないようにということだけは伝えてあります。
今日は基調講演の後にパネルディスカッションもありますので、会場の皆さんにも参加いただいて意見交換ができればと思っております。
それでは本日もよろしくお願いいたします。穂 積   志 秋田市長

 皆様こんにちは。ご紹介いただきました秋田市長の穂積志でございます。
 本日、この会場に多くの皆様が勉強のために駆けつけられており、秋田のご高齢の方は元気だなと嬉しく思っております。よく笑い話で、健やかに老後を生きるためには“きょうよう”、あるいは“きょういく”が必要だと言われております。私も生涯教育で勉強しなくてはならないのかなと思ったのですが、“きょうよう”は、今日用事がある、“きょういく”と言えば今日行くところがある、だと言います。人間は一人では生きていくことができず、人と交わって会話をすることが元気の源になるのだなと感じております。そういう発想の中でワンコインバスも制度化いたしました。これまで70歳以上の方々の1回の利用で100円となっておりましたが、年齢を引き下げて68歳からとさせていただきました。免許の返納運動がありますが、これは65歳からとなりますので、財政が許せば65歳くらいまで年齢を下げていきたいと考えております。
 太平山のグランドゴルフや河辺の温泉施設に行くと、「市長、いいことをしてくれた。コインバスのおかげで施設に来れるようになった」と声をかけていただくようになりました。これまでは400円、700円のバス代がかかったところを今は100円で行けるようになったこともあり、大勢の方が外に出るようになったのかなと思っております。
 私の父は93歳まで生きました。90歳になった頃、「仲間が誰もいなくなってしまった。自分の弔辞を読んでくれる人がいない」と言っておりました。生前葬をしようかという話もしておりましたが、結局生前葬はしませんでした。
 我々も生まれてきた以上は必ずあの国に行かないといけません。また、自分の人生ですので、人に代わってもらうことはできません。人生は一度きりです。その中で我々が今どのように元気に生きていくことができるのかということも、永遠の命題だと思います。今日は眞木先生をはじめ、医師会の先生方からご教示いただきながら、皆様には健康でこれからも元気にお過ごしいただきたいと思います。
 この会を開催された松岡医師会長様をはじめ、理事の先生方、そして医師会員の皆様に心から感謝を申し上げまして、お祝いの挨拶といたします。本日はおめでとうございます。
小山田 雍 秋田県医師会長

 秋田県医師会の小山田でございます。この会は今回で38回と、昭和50年代にはじまり、秋田市は早くから開催しております。秋田県医師会もこの会に非常に強く関わり、ご支援申し上げております。全ての郡市医師会でも開催しており、大変関心を集めております。
 本日のお話にも出てまいりますが、私どもは高齢社会の最先端を歩いていると言われています。高齢ということは非常に結構なことです。自立して健康な生活をする健康寿命と生涯の寿命の差をいかに縮めていくかということが大きな課題となっています。ご存じかと思いますが、秋田県の高齢男性の健康寿命と生涯の寿命の差は少ない方です。全国平均では10年くらいの差がございます。つまり、10年くらいはあまり健康ではない生活で生を終えるということです。秋田県の男性は9年を少し切るかと思います。私どもはそこをいかに縮め、健康寿命を長くするかというところに力を注いでおります。例えば、メンタルヘルスです。うつに対する専門医と協力医のネットワーク、認知症に対するサポート医と協力医のネットワーク、また、それに協力している医師の情報を世間に公開して、着々と成果を上げつつ頑張っております。
私は、数年前に日本医師会の中にある生命倫理懇談会という会に所属しておりました。そこでは最後にどのように生を終えるか、またはその逆の生命の誕生時に、妊婦さんの血液から出生前に胎児の異常が分かってしまうこと等に関する、いろいろな生命倫理的な議論を行った記憶がございます。その中でも、本日のエンディングノートにも関連するかもしれませんが、「リビングウイル」という、どのように自分の生涯を終えるのかという非常に大きな問題がございます。それに関連する機能を私どもは「かかりつけ医機能」と言っていますが、私どもの言うかかりつけ医とは、専門者と連携ができ、正しく広い医学情報、知識を常に持っているということ、医療のことだけでなく、ご家族のことや社会制度のことなど、生活全般にわたり幅広くご相談に乗れる医師を指します。それを目指そうということで、日々研修を積み、生涯研鑽という気持ちで活動しております。
私どもは健康寿命を少しでも長くするために皆様に寄与していこう、ということで活動しております。そこには当然高い倫理観が必要になります。私どもは国民、住民の方々への宣言として、医の倫理綱領を持っております。安全と高い質を求めながらもそこに高い倫理観を高揚させていこうという考えを絶えず持ち、活動しているつもりでおります。そして医療は、住民の方々と我々医療を提供する側との連携と共同に尽きるのだと思います。皆様との共通の意識、理解、信頼を常に保っていくように努力してまいりたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

総合司会  それでは第1部の基調講演に入ります。基調講演は眞木正博先生です。では、眞木先生よろしくお願いいたします。- 基 調 講 演 -

 「与命を考える」眞木 正博(秋田大学名誉教授)

本報は秋田市および秋田市医師会主催の市民公開講座(平成28年2月20日)、「第38回医療を考えるつどい」において、基調講演として述べたものである。一部、追加部分があることをご了承いただきたい。
伝統あるこの市民講座でお話しする機会を与えられ、身に余る光栄と感謝している。今年の6月に満90歳を迎えることになるが、「与命を考える」などという大げさなお話をすることに、おこがましいことのようにも思っている。私はもともと産婦人科医であり、多くの生命誕生に携わり、またここ20年ほど介護老人保健施設で高齢者の介護や看取りにも立ち会っている。つまり、生から死までの仕事に携わってきたので、生死の問題を語りうる有資格者のひとりではないかとひそかに思っている。平均余命の言葉があるが、これは公用語なので認めざるをえないが、私自身は、余った命の余命ではなく、天から与った大事な与命であると考えるのがよいと思っている。
1.人の生涯
すべての生物にとって生は偶然の授かりものである。世界の人口72億人の中の半分の異性36億人から1人のパートナーに恵まれ、ひとつの生命が誕生したとする。1回の射精で放出される精子は1億であり、女性の生涯排卵数は400~500個であるから、まさに千載一遇の巡り合わせといえる。受精卵は胎児期・乳幼児期(受け身的受動期)、就学期(受動から能動への移行期)、成熟期(能動的活動期・再生期-reproductive age)を経て老年期となり、いずれ誰もが必然的に死亡する。多くの生物は生殖能力を失うと間もなく死滅するが、人間のみは生殖能力を失ってからも、それまで生きてきた年月にほぼ匹敵するほどの長生きをすることが可能になった。これはたかだかここ数十年の間の出来事で、人間にはこの長寿時代に備えての心の準備はまだ十分にはできていない。
 高齢人口が増え、「人は死なない」かのような錯覚をもっている方が多くなっているが、そんなことはない。人間を含めて、すべての生物は一定の寿命の後に、かならず死に至る。平成25年の厚労省統計によると、60代人口は約1800万人、加齢につれて減少し80代人口は700万人代、90代は35万人と激減し、百寿者は6万人と希になる。それでも、30年ほど前は600人程度だったから、百寿者の数は100倍も増えていることになる。それでも123歳以上にまで生き延びた人はまだ存在しない。
2.遺伝子支配下にある生物
人間を含めて生物の行動は、それぞれの種属毎の遺伝子の支配下にあり、基本的には個体保存および種属保存のための本能的行動をとる。ただし、高度に進化した人間の頭脳は精神活動を獲得し、文化を発達させ、本能的行動に任せるだけでなく、他の存在を認識し、お互いに豊かで幸せな生き方も求めてきた。
1)死を恐れる 
 死は個体保存や種族保存にも逆らうことであり、生物にとって最も忌まわしいことである。外敵に襲われた動物は身の危険に恐怖を感じ、敵を攻撃するか、敵から逃避するかの行動をとる。人間とて同じことである。死には恐怖の情念がつきまとい、その原因となる病や悪環境と闘い、不老長寿を求めて医学や薬学を進歩させてきた。
2)幸せを求める
人間は死を恐れるとともに幸せを求めて生きている。なにかの記事にフランス人高齢者の幸福度というのがあった。それによると、幸せだと感じている人が86%もあったという。その理由は一にも二にも健康とあり、つぎに身寄りがあり孤独ではない、周囲が安全安心である、自由感があるなどのことをあげていた。
 日本人の場合はどうだろうか。内閣府調査(2008)によると、現在の多くの日本の高齢者はあまり幸福とは思っていないようである。
アメリカのピューリサーチセンター調査(2014)によると、幸福感はアメリカ・ドイツ・イギリス・フランスなどの欧米諸国が上位にある。また、発展途上の国々も幸福感が高く、日本人の幸福度はGDPが高いのに世界最下位であったという。
日本人も西欧人も、親の保護下にある15歳頃までは幸福感が高く、競争が激しくストレスまみれの青壮年時代は幸福感が減る傾向にある。ところが、高齢者の幸福感には日本人と欧米人の間で大きな違いがある。つまり、欧米人の場合は高齢になるとU字型に幸福感が回復するが、日本人ではL字型で幸福感に戻りはないという結果であった。
日本の高齢者は介護保険制度の下に平等にそれなりに保護されている。また、日本の国民皆保険制度では誰もが、いつでも、どこでも平等に受診できることを保証している。おかげで世界一級の長寿国家であり、WHOお墨付きのすばらしい制度である。なのに、日本国民の医療や介護に対する満足度は低いとされている。なぜだろうか。考えてみると、日本人はいつももっと良いもの、さらに良いものをと完全なものを求め続けているから、現状には満足できないでいるというだけの話であり、心底、日本の医療や福祉は世界に比べて劣るとは思っていないのではあるまいか。私は昭和40年頃、ニューヨーク大学病院に留学していたが、貧富の差によって施される医療の質に大きな差があることに驚き、日本の国民皆保険制度は素晴らしいものと思った。
3.人の寿命
人間の最高長寿者はギネスブックによれば、フランス人女性のジャンヌ・ルイーズ・カルマンさんの122歳である。ついで、日本人の泉重千代さんの120歳とあったが、実は107歳であったことがわかり、ギネスブックから脱落した。なお、2015年4月1日亡くなった大阪の大川ミサヲさん(117歳)は存命中世界一長寿者であった。ともあれ、過去に122歳まで生存していた人がいたという事実があるからには、人間誰しも122歳頃までは生存する力を秘めているといえる。
百寿者(centenarian)にはどのような特徴があるのだろうか。ひとくちにいえば運のような気がする。ただし、「人間の運命は人間の心の中にある」というサルトル(フランスの実存主義哲学者)の言葉、「運命は性格のなかにある」という芥川龍之介の言葉も忘れてはなるまい。
長寿には遺伝的な素因もあり、兄弟姉妹に百寿者がいれば、百寿者になる可能性は、一般の人の10倍は高い。喫煙、肥満、高血圧、糖尿病、心血管病などのある者は百寿者になることは希である。百寿者には長寿遺伝子(sirtuin)をオンにさせる生活習慣、例えば、腹八分目・ウォーキングなどを心がけている人が多い。また、よく笑い、ストレスにうまく付き合える人が多いとされている。ものごとをやるのに面倒くさがらない。実は、大事なことほど面倒なものである。
日本人の平均寿命(2015.7.30)は男性では80.50歳、女性では86.83歳であり、世界の最長寿クラスである。ただ、日本人の長寿に対していろいろな意見もある。たとえば、介護施設入所者の経管栄養の多さを見てつぎのような言葉があった。
ある政治家「自力じゃなく金で買っている長寿じゃない?」、イギリスの健康福祉関係某高官「はは-ん、これが日本の世界的長寿の元なのですね」、あるアメリカの友人「Are they really happy? 彼等彼女等は本当に幸せなのでしょうか?」、国境なき医師団の関係者「この金の一部でも世界の飢えている子どもたちのために使わせてくれたらなぁ」、韓国マスコミ「日本の高齢者死後無届け放置の報道以降、日本の長寿統計は信用に値しない」などなど。
 欧米人の多くは老衰して食べられなくなったら人生は終わりと考えている人が多いようだ。日本の現状は経済的余裕に支えられ、生命最優先の考え方が基本になっている。日本の高齢者にはありがたいことであるが、貧困国にも少しは目を向けて欲しい。
4.寝たきりは日本特有のもの?
 外国人には日本人のような寝たきり老人はいないという。それには、それなりの理由がある。外国の机と椅子、ベッド生活などは個室で自由に動ける環境であり、寝たきりにさせない工夫をしている。
 畳・卓袱台・布団生活、和式トイレはある年齢までは足腰の鍛えにはなるが、いずれ負担が大きくなり、高齢者の寝たきりを招きやすくなる。年齢や体力に応じた生活様式を考える必要がある。
 外国では自力で食べられなくなっても、人工栄養補給は受けない。単なる延命措置は非倫理的、独善的な行為とみなし、無理な延命措置はせず、自然な死を迎えるのが高齢者の尊厳を保つ最善の方法であると考えているようである。日本人ではそこまで徹底はしていない
5.天寿を妨げるもの(短命化因子)
日本人の平均寿命は、男女平均84歳で世界一級の長寿国である。しかし、世界最高長寿者は122歳であるから、そこには約40年という大きな差がある。多くの人は最高の天寿達成を妨げるいろいろな因子、つまり短命化因子に曝されて命を縮めているといえる。短命化因子にはつぎのようなものがある。
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