アクアリウムと開業医

土崎駅前内科 堀江 泰介

アクアリウムと開業医

昨年春から私にはアクアリウムという趣味が増えました。最初は甥が縁日で取ってきたアカヒレを飼い始めるところから始まったのですが、やってみると大変奥深いのです。
 まず大事なのはアカヒレなどの生体が出す糞や餌の食べ残しから生じるアンモニアを処理することです。アンモニアは生体にとって猛毒で、これは硝化菌というバクテリアで速やかに分解しなければなりません。硝化菌を水槽内で増やすには表面積の大きい物質を水流のある場所に固めて置く必要があり、そのためにろ材を詰めたろ過フィルターを使います。それらを使うとアンモニアを分解できますが、すると今度は硝酸塩という分解産物が生じます。硝酸塩はアンモニアほど有害ではないのですが、多量になるとやはり生体に負担をかけます。ただ硝酸塩を分解するバクテリアは水槽内では増やしづらく、定期的に水替えを行い除去する以外には、水草を配置して吸収させるしかありません。水草を配置すると、光合成を行わせるためのライトも設置する必要があります。ここまでやって初めて水槽内で生体サイクルが作られますが、水槽のサイズ、生体の数、餌の量、ろ材やろ過フィルターの種類、水草の種類や量、ライトの照明量などを、全体のバランスを崩さない様に一つずつ検討します。大変難しい作業ですが、うまくはまり元気に泳ぎ回る生体を見る喜びはひとしおです。
 私はかなり若くして開業医となり今年で7年目ですが、何をやりがいにしてこの仕事を続けているのか考えることは少なくないです。専門医から指導医へと一般的なキャリアを辿られた医師ほど私は専門的な技術や経験を獲得しておらず、そこに誇りは持てません。地域医療に貢献することに生きがいを感じているかというと、正直そうでもないです。また俗な話になりますが、開業することで金銭的に裕福になったかというと、これも違います(近年戸建てで開業された先生方にはご理解頂けると思いますが、預金残高は本当に増えません)。しかし開業医という仕事にひとつの面白さも感じていない訳ではありません。自らが建てた医院を回すこと自体、つまり患者を回して得た収入で借入金を返済し、スタッフを雇い、余剰金で新たな設備投資や賃上げをし、また患者を回すというサイクルを作ることそのものにやりがいを感じております。患者はもとより、スタッフも含めて当院の中で過ごす方にそれなりに満足して頂ければ、その環境を作れたことに嬉しくなります。つまりアクアリウムも開業医という仕事も、閉じられた環境を作り上げる自己満足感が私には報酬となっているのです。
 しかし水槽環境は些細な出来事ですぐに崩れます。診療報酬改定を始めとして開業医には些細とは言えない出来事が多すぎる現在、当院の生体サイクルをいつまで維持できるか、心労は絶えません。
 次回は医局の先輩であるふくおか内科クリニックの福岡先生にお願いをさせて頂きました。

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