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健康診断結果の読み方
1)健康診断の種類   3)健康診断の事後措置
家族歴
 大切なのはくも膜下出血の家系です。祖父、祖母までの親族にくも膜下出血で死亡あるいは手術した人がいれば、ご自身が特に症状がなくとも一度は脳ドックを受けるか、脳神経外科を受診して、能動脈瘤の有無を調べてもらうべきです。
 また、多発性嚢胞腎と診断された方の脳動脈瘤合併の割合は12〜16%と高率ですので、同じく脳の検査を受けるべきです。


標準体重
 標準体重(Kg)は、身長(m)2×22で算出します。
 肥満度は、最近はBMI(Body Mass Index)指数で判定します。
BMIは体重(Kg)÷身長(m)2で計算し、22を正常値としていますが、普通体重として18.5〜24.9と幅を持たせています。
指定区分
低体重
普通体重
肥満1度
肥満2度
肥満3度
肥満4度
BMI指数 18.5未満 18.5
  〜24.9
25.0
  〜29.9
30.0
  〜34.9
35.0
  〜39.9
40.0以上
腹囲測定
 平成20年4月より定期健康診断においても、特定健診の関係で腹囲測定が新しく加わりました。
 男性≧85cm、 女性≧90cm ですと内臓脂肪(腹腔内脂肪)が多いと判定されます。
 腹囲測定は、立った姿勢で、息を軽く吐き、おへその位置で測定します。明らかにおなかが出ている人は、一番下の肋骨と腰骨の一番上の中間の高さで測定します。この基準には異論があり、女性ではおへその高さで測定すると骨盤の大きさを反映してしまい問題であるとの指摘もあります。

血圧測定
 2009年1月、日本高血圧学会は高血圧治療ガイドラインを改訂しました(JSH2009)。高血圧は 140/90mmHg以上と定義しています。家庭で測定した血圧では、135/85mmHg以上の場合高血圧
とされます。高血圧症を、さらに次の3段階に分類しています(表1)。

 �@�T度高血圧(収縮期140〜159mmHg または 拡張期90〜99mmHg)
 �A�U度高血圧(160〜179mmHg または 100〜109mmHg)
 �B�V度高血圧(180mmHg以上 または 110mmHg以上)

 同ガイドラインは、降圧目標を高齢者においては140mmHg/90mmHg未満、若年・中年者においては130/85mmHg未満、糖尿病患者、慢性腎臓病(CKD)患者においては130mmHg/80mmHg未満に設定しています(表2)。収縮期血圧と拡張期血圧が異なる分類に属する場合には、高い方の分類に組み入れられます。

 高血圧は脳卒中発症の最も重要な危険因子ですが、他の心血管病発症にとっては危険因子に一つに過ぎず、高血圧患者さんの病気の見込みは高血圧のほかに、高血圧以外の危険因子(表3)および高血圧に基づく臓器障害障害の程度ならびに心血管病合併の有無が深く関与します(表4)。

 高血圧治療ガイドライン(JSH2009)においては、高血圧患者さんを表5のように血圧分類、主要な危険因子(表3)、高血圧性臓器障害・心血管病の有無(表4)により、低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化されます。今回の改訂では、130〜139/85〜89mmHgの正常高値血圧であっても、糖尿病、腎不全、3個以上の危険因子、臓器障害、あるいは心血管病を有する場合は、リスク第三層の高リスクであり、臨床的には高血圧と判断し、降圧療法を考慮することが新たに加えられました。

 初診時の高血圧管理計画は図1に示すとおりです。
 薬物治療と同時に、生活習慣の修正が必要であることは言を待ちません(表6)。特定保健用食品は、保健用途、効果を厚生労働大臣が許可した食品で、「保健の効果」や「栄養成分の機能」などを表示できるものを言います。血圧に有効とされる食品の降圧機序としてACE阻害活性に基づくものが多いのですが、表示されている「一日当たりの摂取目安量」を正確に守りましょう。また、特定保健用食品の摂取が、降圧薬の代わりになるものではありません。特に、上記したリスクに該当する方は、医療機関を受診して指導に従ってください。すでに降圧薬を服用している患者さんでこれらの食品を使用したいと考えましたら、かかっている医師に相談するようにしてください。

表1 成人における血圧値の分類

分  類

収縮期血圧

       

拡張期血圧

 至適血圧
    < 120   かつ     < 80
 正常血圧
    < 130   かつ     < 85
 正常高値血圧
    130〜139   または     85〜89
 �T度高血圧
    140〜159   または     90〜99
 �U度高血圧
    160〜179   または     100〜109
 �V度高血圧
    ≧ 180   または     ≧ 110
 (孤立性)収縮期高血圧
    ≧ 140   かつ     <  90

表2 降圧目標

 

診察室血圧

家庭血圧

若年者・中年者

130/85mmHg未満

125/80mmHg未満

高齢者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

糖尿病患者
CKD患者
心筋梗塞後患者

130/80mmHg未満

125/75mmHg未満

脳血管障害患者

140/90mmHg未満

135/85mmHg未満

注:診察室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが、高血圧の
診断基準であることから、この二者の差を単純にあてはめたものである。

表3 心血管病の危険因子
高齢(65歳以上)
喫煙
収縮期血圧、拡張期血圧レベル
脂質異常症:低HDLコレステロール血症(<40mg/dl)
        高LDLコレステロール血症(≧140mg/dl)
        高トリグリセライド血症(≧150mg/dl)
肥満(BMI≧25)(特に腹部肥満)
メタボリックシンドローム
若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴
糖尿病:空腹時血糖≧126mg/dlあるいは
     負荷後血糖2時間値≧200mg/dl

表4 臓器障害/心血管病

脳出血・脳梗塞、無症候性脳血管障害、 一過性脳虚血発作

心臓

左室肥大(心電図、エコー)、狭心症・心筋梗塞・冠動脈再建、心不全

腎臓

蛋白尿(尿微量アルブミン排泄を含む)、低いeGFR(<60mL/分/1.73�u)、慢性腎臓病(CKD)・確立された腎疾患(糖尿病性腎症・腎不全など)

血管

動脈硬化性プラーク、
頸動脈内膜・中膜壁厚>1.0mm、大血管疾患、
閉塞性動脈疾患(低い足関節上腕血圧比:ABI<0.9)

眼底

高血圧性網膜症


表5 (診察室)血圧に基づいた脳心血管リスク層別化
                    血圧分類
               \    (mmHg)
 リスク層(血圧以外のリスク要因)

正常
高値血圧
130〜139
/85〜89

�T度
高血圧
140〜159
/90〜99

�U度
高血圧
160〜179
/100〜109

�V度
高血圧
≧180
/≧110

 リスク第一層
 (
危険因子がない)

付加リスクなし

低リスク 中等リスク 高リスク
 リスク第二層
 (糖尿病以外の1〜2個の危険因子、
  メタボリックシンドロームがある)

中等リスク

中等リスク 高リスク 高リスク
 リスク第三層
 (糖尿病、CKD、臓器障害/心血管病、3個
  以上の危険因子、のいずれかがある)

高リスク

高リスク 高リスク 高リスク

図1 
初診時の高血圧管理計画
 



表6 生活習慣の修正項目

 1) 減塩

 6g/日未満

 2) 食塩以外の栄養素

 野菜・果物の積極的摂取
 コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
 魚(魚油)の積極的摂取

 3) 減量

 BMI(体重[Kg]÷身長[m]2)が25未満

 4) 運動

 心血管病のない高血圧患者が対象で、中等度の強度の有酸 素運動を中心に定期的に(毎日30分以上を目標に)行う

 5) 節酒

 エタノール男性で 20〜30ml/日以下、
       女性で 10〜20ml/日以下

 6) 禁煙

 




生活習慣の複合的な修正はより効果的である

※重篤な腎障害を伴う患者では高K血症をきたすリスクがあるので、野菜・果物の積極的摂取は推奨しない。糖分の多い果物の過剰な摂取は、特に肥満症や糖尿病などのカロリー制限が必要な患者では勧められない。
尿検査
 尿糖が陽性になる疾患は糖尿病腎性糖尿の2つがあります。糖尿病の場合は血糖値とヘモグロビンA1cの増加が認められますが、腎性糖尿病の場合はこれからの増加はありません。
 尿蛋白が陽性の場合は、何らかの腎実質性障害のあることを意味します。しかし、軽度の蛋白尿の時には、病的な意味のないこともあります。すなわち、運動後、入浴後、発熱時、月経前などでは腎臓に障害がなくとも尿蛋白が陽性になることがあります。従って、尿蛋白陽性の場合、日にちを替えて2〜3回検査を繰り返すことが必要です。持続的な蛋白尿がある時は、一日尿蛋白量の程度を測定します。そのためには、丸1日分すべての尿をためておかねばなりませんが、現在では外来受診時に出してもらった1回尿中の蛋白量とクレアチニン量を測定して、蛋白量(mg/dl)/クレアチニン量(mg/dl)=1日蛋白量(g/日)として推測できます。1日蛋白量が1g未満では腎病変はそれほど進行しませんが、1g以上の場合には進行することが多いと考えられます。成人の場合、疾患としては慢性糸球体腎炎、腎硬化症、糖尿病性腎症が多いようです。
 尿潜血反応は、尿中の血液の一部が溶血しているので、赤血球に含まれるヘモグロビンに反応して陽性を示します。


 試験紙による尿潜血反応の検出感度は非常に鋭敏であり、健常人の集団健診でも約10%ほど陽性に出ます(偽陽性が10%はあります)。尿潜血(+)の場合、さらに尿沈渣検査によって、本当に赤血球が尿中に出ているのか確認します。顕微鏡の400倍で検鏡し、毎視野赤血球5個以上の時、病的血尿として精密検査が必要になります。血尿には、自分の目で分かる血尿(肉眼的血尿)と、目で確認できない血尿(顕微鏡的血尿)があります。肉眼的血尿の3分の1は膀胱炎、3分の1は尿路結石であり、症状のない肉眼的血尿の原因は腎臓や尿路の悪性腫瘍の可能性があります。顕微鏡的血尿で蛋白尿を伴い、尿沈渣で円柱や赤血球の変形が見られた時は、慢性糸球体腎炎が考えられます。
肝機能検査
 GOT、GPTは肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が障害を受けると、血液中に遊出して、これらの値が上昇します。従って、血清GOT、GPTの増加は肝・胆道系疾患があることを意味します。GPTの方がGOTより肝臓に多く含まれており、肝障害の場合は通常GPT>GOTになります。ただし、アルコール性肝障害や肝硬変、肝がんでは、GOT>GPTとなります。肥満や糖尿病などで脂肪肝となった時はGPT>GOTですが、アルコール性脂肪肝ではGOT>GPTとなることが多くなります。
 γ-GTPは、肝・胆道系疾患(胆石・胆のう炎、胆道がんなど)の診断に有用であり、特にアルコール性肝障害または飲酒の指標として利用されています。
 ALPは胆道系酵素とも呼ばれており、胆汁の流出が障害された時上昇します。また、骨の病気でも増加します。
脂質検査
 2007年、動脈硬化性疾患予防ガイドラインが改訂されました。従来高脂血症という呼称でしたが、低HDL−C血症を含む表現として適切でないこと、諸外国の記載と統一するために、脂質異常症と名称が変更されました。脂質異常症の診断基準は表6に示すとおりです。新ガイドラインでは、図2及び表7に示すように、LDL-C以外の主要危険因子数で患者カテゴリー分類をします。従来のガイドラインと変更された点は、まず1次予防と2次予防に分けたことです。1次予防とは、脳卒中や心筋梗塞等の心血管病予防のことで、生活習慣改善が中心となります。2次予防とは、既に心血管病に罹患してしまった患者さんの増悪防止のために治療するということで、薬物療法が中心となります。従って、両者では治療の考え方が根本的に異なります。しかし、一次予防についても、図1に示すとおり低リスク群では徹底的に生活習慣の改善を追及すべき段階から、高リスク群ではある程度薬物療法も念頭において生活習慣の改善指導をする段階まで、患者さんの置かれている状況をよく判断して、臨機応変に治療方針を立てる必要です。


表6 脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
 高LDLコレステロール血症  LDLコレステロール ≧ 140mg/dL
 低HDLコレステロール血症  HDLコレステロール < 40mg/dL
 高トリグリセリド血症  トリグリセリド ≧ 150mg/dL
この診断基準は薬物療法の開始基準を標記しているものでない。
薬物療法の適応に関しては他の危険因子も勘案し、決定されるべきである。

LDL-C値は直接測定法を用いるかFriedewaldの式で計算する。
(LDL-C = TC − HDL-C − TG/5[TG値が400mg/dL未満の場合])
TG値が400mg/dL以上の場合は、直接測定法にてLDL-C値を測定する。



図2 患者カテゴリーと管理目標からみた治療方針

※血圧脂質測定:原則として12時間以上の絶食後採血とする。
※※脂質管理目標値 : 表7参照


注)糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症があれば他に危険因子がなくても�Vとする。



表7 リスク別脂質管理目標値

治療方針の原則

カテゴリー

脂質管理目標値(mg/dL)

 

LDL−C以外の
主要危険因子※

LDL−C HDL−C TG
1次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する。
�T(低リスク群) <160 ≧40 <150
�U(中リスク群) 1〜2 <140
�V(高リスク群) 3以上 <120

2次予防
生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する。

冠動脈疾患の既往

<100
脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要がある。
腎機能検査
 尿素窒素、クレアチニン、尿酸の3つは腎機能を評価できる指標ですが、これらはいずれも腎不全(血中の老廃物が濾過できなくなった状態)になって初めて増加します。従って、これらの値が正常であっても、本当に腎機能が正常であるかどうかは評価できません。本当の腎機能検査はクレアチニンクリアランス(500mlの水を飲んで2時間かけて採血・採尿してそれぞれのクレアニチン値を調べる)が必要です。この3つの指標の中で、最も重要なものはクレアチニンです。尿素窒素は絶食、消化管出血などでも上昇します。
血糖検査
 正常値は空腹時で60〜109mg/dl(血漿)であり、空腹時血糖が126mg/dl以上か随時血糖値が200mg/dl以上の場合、糖尿病型と診断されます。
 空腹時で110〜125mg/dlの時には、75g糖負荷試験が必要です。
1) 早朝空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負
  荷試験(OGTT)2時間値200mg/dL以上のいずれかであれば糖尿病型と判定します。

2) 糖尿病型でかつ糖尿病の典型的症状があるか、HbA1c 6.5%以上であれば、糖尿病と診断
  できます。

3) 糖尿病型であるが、HbA1c 6.5%未満で身体的特徴もない場合は、もう一度別の日に検査
  を行い、糖尿病型が再度確認できれば糖尿病と診断できます。

4) 糖尿病型の場合は、再検査で糖尿病と診断が確定しない場合でも、生活指導を行いながら
  経過を観察します。

5) 境界型は糖尿病予備軍であり、運動・食生活指導など必要な場合が多いです。
  (境界型:空腹時血糖値110〜125mg/dLまたはOGTT2時間値140〜199mg/dL)

 


糖尿病の臨床診断



血糖コントロールの指標と評価

指標
不十分     不良
不可
HbA1c値(%) 5.8未満 5.8〜6.5未満 6.5〜7.0未満 7.0〜8.0未満 8.0以上
空腹時血糖値
(mg/dL)
80〜110未満 110〜130未満 130〜160未満 160以上
食後2時間
血糖値
mg/dL
80〜140未満 140〜180未満 180〜220未満 220以上

日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2006−2007.22頁、文光堂、2006より

尿酸検査
 尿酸はプリン体を多く含む食物(レバー、ひもの、肉、魚など)を過食すると上昇します。また、尿酸は痛風患者で増加し、尿酸が8.0mg/dl以上になったら治療が必要です。
血球数検査
1)赤血球数
�@貧血の場合、重要なのはヘモグロビン値です。成人の男性の場合はヘモグロビン値は変動の幅が狭い。月経のある女性は出血量、食事内容などにより個人差が大きい。日常生活ではヘモグロビン11.0g/dl 以上あれば、ほとんど支障はありません。しかし、血清鉄やフェリチン(貯蔵鉄)の低下が明らかであれば、鉄欠乏性貧血ですので、鉄剤の服用をお勧めします。普段よくみられる貧血は鉄欠乏性貧血ですが、原因を調べることが大事です。成人男性でこのタイプの貧血がみられたら、消化管の癌と痔を考えなくてはなりません。


�A多血症の場合、ヘモグロビン値よりもヘマトクリット値が重要な指標となります。ヘマトクリット値が54%以上の場合を多血症と言います。多血症には3種類あるが、よくみられるのはストレス多血症です。肥満体の中年男性で、かつ喫煙者によくみられます。血液粘度が増加して血栓を作りやすくなるため、普段から脱水状態にならないように十分な水分補給が必要です。

2)白血球数
 白血球は3000〜9000/μl が正常ですが、普段から2000代くらい、あるいは10000〜11000/μl ほどで推移している方もいます。あまり変動なければ精密検査は不要ですが、徐々に減少あるいは増加傾向がある方は精密検査が必要です。


3)血小板数
 血小板は出血を止めるために必要な成分です。10万/μl 以上であれば正常です。3万/μl 以下になると自然に皮下出血や鼻血、歯肉出血が現れます。また、肝臓病の病勢を表す指標にもなっています。(病勢が進むと血小板は低下します)