感染症・食中毒
かぜ症候群は上気道粘膜の急性炎症の総称です。
原因の80-90%はウイルスでライノウイルス,アデノウイルス,コロナウイルス,RSウイルス,パラインフルエンザウイルス,エンテロウイルスなどが主なものです。またインフルエンザウイルスは伝染力と全身症状の強さおよび二次感染の多さからかぜ症候群とは区別されることがあります。
くしゃみ鼻汁咽喉頭痛などに始まり発熱頭痛倦怠感も認め喉頭以下まで炎症が及ぶと咳嗽喀痰が出現します。
治療方針ですが原因のほとんどがウイルスであることから保温安静水分補給を含めた栄養摂取などの一般療法および対症療法が基本となります。
インフルエンザウイルスによる呼吸器系疾患の総称でウイルスは血清型によりA,B,Cの亜属に分類されますが,流行の主体はAおよびB型です。感染は通常2〜3日の潜伏期を経て発病,臨床症状は,飛沫感染で吸い込んだウイルスの量,侵入箇所,増殖量によって決まり,合併症の誘発にも関係しています。潜伏期が過ぎると全身症状が現れ,引き続き局所の呼吸器症状が現われます。前者は発熱,頭痛,倦怠感,違和感,腰痛,四肢痛,関節痛などで,後者は咳,鼻水,鼻閉,咽頭痛で,消化器症状として食欲不振,嘔吐,腹痛,下痢などがみられます。病状が進行した場合は多彩な合併症を誘発し,特に免疫をもたない乳幼児では,中枢神経系の合併症が起きやすく注意を要します。
一般療法
清潔で緩やかな服装とし,安静を保つ。胸腹部の圧迫を避け,軽い寝具を用います。室内環境は室温を20℃前後に保ち,湿度(60〜70%)を与え,適宜換気を行う。食事は口当たりと消化吸収のよい食物を与え,十分な水分を与える。フラボノイド,ビタミンCを多く含む緑茶,紅茶を薄めて与えるとよいでしょう。
対症療法
発熱:解熱薬を常用する必要はありませんが,患者の生活の質を高め,消耗を防ぐ意味で症状に応じて頓用として使用します。
坐薬は,過度の解熱による低体温を誘発することがありますので,有熱時に限り使用します。
咳嗽:炎症が下気道に波及すると咳嗽が出現します。特に夜間は室温を適宜調節し湿度を与え,軽い寝具を用います。鎮咳薬,去痰薬,気管支拡張薬は症状に応じて使用されます。
消化器症状:胃腸炎症状に対しては,水分補給と食事療法を基本とし,必要に応じて整腸薬,吐き気止めを用います。
予防
予防接種が唯一の有効な対策といわれ,最近数年間のワクチン株は,流行株と一致しております。現行ワクチンの効果は,ワクチン株と流行株が一致し,正規の方法で接種された後3か月以内の予防効果は,80%といわれております。
血中抗体価が防御レベルに達するまでに1月を要しますから,遅くとも11月までに予防接種を完了しておくことが望まれます。
古来から西南東南北東アジアに広く分布した風土病です。病原微生物はリケッチャーでアカツツガムシの幼虫が媒介しわが国では昭和30年代まで秋田山形新潟地方の河川周辺で夏期に多発し,この時期までのものを古典型つつが虫病と呼んでいます。
本症は昭和40年代に入りほとんど姿を消しましたが。河川周辺の整備が進んだこと本症に有効であったテトラサイクリン系クロラムフェニコール系の薬剤が一般に繁用されていたこととの関連が考えられております。これらの薬剤の使用が減りβ-ラクタム剤が主流となった昭和50年代に入り新しい感染様式のつつが虫病がみられるようになりました。
媒介するのはフトゲツツガムシタテツツガムシの幼虫で山地や草原に棲息する。全国的に分布し春秋に多く発症する。土木作業林業に従事する人山歩き山菜採りハイキングなどに出かけた人達に感染の機会が多くこれを新型つつが虫病と呼んでいます。
毎年1000人近くが発症しその多くが新型とされておりますが,実際はその数倍以上が発生していると考えられています。一般に古典型が重症新型が軽症とされていますが新型でも本症を疑うのが遅れ誤まった治療が続けられると多臓器不全を誘発して重篤となり死の転帰をとることもあります。
症状は,感染後7-10日でリンパ節が腫脹し,その数日後悪寒頭痛倦怠感筋肉痛を伴って発熱します。熱は階段状に上昇し3-4病日で39-40 ℃に達したあと稽留熱または弛張熱となります。心不全を合併しなければ高熱のわりに徐脈傾向を示し,3-5病日で躯幹に始まる斑丘状の皮疹が全身に出現します。腫脹リンパ節の近くに刺し口が発見されれば臨床的に診断が確定できますが新型では刺し口の見つからないこともあります。
細菌性食中毒は,病態として感染型と毒素型に大別することができます。
感染型は食物や飲料水,器具などに存在(付着)している細菌が経口的に直接摂取され腸管内で増殖し感染を起こすのに対し,毒素型は食物中などに存在する細菌由来の毒素を摂取することによって急性の胃腸炎症状を呈します。細菌性食中毒の原因菌として頻度の高いものは,サルモネラ,病原大腸菌,腸炎ビブリオ,ブドウ球菌などです。ヒトからヒトへの伝播は稀で,多くは夏季に集中して発生することが多いことが特徴です。
感染型食中毒 感染型食中毒は食品や飲料水とともに細菌が経口的に摂取され腸管内で増殖し,細菌そのものや細菌由来の細胞毒素(サイトトキシン)が腸管粘膜上皮細胞に傷害を与え,種々の腸炎症状を起こしてくるものです。
感染型食中毒の原因菌としては,サルモネラ,病原大腸菌(腸管侵入性大腸菌,腸管出血性大腸菌,腸管病原性大腸菌),腸炎ビブリオ,カンピロバクターなどの頻度が高くなっております。
臨床症状としては,発熱を伴うことが多く,急激に吐き気,腹痛,下痢を生じ,時に頭痛や筋肉痛などの全身症状を呈することもあります。しばしば便中には赤血球や白血球などが混入します。
潜伏時間は細菌の増殖に時間を要するため,12-24時間である場合が多くなります。
病原大腸菌のうち,腸管出血性大腸菌(血清型O157:H7)が感染した場合は特にVero毒素を産生するため,大量の血性下痢便や腹痛を生じるとともに溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併し,重篤な経過をとる場合があります。HUSは血小板減少,溶血性貧血,腎機能障害を3徴とし,典型例は小児のうちでも,特に乳幼児に好発することが多いとされています。
毒素型食中毒 毒素型食中毒は食物中に存在する毒素を経口的に摂取するために起こるものです。
原因菌としては,黄色ブドウ球菌,毒素原性大腸菌,セレウス菌,ウエルシュ菌などが多くなります。
臨床症状としては一過性の下痢や吐き気・嘔吐が主体で,発熱が認められることは稀で,腹痛もあまり認められません。
潜伏時間は感染型に比べ短く6-12時間です。
ボツリヌス菌食中毒の場合は,毒素型ですが,潜伏時間は18時間前後とやや長く,下痢などは比較的稀で吐き気・嘔吐に引き続いて,複視や眼瞼下垂,発語障害,嚥下障害,唾液などの分泌障害など神経症状が主体となります。
診断 病歴などの聴取で感染型か毒素型かの鑑別を行うとともに,飲食の状況や共通の飲食物を摂取した者に同様の症状が出現していないかなどを把握することが大事です。発熱,下痢,嘔吐などの症状の確認や便の性状なども参考にして診断を進めて行きます。便の培養を行うとともに,高熱が続く場合には血液培養なども行って,確定診断を得るように努めます。
治療方針
細菌性食中毒の治療は下痢や嘔吐,腹痛などの臨床症状の軽減や脱水症に対する対症療法が主体となります。症状が強い場合は入院させ,禁飲食とし,輸液療法が主体の治療を行います。抗菌薬の投与は通常の場合は行わないようにし,発熱や感染症状が遷延するような場合にのみ使用します。止痢薬も原則として投与しないことになります。
O-157感染症(腸管出血性大腸菌感染症)
血性下痢,激しい腹痛などがある場合は,O 157を含めた腸管出血性大腸菌による感染症を疑い培養検査を行い,早期診断に努めます。止痢薬の投与は避け,輸液などの対症療法とともに乳酸菌製剤などを経口投与することが望ましいといわれております。抗菌薬投与による治療効果については未だ議論の余地がありますが,使用すべきと判断した場合には,ホスホマイシンやニューキノロン薬などの抗菌薬を経口投与することが望ましいといわれております。
予後を左右する溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症には十分注意し,HUSの初発症状である乏尿,浮腫,尿蛋白,尿潜血,血小板減少,貧血(赤血球減少),LDH上昇などが見られた場合は早急に治療を行っていきます。また,ヒト-ヒト感染を十分考慮に入れた2次感染対策が必要で,手洗いの励行や流水による洗浄,加熱処理,消毒薬の使用などを行い,感染防止に努めていきます。
法的義務
食品衛生法は,医師が食中毒やその疑いのある患者を診断したり,死体を検案した場合は直ちに最寄りの保健所長に届け出ることを義務づけています。その際,「伝染病及び食中毒患者届出票」の記載を要請されます。この票では病名,発病月日時,診断年月日時,診断方法(菌検査,血清検査,臨床決定)と原因,患者氏名,患者生年月日,患者所在地,届出医師の住所と氏名の記載と捺印が要求されます。届出後は保健所による防疫と病因などの調査が始まり,協力を要請されます。事件収拾後保健所は 「食中毒調査票」 や 「食中毒事件票」
を厚生省に提出します。
学校医職務執行準則では, 学校医は 「学校における伝染病および食中毒の予防措置に従事すること」
とあります。
発生時の措置
学校で食中毒を疑わせる児童生徒が発見された場合は,通常学校長から学校医に連絡が入ります。事実を確認した学校医は学校,保健所,教育委員会,市町村,医師会などの担当者と連絡を取りあって,患者の確認(患者数と広がり),治療,原因食品の推定,原因食品の回収確保,病因検索(細菌培養や毒物の同定),汚染場所や時刻の推定,出席停止や学級閉鎖などの必要性の検討,保護者への説明と防疫処置に対する協力要請などの対策に協力します。
対策の詳細
中毒者の確認:臨床症状や診察所見(下痢の性状,悪寒や戦慄,発熱,悪心や嘔吐,ゲップ,倦怠感,裏急後重,麻痺,流涎,頭痛,腹痛,脱力,体位,意識障害,痙攣,瞳孔の性状,複視や視力障害など),食事摂取状況,生活範囲などの共通性が重要なポイントです。また原因と推定される食品を摂取した可能性のある者は全員身体状況を確認する必要があります。
生活習慣病
疾患の概念
高血圧症は高い血圧(動脈内圧)が持続することにより,血管系(細動脈,大動脈など)と主要臓器(脳,心,腎など)に高血圧性の障害(出血,梗塞,心肥大や臓器障害など)をもたらす疾患です。
この高い血圧を放置すれば,細動脈硬化や粥状動脈硬化症,腎機能障害などが進行し,これらの病変はさらに血圧を高めるという悪循環も成立します。
高血圧症の高い血圧の定義ですが,WHOやISH(国際高血圧学会)などで一定の測定条件と一定の基準値(例えば収縮期血圧で140mmHg拡張期血圧で90mmHg)が示されていますが,血圧は極めて変動の大きなものであり,また年齢や性別,ほかの代謝疾患(糖尿病や高脂血症など)の合併により,高血圧性血管障害の発症予後は大きく異なります。
同じ血圧レベルでも治療指針は個々の症例で差があり,個別にきめ細かな配慮を要します。とくに,高血圧症の主な治療の最終目標は脳卒中や心筋梗塞などの心血管発症予防にあるので,これらを増悪する他の危険因子の管理や治療にも目配りしなければなりません。
診断のポイント
外来血圧と血圧変動
診察室(外来)で測定する血圧は24時間血圧を必ずしも代表する値ではありません。外来血圧は精神緊張のため普段の血圧より高めを示す人が多く,これらの症例は白衣高血圧と言われております。白衣高血圧の診断には家庭血圧や携帯式血圧測定法が役立ちます。
高血圧性重症度の評価
脳:脳卒中や一過性脳虚血発作の既往,眼底所見。
心:心電図,心エコー異常
腎:尿蛋白,血清クレアチニン,尿素窒素,尿酸の高値。
血管系:血管雑音や四肢の血圧差。
ほかの心血管危険因子の評価
家族歴(特に40歳以下の心血管系による死亡)。
喫煙。1日2合以上の飲酒習慣。
運動不足。
食塩過剰摂取傾向。
睡眠不足やストレス。
肥満(腹部型肥満)。
高脂血症(高コレステロール,低HDLコレステロール)。
耐糖能異常や高インスリン血症。
高尿酸血症。
ライフスタイルの修正
非薬物療法は,言うは安いが実行は困難であることが多いのですが,その必要性を説明して数値で目標を定め自己評価し記録させることにより成功率が高くなります。
減量
飽食時代の本邦では肥満に伴う高血圧症が増加しております。肥満高血圧症の中でも,皮下脂肪型より腹部脂肪型のほうが減量に対する降圧効果が著明で,この型では他に高脂血症や耐糖能障害も伴っていることが多く,減量でこれらの異常も同時に是正できる利点があります。
減量の自己評価には早朝と夕食前後の体重,万歩計の歩数,摂取食品の記録が指導のうえで参考になります。
運動
適度な運動も降圧が期待できるばかりでなく,脂質代謝異常や耐糖能障害にも有効です。
高血圧患者に勧められる運動は,早走歩行などで,少し汗ばみ,心拍数も増加する程度の軽度な運動です。1日30分を毎日か,1回40-60分で週3回程度で効果がみられます。自己評価には万歩計が参考になり,8000歩/日以上を目標としますが,膝に問題がある場合はプール内歩行や上肢のダンベル体操が有効です。
減塩
本邦では国民一人当たり平均12-13g/日と多いため,目標は10g/日以下,できれば7g/日を目指します。自己評価として早朝尿を用いた食塩テープ(田辺製薬社,ウロペーパー栄研ソルト)が指導の参考になります。しかし,ほかのミネラル(カリウム,カルシウム,マグネシウム)は不足にならないように注意します。
喫煙と節酒
喫煙は虚血性心臓病の3大危険因子であり,禁煙が原則となります。どうしても禁煙できない人ではニコチンガムやテープで指導します。
アルコール過飲も血圧上昇の要因となるので,アルコールの量として1日約30ml以下(ビール中ビン1本,日本酒1合程度)に指導します。
薬物療法
軽症高血圧患者で半年以上,合併症のない中等症高血圧患者で2か月以上の非薬物療法を行い,目標降圧レベルに到達できない場合,および重症高血圧患者ではすみやかに降圧薬療法を行う。
現在,降圧薬は約100種類も市販され,その選択の幅は広がっているので,患者の生活の質を損なわないように,最も少量で効果的と考えられるものを選択し,効果が少ない場合でも,むしろ1種類を最大量まで増量するより,作用機序の異なる薬剤を追加する方法が理にかなっていると考えられております。
疾患の概念
糖尿病は,「インスリン作用の絶対的あるいは相対的不足にもとづいて糖代謝,脂質代謝,蛋白代謝の変動が持続する疾患で,基本的な特徴は,耐糖能の低下・慢性の高血糖である。罹病期間が長くなると,しばしば特有な合併症(網膜症,腎症,ニューロパチーなど)を合併し,また動脈硬化が促進される」と定義されております。
日本では,糖尿病の有病率は40歳以上の成人の10%に達し,糖尿病者は500-600万人になると推定されています。そのほとんどはインスリン非依存型糖尿病患者とされております。
診断
具体的には,まず糖尿病の存在を疑うことから始めます。
血糖値が空腹時で110mg/dl以上,非空腹時で160mg/dl以上を示す場合,糖尿病の可能性を考慮します。糖尿病か否かの診断にあたっては,日本糖尿病学会の診断基準を参考にしましす。すなわち,血糖値が空腹時で140mg/dl以上,任意のときで200mg/dl以上であれば糖尿病と診断できます。この基準を満たさないときは,75g経口ブドウ糖負荷試験を行い判定します。
尿糖が陽性になるのは血糖が170mg/dl以上になったときであること,腎性糖尿では血糖が全く正常でも尿糖が陽性になることもあり,尿糖のみで糖尿病と診断することはできません。
糖尿病に関連した症状
口渇,多飲,多尿,夜間尿,全身倦怠感,体重減少などがあり,ケトーシスになると,悪心,嘔吐,腹痛,意識障害,急激な体重減少などがしばしば認められます。糖尿病の家族歴なども重要です。
合併症
合併症については,網膜症は眼底鏡による眼底所見,腎症は尿アルブミンおよび尿蛋白,神経障害は腱反射,知覚検査,神経伝導速度,自律神経機能検査,動脈硬化は負荷心電図,末梢動脈ドップラー検査などによって評価できます。
治療方針
糖尿病治療の最終目標
糖尿病治療の最終目標は,健常者と同様な人生の質を可能にすることである。その目標を達成するためには,血糖,血清脂質,血圧などを可能な限り正常化し,糖尿病性慢性合併症の発症・進展を防止する必要があります。慢性合併症の発症・進展の防止には,血糖のコントロールが最も重要で,高血糖は,二次的にインスリン分泌を低下させるとともに,インスリン抵抗性をもたらすため,高血糖がさらに高血糖をもたらすという悪循環を形成しております。この悪循環を断ち切るためにも,まず高血糖の是正が必要で,糖尿病の治療の第1目標は,血糖のコントロールを目指すことに置きます。
ただし,急激な血糖低下は,すでに存在する網膜症を悪化させる危険があり,眼科医との密接な連携を必要とします。
.糖尿病治療の基本
治療の基本は,食事療法,運動療法,薬物(経口血糖降下薬,インスリン)療法の三つであります。なかでも,食事療法,運動療法が基本中の基本であり,この二つで治療を開始しますが,血糖コントロールがうまくいかない時は,医師の処方による薬物療法が必要となります。
なぜ血糖コントロールがうまくいかないか
血糖コントロールがうまくいかない原因として,食事療法の不徹底,たとえば,摂取カロリーの過剰,朝・昼・夕食のカロリーが極端に異なることや運動の不足あるいは運動のアンバランスがあります。また,インスリン分泌能がほとんどゼロであったり,インスリン抗体があるとコントロールがうまくいかず,薬物療法が必要となります。
今まで良好な血糖コントロールがされていたのに急にコントロールが悪化した場合は,他疾患(悪性疾患,感染症,肝障害,内分泌疾患など)の合併,強度のストレスなどをチェックする必要があります。
疾患の
概念
高脂血症とは血液中の脂質が増加した状態です。血液中にはコレステロール,トリグリセリド(中性脂肪),リン脂質,遊離脂肪酸の4種類の脂質があるので,これらのうちのいずれかが増加している状態を高脂血症と呼ぶことになりますが,実際に臨床上問題となるのは,@コレステロールが増加した場合,Aトリグリセリドが増加した場合,あるいはBその両方が増加した場合であるので,一般にはこの三つの状態を高脂血症と呼んでいます。
診断
現在わが国では,血清総コレステロール値220mg/dl以上,低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値150mg/dl以上,トリグリセリド値150mg/dl以上を高脂血症としておりますが,高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値40mg/dl以下,Lp(a)高値(40mg/dl以上)も含めて高脂血症としてとらえたほうがよいと考えられております。
高脂血症を認めた場合,まずそれが一次性であるか二次性であるかの鑑別を行います。
一次性高脂血症は,他に脂質代謝異常をもたらすような原因がなく,脂質あるいはリポ蛋白自体の代謝異常に由来する高脂血症であり,その中で遺伝的背景の明らかなものを家族性高脂血症と呼んでいます。
二次性高脂血症は,ほかに脂質代謝異常をきたす疾患や原因があり,それによって高脂血症がもたらされているものである。代表的なものとして,甲状腺機能低下症,ネフローゼ症候群,Cushing症候群,糖尿病,SLE(全身性エリテマトーデス)などをあげることができます。
治療方針
治療目標値は,コレステロールに関しては,
他に危険因子をもたない者に対しては血清総コレステロール220mg/dl(LDL-C 150mg/dl)未満,
他に危険因子を伴う場合には200mg/dl(130mg/dl)未満,
すでに動脈硬化性疾患を有する者に対しては180mg/dl(110mg/dl)未満としております。
トリグリセリドに関しては,他に代謝異常を伴う場合には150mg/dl未満とするが,その他の場合には200mg/dl未満でよいでしょう。
食事療法 肥満を伴っている場合が多いので,まずカロリー制限を行って標準体重とさせることが最も重要です。そして,糖質を総カロリーの50%以下とし,砂糖を1日40g以下,アルコールを1日25g以下とします。果物も控えさせる必要があります。
運動療法 運動はエネルギーの消費,リポ蛋白リパーゼの活性化をもたらすので,このタイプには有効です。1日150kcal以上,1週間で1050kcal以上を消費することを目安とさせます。具体的には1時間6km程度の速足歩行を1日1時間,週4日以上行うようにします。
疾患の概念
骨粗鬆症は骨量の減少により骨が脆弱となり,骨折を生じる危険性が増大した状態です。
病型と病態
女性では50歳代の閉経時期より以後,段階的に骨量が減少しますが,これはエストロゲンの分泌低下が主な原因であることが明らかになりつつあります。70歳代になると,加齢に伴う骨量減少が加わり,これが主因となって生じる骨粗鬆症を老人性骨粗鬆症といいます。
骨粗鬆症の臨床像
.閉経後の女性,65歳以上の男性。
.腰背部痛,円背,身長の短縮。
.骨脆弱による骨折(橈骨遠位端骨折,上腕骨近位端骨折,脊椎骨折,大腿骨頚部骨折)
診断
脊椎X線像の観察が必須で,著明な骨萎縮により縦の骨梁が粗となった状態,または骨塩測定装置により腰椎の骨塩量が若年成人平均値の−2.5標準偏差以下になった状態を確実な骨粗鬆症と診断します。
治療方針
1.予防
骨量低下の予防:運動不足,カルシウム摂取不足,生理不順,低体重,喫煙などが低骨量危険因子として指摘されておりますので,この改善に努めます。
骨折の予防:高齢者では,骨折のきっかけとなる転倒の防止に努めます。高齢者の運動は転倒の予防にもなります。
2.薬物治療
閉経後骨粗鬆症の治療にはエストロゲンの補充が第一選択で,6か月-1年の服用で腰椎の骨密度は2-3%増加します。65歳以上では活性型ビタミンD,カルシトニンの注射を使用します。1年間の治療でDEXA法による腰椎の骨量変動が±1.0%以内におさまれば,この間の骨量維持の目的は達成されたと考えられております。
秋に注意する疾患
キノコの種類は非常に多く,毒性の分かっていないもの,複数の毒性物質を含むものもあるため,専門家でも鑑別困難なものも多いといわれております。摂取したキノコを持参させて専門家に同定を頼むとともに,症状から以下のどの群に属するかを推定して治療を開始します。
致死率の高い,アマニタトキシン群,ジロミトリン群を見落とさないことが重要で,日本の毒キノコ中毒死亡例の90%以上はアマニタトキシン群によります。
1.中毒症状による毒キノコの推定
a 消化管症状を主とするもの
1)摂食早期(3時間以内)に症状の出るもの
酒を飲んだ人だけに症状の出るもの→コプリン群。
それ以外のもの→胃腸毒素群。
2)摂食後しばらくたって(6時間以上)症状の出るもの
頭痛,意識障害を伴うもの→ジロミトリン群。
激烈な下痢が約1日続き,いったん無症状になるもの→アマニタトキシン群。
b ムスカリン症状を主とするもの
症状(発汗,流涎,流涙,腹痛,下痢,縮瞳)は数時間以内に発現→ムスカリン群。
c 幻覚,せん妄を主とするもの
症状は数時間以内に発現。
1)主として幻覚のみ →シロシビン群。
2)傾眠傾向の強いもの →イボテン酸群。
d 四肢の発赤,疼痛を主とするもの
症状は数日して発現→ドクササコ群。
2.治療
胃洗浄,活性炭投与は症状の強いすべての群で行います。
a コプリン群(ヒトヨタケなど):アルデヒドデヒドロゲナーゼの阻害作用で,二日酔い症状を示します。輸液などの対症療法,強制利尿,血液透析。アルコール消毒を避けます。
b 胃腸毒素群(ツキヨタケ,イッポンシメジ,ニガクリタケなど,多種のキノコがある):嘔吐,下痢のみで,原則として対症療法で軽快します。
c ジロミトリン群(シャグアミガサタケなど):嘔吐,下痢が6時間以後に始まり,頭痛,意識障害,けいれんを起こします。調理の蒸気でも中毒を起こすことがあります。
d アマニタトキシン群(ドクツルタケ,シロタマゴテングタケ,コレラタケなど):強烈な下痢を主徴とする消化器症状が10時間前後から始まり,約1日続くが,いったん軽快したようにみえます。この時期にはすでに肝機能異常が始まっており,その後肝障害が進行して,死亡することが多くなります。アマニタトキシンの腸肝循環を断ち切るために,積極的に腸洗浄を行う。強制利尿,血液潅流,集中治療が必要となります。
e ムスカリン群(アセタケ,カヤタケなど):ムスカリンによる副交感神経刺激作用が出現します(発汗,流涎,流涙,腹痛,下痢,縮瞳)。対症療法でよいといわれておりますが,必要に応じて薬剤の投与が必要となります。
f シロシビン群(ワライタケ,シビレタケなど):幻覚作用を目的として摂取されることのある点が,他のキノコ中毒と異なり,LSD様の症状を示します。対症療法が中心ですが,興奮,けいれんに対しては薬剤の投与が必要となります。
g イボテン酸群(ベニテングタケなど):イボテン酸とその代謝物のムスチモールによる中枢抑制作用が出現します。
h ドクササコ群(ドクササコ):数日後から,四肢末梢の発赤,腫脹,疼痛が出現しますが,数十日で次第に軽快します。痛みに対して,局所麻酔(硬膜外麻酔),血液透析,血液潅流,その他の対症療法を行います。