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<春夏秋冬>

発行日2004/02/10
健生クリニック  阿部 二郎
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最近感じること
 
 先日家族で、映画「ファインディング・ニモ」を観てきました。クマノミという熱帯魚の親子が主人公で、ダイバーによってたったひとり(一匹?)の息子をさらわれた父クマノミが息子を助け出すために旅に出る物語です。この旅に出るまでは、怖がりで気が小さかった父クマノミが、旅を続けていくうちに勇気が芽生え、一方子クマノミ(ニモ)は社会について学んでゆきます。お互い会えないことにより一層強い信頼関係が生まれ、映画が終盤を迎えるころには、ハッピーエンドの安堵感とともに、自然界における人のエゴを痛感させられる展開になっています。我が家では、丁度家内と次女が沖縄にダイビングに行った後で、その時二人は、珊瑚の上に産卵されたクマノミの卵と、その周りを心配そうに落ちつきなく動き回る親クマノミを見るという幸運に恵まれたそうで、随分感激していました。
 しかし、この映画について、最近思わぬ影響が出ているようです。新聞の記事によると、この映画の後に、クマノミの乱獲が行われているというのです。どんな事にも、必ず明暗が伴うものです。単純なクマノミブームであれば、流行がおさまったら沈静化するでしょうが、むしろ問題なのは、自然に対する人の認識の甘さだと思います。もっと厳しい言い方をすると、いつまで人は自然に甘えていられるのかということです。
 「バカの壁」がベストセラーになった養老孟司氏は、最新刊「いちばん大事なこと」で、環境問題について同様の問題表示をしています。人は環境に完全に依存して生きているのに、近年ではそれに気づきにくくなっており、環境を変えることの出来る唯一の種として、地球全体に広く繁殖し、そこに再生の困難なダメージを与えているのではないかと。
 では、いったいどうしたらいいのか。自分だって、文明の恩恵を被り、かといって環境のために何もしていないではないか。という疑問が当然出てきます。しかし、ここで今更戻れるはずがない、どうしようもないと言ってしまうことと、まずどんな現状なのか知ってみようというのでは、雲泥の差があると養老氏は述べています。そして、各自が環境の主治医になったつもりで、それぞれの考え方、診断、治療をおこなえばよいと。一方で環境問題は政治問題でもあり、そのシステム作りが望まれますが、まずは自分の環境に対する認識や考え方を持つことから始めたいと思います。
 余談ですが、最近禁煙にも成功し、ささやかながら環境汚染防止になったのでは?と思っています。



 
 春夏秋冬 <最近感じること> から