トップ会長挨拶医師会事業計画活動内容医師会報地域包括ケア介護保険について月間行事予定医療を考える集い学校保健関連

<春夏秋冬>

発行日2003/10/10
中通総合病院   松田  淳
リストに戻る
未成年者禁煙外来
 
 中通総合病院禁煙外来に「未成年者禁煙外来」を開設しました。毎月第三木曜日の午後、原則予約制です。喫煙が禁止されている未成年者にどうして禁煙指導なんか必要なの?とか、成人の禁煙外来とどこが違うの?とか、そんな外来意味あるの?とか、さらには小児外科医のキミがなんで禁煙外来なんかやってるの?とか、次々に疑問がわき上がることでしょうから、少し補足を書きます。
 直接のきっかけは昨年10月に開催された禁煙指導講習会で奈良女子大学の高橋裕子先生から「未成年者禁煙外来」のお話をうかがったことです。未成年者でも容易にニコチン依存化すること、最年少は9歳であること、成人よりは身体依存からの離脱は楽だが、再喫煙率が高いことなどを知りました。その頃、私も所属している「秋田県こども研究会」薬物非行問題研究班で県内小中高校の喫煙実態調査を行いましたが、その結果をみると、高校生、特に高三男子の喫煙率は平均でも50%を超え、中には75%近い高校も一箇所ならずありました。毎日吸う生徒を常習と定義すると、その率は約6割でした。自由記載を読むと、もうやめられないといった記事も散見され、高校生の喫煙は日常化していて、学校だけの対応ではもはや依存化した生徒を立ち直らせることは困難だと思いました。幸い、当院の禁煙外来はプライバシー保護に適した環境ですし、私自身青少年に関わる仕事には意欲がありますので、まずやれるところから開始しようと提案書を書きました。外来のやり方は原則的に成人と同じです。自由診療、依存度をチェックしてそれに合わせた禁煙スケジュールを組む、ニコチンパッチの使用をためらわない、などです。最も異なる点は保護者同伴であることです。これは民法に未成年者に対する法的行為(この場合は医療行為)には親権者の同意が必要だという規定があることもありますが、なによりも親が理解・同意し、こどもの努力に関心を持ちかつ協力してほしい、という意味の方がより本質的です。自由診療ですので、費用が高くつく点も無視できません。やはり親に黙って通うといことはよくないと考えました。もう1点、再喫煙率の高い理由が思春期特有の反発心がきっかけになっているので、精神的な支援やカウンセリング的な要素を重視する点も成人と異なる対応と言えるでしょう。外来指導にあたっては、理解と関心をより強く持てるよう、なるべく視覚に訴える教材を用意したり、スモーカライザーで喫煙や禁煙してからの影響を実感してもらう工夫など、従来の指導に加えていくつか新しい試みも入れてみました。ひとりでも多くの生徒がニコチン中毒から解放されて、健康に生きてほしいと願っています。今回の外来開設はマスコミでも予想外に大きく取り上げられて、私自身驚きましたが、青少年の喫煙問題について世の中全体の関心が高まるきっかけになればうれしいです。しかし、なんといっても重要なのは喫煙抑制、すなわち喫煙を始めさせない努力です。医師会員の皆様も学校医として多く学校に関わっておられるので、ぜひ積極的に喫煙防止教育に取り組んでいただきたいと思います。
 
 春夏秋冬 <未成年者禁煙外来 > から