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<春夏秋冬>

発行日2002/09/10
湊小児科医院  湊 元志
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「ゆとりの教育」とは
 
 今年度から、小・中学校の完全週休2日制が実施されました。我々小児科医にとっては、第2、第4の土曜日に、患者さんが偏ることがなくなっていいかな、などと軽く考えていましたが、実際はそんな簡単な問題ではなさそうです。
 そもそも、学校の週休2日制の導入の目的はゆとりのある教育1だそうです。私には、中1、小5、小3の3人の子どもがいますが、その子どもたちをみていると、とても週休2日になってゆとりができたなどとは感じられないのが現状です。当然、これまで週6日あったものが、5日になることによって、1日4時間だったものが5時間に、あるいは5時間だったものが6時間になります。確かに休日が2日になり、余裕ができたようにみえま
すが、1日1日をみてみると、むしろ子供たちの余裕はなくなってきているように思えます。
 象徴的だったのが、春の運動会です。今年の5月は週末になると雨が多く、天候に恵まれませんでした。診察に来た子供たちとの会話から、どこの小学校で今週末に運動会があるという情報は結構人ってきます。金曜日にカゼをひいて来院した子に、明日運動会があると告げられても、「予報では、明日は一日中雨だから絶対延期だよ。」などと自信を持って話していました。実際、翌日は朝からずっと雨でした。やっぱり延期だな、と思っていたら、後から雨天決行したという話をその子から聞いてびっくりしました。このような話が、今年の春の運動会シーズンにはいくつもありました。運動会といえば、天気のよい中で、昼休みには木陰で家族とお弁当を食べる、というようなイメージがありますが、とてもそんな楽しい光景ではなかったことは想像できます。おまけに雨にぬれて運動会でカゼをひく子もいて、怒りのあまり魁新聞の「読者の声」にでも投書しようかと思ったく
らいです。すべてが、学校の週休2日制の影響だとは言いませんが、週5日制で余裕がないから、雨だから来週に延期するということが簡単に出来なくなっているのではないかと思います。
 話は変わりますが、円周率が3になりました。3.14で面倒な計算をして育った我々はいったいなんだったのでしょうか。(でもそのおカ)げで少数の計算になじむことができたと思います。)電卓を使う今の時代では、3でも3.14でも大差ないのかもしれません。何か課題が出て、それを調べるのにも、図書館に行き、関連のありそうな本を数冊借りてそれを読み、重要なところを抜き出してまとめる、という勉強の仕方をしていた我々の世代から
すると、インターネットで、キーワードをポンといれて検索を押せば、自分の知りたい情報が、自宅に居ながらして得ることができる今の時代は、何と便利になったことでしょう。(では、我々が図書館に行って調べていた時間は、無駄だったのでしょうか。)我が家の中学生も、夏休みの自由研究もインターネットを駆使してやっています。ひょっとすると、私より使いこなしているかもしれません。(でも、私の方が彼よりも、百倍以上本は読んだと思います。)何でもかんでも面倒なことは簡略化し、省略し、それにより「ゆとり」が生まれる、なんてことは何か違うような気がします。本当に、円周率は3でいいんでしょうか?
 
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