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<春夏秋冬>

発行日2024/02/10
中通総合病院  大門 葉子
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放射線科のタスクシフト・タスクシェア
 
 今年は医療現場の働き方改革の年。ということで、放射線科のタスクシフト/シェアについて最近の話題をご紹介いたします。
 現在、造影CT・MRI検査のための血管確保は看護師が行っている施設が多いと思います。一昨年、CT・MRIの造影剤やRI核種を投与する目的に限って、診療放射線技師が静脈路を確保すること、インジェクターに接続すること、造影剤を投与することが可能となる法改正がありました。たかが注射されど注射で、粘稠度の高い造影剤を急速注入する近頃のCT検査では、一般の点滴に比べて漏出の頻度もやや高いです。既に免許を持っている技師のためには告示研修があり、再来年度の卒業生からは大学でのカリキュラムに組み込まれています。
 「STAT画像報告」はご存じですか。STATはラテン語statimの省略形、日本語では「遅らせることなく、直ちに」という意味です。例えば非常事態時の全館放送がスタットコールと呼ばれています。臨床検査におけるパニック値報告と同じように、放射線検査においても、画像を撮影した放射線技師が緊急性のある所見を見たら「直ちに」報告することで読影を補助し、より早い診断や治療に繋げようという取り組みです。対象となる所見は、頭蓋内出血、脳梗塞、気胸、腹腔内遊離ガス、大動脈解離、肺塞栓・下肢深部静脈血栓が考えられています。ガイドラインの整備、技師の教育、放射線科や他診療科を含めた医師の理解、などが課題として挙げられています。
 放射線科の業務に係わるのは医師、診療放射線技師、看護師ですが、技師の業務が拡大する傾向です…。技師の業務を補助するのは、撮影の半自動化など装置の進化ということになるでしょうか。
 『今後画像診断はAIが担うことになるのは極めて明白で、放射線科医の育成は今すぐやめるべきである。』と驚愕?の見解が示されて8年。究極のタスクシフトにはまだ到っていませんが、昨今の生成AIについての報道などを見ていると、もしかしてその日はすぐそこまで来ているのかも。診療報酬に係わる画像管理加算の要件にもAIが取り上げられるなど、画像診断へのAI利用はもちろん推奨されていますが、現在承認を受けているソフトウエアは肺結節や脳動脈瘤の検出、計測など一つのタスクにのみ対応しているものが多く、研修医が一次読影し専門医が最終的に確定するような、AIにすべての「下読み」を任せて医師が確認する方式のシステムはまだありません。AIは画像を視覚的に読むのではなく、データとして解析する訳なので「読影」という用語はふさわしくないかもしれませんが。学会を中心に、AIの学習のもとになる大規模なCT画像と診断レポートのデータが収集され、ソフトウエアの開発が加速中とのことです。
*『』はよく引用されるジェフリー・ヒントン博士の言葉。2016年。
 
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