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<春夏秋冬>

発行日2022/11/10
いちかわ内科クリニック  市川 喜一
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Sunrise?
 
 新型コロナウイルス感染症(以下COVID)が流行し始めてから間もなく3年が経過する。当初は封じ込めに成功したかと思われていたが、今年に入ってからの第6波・第7波による感染者数の著明な増加により、本稿執筆時点の累計感染者は約2200万人に到達している。日本の人口は約1.25億人であり、単純計算で国民約5.8人に一人が感染したことになる。比較できるパンデミックとして、1918年から1920年にかけて流行したいわゆる「スペインかぜ」における感染者数は約2360万人、当時の人口は約5670万人であり、国民の約2.4人に一人が感染している。また、対患者死亡率はCOVIDが0.21%(10月16日時点)に対して「スペインかぜ」は1.63%と大きな差がある(厚生労働省HPおよび東京都健康安全研究センターHP参照)。過去と現在のパンデミックを直接比較するのは適当ではない、という意見もある。公衆衛生状態、医学・医療の状況、世界各国からの各種情報公開およびその共有速度などいずれも異なっている。「スペインかぜ」の流行は約2年で終息している一方、現時点でCOVIDの流行は終息しているとは言えないが、「スペインかぜ」をはじめとする過去のパンデミック後を振り返ることで、今後の生活の変化を夢想できるかもしれない。過去のパンデミックで有名なのは14世紀欧州のペストである。この流行による人口激減が引き金となって、封建体制の崩壊が本格化した(THINK ABOUT HP参照)。19世紀パリでのコレラ大流行はパリ蜂起(六月暴動)の原因となり、「スペインかぜ」で終戦が早まった第一次世界大戦で、ドイツへの賠償金が第二次世界大戦へとつながっていくことになった。すなわち、パンデミック後暴動、反政府デモなどの社会不安が起こりうる危険性があるのだ、と(IMF HP参照)。一方、ペスト流行はルネッサンス形成に影響を及ぼしているようだ。さらにパンデミックは潜在的な社会構造転換を顕在化させる側面があるように思われる。今回のパンデミックにこれを当てはめてみる。日本は長引く不景気のなかでのCOVID流行で、さらに景気が悪化。そこに偶然か必然か、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。食料および物流不安による物価高が世界を覆い、まさに「歴史は繰り返す」である。だがしかし、暗い出来事ばかりではない。3密回避の必要性を発端として、社会のIT化が急ピッチで進行している。医療機関では保険証確認や診療の一部がオンライン化を果たした。過去に学び、理性を最大限に発揮して社会不安を克服し、すべての人々が「ニューノーマル」の恩恵を享受できるCOVID後の時代となることを、強く祈っている。
 
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