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<春夏秋冬>

発行日2021/09/10
中通総合病院  大門 葉子
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3つの原則
 
 サンミツが流行語になってはや一年。3つ並べると覚えやすいからか、覚えるのに3つが限界だからか、3つの柱、3つの原則、とよく使われます。「自由・平等・博愛」「持たず、作らず、持ち込ませず」とか。アシモフ博士のロボット三原則も印象に残っています。曰く、ロボットは「①人間に危害を加えてはならない②人間に与えられた命令に服従しなければならない③自己を守らなくてはならない。ただし①②に反しない限り。」
 それはさておき。今回は放射線防護の三原則と、これに関連した話題をご紹介します。
 放射線防護といえば、「時間・距離・遮蔽」の3つが、結構知られていると思うのですがどうでしょう。外部被ばくの低減三原則とも呼ばれます。
 職業被ばくに関する法令「電離放射線障害防止法」が今年の4月に改正されました。眼の水晶体について被ばく限度が引き下げられたことが改正のポイントで、白内障を起こしうるしきい値は従来いわれているよりも低い、というICRPの勧告を受けて検討された結果です。具体的には1年間で150mSvから50mSvになり、また、5年間につき100mSvの線量限度が追加されました。透視を多く用いる先生では超える可能性がある数値です。対策としては、防護眼鏡を使用すること、更に、それによって低減された線量を正確に算定するために、眼鏡の内側に装着できる、専用の小さな線量計を使用すること、などです。
 もうひとつ、放射線防護の三原則は、「正当化、最適化、線量限度」というICRPの勧告を指すこともあります。
 職業被ばくと違って、患者さんの診断や治療のための医療被ばくでは一律の線量限度が設定されません。被ばくの利益が不利益よりも大きいことを保障する、つまり必要のない放射線診療をしないことが「行為の正当化」です。そして、その実施に際しては、合理的に達成可能な限り被ばくを抑えること(ALARAの原則)。その指標として導入されているのがDRLというものです。高過ぎはもちろん駄目、でも低ければ低いほど良いのでもない。必要な情報を提供できる適正な線量となっているか、各自の施設で「防護の最適化」を検討することが求められています。
 医療被ばくに関しても、昨年、医療法施行規則の一部改正がありました。正当化、最適化のために、医師をはじめ放射線診療従事者への研修、被ばくが相対的に高い検査(CTや血管撮影装置)での照射線量の管理・記録などが義務付けられました。
 最近、CT画像の最後に、数字が記載されたコマが追加されていませんか。記録の方法は決まっていないので、施設によってはこのようにして残しているのです。
*ICRP:国際放射線防護委員会
*ALARA:as low as reasonably achievable
*DRL:diagnostic reference level 診断参考レベル
 
 春夏秋冬 <3つの原則> から