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<春夏秋冬>

発行日2015/06/10
並木クリニック  並木 龍一
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マタニティ・ハラスメント
 
  「Harassment」(ハラスメント:嫌がらせ、いじめ)は、「セクハラ」を皮切りに現在では「パワハラ」、「モラハラ」、「ドクハラ」、「ペイハラ」など約30種類に使われているそうです。皆さんは何種類ご存知ですか?その数ある中、産科医として最近何かと話題になる「マタニティ・ハラスメント」(以下マタハラ)について考えてみたいと思います。
  皆様ご存知と思いますが「マタハラ」とは妊娠や出産を控えた者又は経験者に対して行われるハラスメントの事であり、「セクハラ」の発展型と言えます。現在職場においては「セクハラ」より「マタハラ」の被害経験がはるかに多いと言われています。今どき「○ッチ」な文言でハラスメントする古典的(?)「セクハラ」をする人は皆無でしょう。それに比べ「マタハラ」が多いのはなぜでしょうか?根幹には「労働基準法」に定められている産前6週産後8週の休暇、「育児・介護休業法」に定められている最長1年6か月の育児休暇による休職の権利があるからでしょう。今さらながら、妊娠出産は女性として最大限の「性」を発揮する場面であり、現在の労働環境では育児も女性に偏らざるを得ない中、働く女性には当然の権利だと思います。明らかな「マタハラ」(これも皆無と思われますが)、妊娠を機に退職を強要する、人事の降格を命ずる事は、間違いなく上記法に加え「男女雇用機会均等法」にも抵触します。
  少子化において各種統計上、全国ワーストの三冠王を続けている秋田県ですが、子育て中の女性の就業率が全国上位ベスト7に入っているのをご存知ですか?世界の先進国においていち早く少子化対策を講じたのはフランスです。主に就業女性の権利の尊重、子育てにおける男性の参画の推進であり、10年というスタンスで取り組んだ結果、劇的な改善をしました。日本も同様な政策を謳っていますが、その権利を行使しない(出来ない)のが現状です。それには無言の「マタハラ」があるのでしょう。明らかな「マタハラ」は言語道断として、働く事を望む女性が離職しないように支える環境整備、男性が育児に参画出来る働き方の改善、働く女性のモチベーションを保つため、そのモデルとなる女性管理職の増員が喫緊の課題だと思います。
  我々の医療現場においては、上記にあたる女性が多数を占めます。少子化対策の先導となるモデルのような職場になる事が、最も望まれているのではないでしょうか?行政に頼るだけでは無言の「マタハラ」は解決しません。働く女性に畏敬の念をもち、子育て中のスタッフから「妊娠しました。」と言われたら、決して「マタ?」と思わず、心から一緒に喜べる職場環境作りが必要です。
 
 春夏秋冬 <マタニティ・ハラスメント> から