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<春夏秋冬>

発行日2015/01/10
市立秋田総合病院  阿部 正人
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研修医と指導医
 
 先日、秋田市医師会会報の座談会に参加する機会を頂きました。テーマは、「指導医VS.研修医」。指導医と研修医の意見を聞きながら、自分の研修医時代を思い出していました。座談会ではあまり気の利いたことは言えませんでしたが、終了後に、突然、スイッチが入ったかのごとく、いろんなことが頭に浮かんできました。それとほぼ同時に、この原稿依頼もあったので、これは単なる偶然ではないと思い、医師の研修について、自分の経験とあわせて徒然なるままに書くことにしました。
 医学部に入学する前に、一般企業で数年間働いた経験があり、医学部学生の頃から医師研修の特殊性を感じていました。さらには、医学部生のうちから、特に臨床講義が始まった頃から、将来の仕事にそのまま生かせる知識や技術を教わることに、職業訓練学校のような感覚さえ覚えたものでした(自分は工学部を卒業したのですが、メーカー就職後、大学で学んだ知識はほとんどといっていいほど役に立たず、設計や図面の書き方はイチから徹底的に叩き込まれました)。しかも、人間の生命に直接関わるものであるということもあってか、指導は医学部の教官、大学病院の先輩医師、患者さんの絶大なる協力をバックになされるものでした(と自分には思われました)。これは秋田という土地柄もあってか、自分は人間的にもすばらしい医師、患者さんに恵まれ、すばらしい環境で育ててもらったなあと思います。
 大学卒業と同時に、大学の精神科医局に入局しました。初めての当直の時に、指導医と一緒に、患者さんの急変に立ち会うことがありました。その時の指導医の対応が、おそらく、現在の自分の医師としての基本的な核を作ってくれたと思います。初めて直面した緊急事態に、どうして良いか分からず、頭が真っ白になっていた私に対し、適切なアドバイス、状況説明を行いながら、患者さんへの対応を落ち着いて着実に進めていきました。先生は多くは語らない方でしたが、その対応からはかなり多くのことを学び、感動しました。そして、このような医師になりたいと強く思ったことを覚えています。こうした体験から、研修には、適切な経験、環境を与えること、自分から学びたいという意欲を持たせることが必要だと日々考えています。研修医は皆、難関を突破してきたのですから、医師としての自覚、心構えさえ、しっかりと養うことができれば、その後は、指導医の監督の下、自分で学んでいくのでないでしょうか。そもそも指導医は完璧ではなく、研修制度も完璧なものはできないと思います。その時々で、与えられた環境の中で、自分にとってのベストを吸収し、成長して欲しいものだと思います。
かつて、自分が受けたのと同じような感動、これを研修医に与えることができれば、指導医としてこれ以上の幸せはないなという思いを強くしました。
 
 春夏秋冬 <研修医と指導医> から