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<春夏秋冬>

発行日2014/12/10
平野いたみのクリニック  平野 勝介
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祭りの後
 
 東北3大祭りの一つである竿燈祭りは、その起源が江戸時代中期と伝えられている260年以上の歴史を持つ国重要無形民俗文化財である。
 竿燈祭りは、竹竿と提灯(竿燈は稲穂に、提灯は米俵に見立てている)、そして笛と太鼓のお囃子のみで、派手な山車などはなく純粋に職人芸で「どっこいしょ~」の掛け声とともに、その心意気を競う祭りである。当然の如く上手、下手で盛り上がりが大きく変化し、下手な竿燈は良く倒れてしまっている。
 かなり以前までは何故か下手な竿燈ばかり見せられて来ていたので、今一つ興味は無かったのだがある機会に上手な竿灯を見てから、すっかりその魅力に取りつかれてしまった。少し風のある方が、上手、下手が良く分かりスリルもあって興味深い事も分かって来た。夏祭りの持つエネルギーは大きい。
 子供が大きくなってからは、家族で見に行くことはなくなってしまったが、竿燈祭りの持つエネルギーも大きくて、そのエネルギーを貰う為、最近は自転車に乗りタオルを首にかけて子供の様に一人で初日と最終日に出かけることにしている。何故初日と最終日かと言うと、初日は開始直前の独特の緊張感がたまらず、また、最終日はこれを最後とどのチームもかなりの大技に挑むからである。初日は入場から見ていて上手そうなチームを物色するのであるが、2年前から体調を崩している自分にとって、今年は何故か初日、体の震えが止まらなくなり、お囃子の笛や太鼓が最高潮になって、竿燈が一斉に挙がった瞬間、涙が止まらなくなるほどに感激をしてしまった。最終日、やはり上手な(昼竿燈で上位入賞の)竿燈を探して陣取るのだが、最後の力を振り絞って行う大技の演技は圧巻である。少し前のこと、とことん接ぎ木をして、ついに折れてしまった竿燈を見た。思わず拍手をしてしまうほどに感動したことを覚えている。
 演技が終了すると、見物客が帰った後の桟敷席へゆっくりと上がり祭り会場を見渡すと、会場全体が今までの喧騒とは打って変わり、熱気を残しながらも祭りの後の寂しさが滲む淀んだ空気に包まれている。そして一瞬ヒューと一陣の秋風の様な冷たい風を感じて、又来年と思うのである。これもまた夏祭りの持つ祭りの後の風情なのだと思う。そしてそこでいつも考えるのだが、竿燈祭りの練習はすでに初夏には始まっていて、皆、仕事が終わってからの練習で、夜に行われる事が一般的である。蝋燭を点けずに行うため暗闇で突然に竿燈と出遭ったり、夜に何処からともなくお囃子の笛や太鼓の音が聞こえて来たりする。祭りの準備と言うより祭りはすでに初夏には始まっているのである。実は祭りは、心浮き立つ状態で、その本番を待っている時の方が楽しいのであるといつも思うのである。
 
 春夏秋冬 <祭りの後> から