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<春夏秋冬>

発行日2014/11/10
並木クリニック  並木 龍一
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ノーベル賞
 
 本日(10月7日)、嬉しいニュースが舞い込んだ。今年のノーベル「物理学賞」に「LED」の基礎研究、実用にまで至った赤崎氏ら三人に受賞が決まった。
 「ノーベル賞」は皆様ご存知の通り、「ダイナマイト」を開発、戦争兵器として巨万の富を得たスウェーデンの発明家、事業家Alfred Nobel氏の遺言による賞であり、世界最高の栄誉賞である事は言うまでもない。現在日本の全受賞者22人中17人が、本邦初の受賞者、湯川秀樹氏含め「物理・化学賞」である。そして、この約十年間での日本人受賞者数は凄い。特に「物理・化学賞」は今年を含め9人である。これは不可能と思われる目標に、根気強く挑む日本人気質によるものと推察される。今回の受賞インタビューで、ある氏はこう言った。「私は失敗しませんから。」と。某テレビドラマの女医のパクリかと思ったが、その後こう付け加えた。「成功するまで実験を繰り返すからです。」これぞ「Japanese spirit」と感銘を受けた。
 我が「医学・生理学賞」は二人しかいない。昭和62年の利根川氏、2年前の「iPS細胞」の山中氏である。中でも山中氏の受賞は特筆される。通常、論文発表後、十年以上経過後に授与される事が多い。山中氏が「iPS細胞」の初論文発表は2006年、その後実際に臨床治験に入ってからの受賞である。今後の「再生医療」の核として期待したい。                     
 逆に受賞確実と言われながら逃した人物も多々いる。私は細菌学者「野口英世」が代表格だと思っている。医師を志した人ならば、その伝記を必ず読んでいるはず、もしくは、その伝記を読んで医師を志した人も多いと思われる。ただし彼の殆どの業績は、1900年前半当時の光学顕微鏡では発見出来ない「ウイルス」を追っていたのは皆様もご存知であろう。残念ながら「ノーベル賞」を授与しなかったノーベル財団の、最も的確な判断の一人とされている。ただし貧困農家に生まれ、幼少時に怪我をしながら名声を得たのを否定する訳では無い。私も伝記を読んで感激した一人である。
 しかし後に、故渡辺淳一氏の著書「遠き落日」(正直言って野口博士の暴露本)を読んで、その生き様に衝撃を受けた。研究に対する姿勢は東北人(福島県出身)らしく、粘り強く本物だ。でも名声を得た成り上り、その金銭感覚の麻痺は尋常ではなく、アメリカ渡航前夜に借りた金で芸者さんを囲み大宴会してスッカラカンになる、など「破天荒」の人生だった。
 日本にとって「遠き」存在だった「Nobel Prize」は、確実に近い賞となった。しかし今年も「文学賞」の最有力候補、村上春樹氏が受賞したならば、この文は書き直しだ。(トホホ・・・と思っていたら今年も受賞を逃した)    
 
 春夏秋冬 <ノーベル賞> から