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<春夏秋冬>

発行日2013/12/10
平野いたみのクリニック  平野 勝介
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たかがビールで
 

 実は小学生の頃から時々ビールを飲んでいた。当時冷蔵庫は無く、ビールはいつも井戸水を貯めるタイルの水槽に入っていた。たまに家に来る(何故か昼しか来なかったように記憶している)遠い親戚で、その筋とも関係が有りそうなおじさんに母は井戸水で冷やしたビールを昼間から出していた。ドスの利いた声で「ラガーが一番うまいやろ」と言って私にも勧めた。他にも悪い親戚が多く、盆と正月にはいつもビール漬になっていた。その頃から嫌いではなかった。ビールの醍醐味は喉越しで感じる一瞬の味と切れである。コクが有り過ぎてもいけない。切れが良すぎるだけなら水でいい。私のビールへの拘りは学生時代の運動部の頃からで、練習中に水を飲んではいけないと言うのが誤りであることはすでに気付いていた。しかし練習後のビールをおいしくするために一切水を飲まなかった。一瞬の喉越しにかける味に大学を卒業してさらに磨きがかかり、秋田大学麻酔科忘年会の余興で6銘柄中5銘柄を当てたほど、ビールの味を知るとの自負がある。
ドイツにおけるビールの定義は、1516年にバイエルンで公布された「ビール純粋令」に定める、麦芽、ホップ、酵母、水のみで作られたもので、今日でもドイツでは頑なに守られているそうだ。日本では、上記の他、米やスターチなどの副原料が麦芽の1/15までは認められている。この位なら許せるとしても、「ビール純粋令」に定めるビールの味は比較にならない。30年くらい前、ビール会社はこぞって新製品を発売し、それぞれの一瞬の味の違いを楽しみにしたものである。ある時「発泡酒」なるものが出来た。ドイツではとてもビールと呼べない代物である。しかし安価で、妻の手前、家では少しは飲まなければならなくなった。そのうちに第3のビールなるものが出回り始めた。これは絶対にビールと呼んではいけない。妻が買ってきてしまい4本飲んだら翌日頭痛がした。30年前と異なり、今度はビール会社がこれらの新製品を次々と発表した。刺激的な名前で新発売と書かれた棚を見ると、ほとんどが発泡酒か第3のビールで、がっかりする。一方で、ビール会社は近年ビールの消費が低迷し、ビール離れを嘆いたりしてみせる。これを自業自得と言う。日本人の技術力は世界一であるが、この分野だけには感心しない。ノンアルコール・・ビール?話題にする気にもなれない。今年の夏、少しはビールの消費が回復したみたいで、真のビール好きはまだしぶとく生き延びているようだが、色々と発泡酒などを飲むうちに、最近、ビールの味が単調に感じて、それぞれの区別が付かなくなって来た。安かろう悪かろうでは壊れて行く文化がある。
 
 春夏秋冬 <たかがビールで> から