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<春夏秋冬>

発行日2013/06/10
市立秋田総合病院  米山 法子
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桜に思ふ
 

 今年のゴールデンウィークは、低温と天候不良のために、お花見が楽しめなかった方も多いと思います。思い悩んでいたわけでも、残念ながら美貌にも恵まれておりませんが、“花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふる ながめせしまに”(小野小町)の句を思い出しました。
日本人の桜好きは大変有名で、最近では、cherry blossomではなく、Sakuraでも通じるようになりました。
古くは万葉集の頃から詠われていたようですが、当初は花といえば梅を指し、花が桜を指すようになったのは平安時代からです。紀友則の“ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花ぞ散るらむ”は大変有名です。時代が進むにつれ、一気に咲いてさっと散る桜の潔さが日本人の心や信念に浸透し、武士道のたとえ等に用いられました。ただ、家紋に用いる武家は少なかったとか。
現代の桜といえば、桜を愛でるというよりは、皆で集まって宴を開く、いわゆる“お花見”がメインとなりました。秋田の開花時期であるゴールデンウィークは、まだまだ冷えることも多く、夜桜見物で凍えそうになった経験をお持ちの方々も多いのではないでしょうか。
私自身は、千秋公園等にお花見に出かけて行くことは、ほとんどなくなりましたが、昨年から、現代の桜の話題で注目していることがあります。それは、“桜ライン311”という取り組みです。これは、ある団体が、陸前高田市内約170Kmに渡る東日本大震災の津波到達ラインに10m毎に桜を植樹し、桜並木を作ることで、津波の恐れがあることを後世に伝え、地震の際には、最低でも、この桜並木より上に避難する注意を促す、というものです。震災後に、過去に同規模の津波の痕跡が見つかっており、前々から津波の危険性が叫ばれていれば、東日本大震災の津波で多くの命が犠牲になることはなかったのではないかという悔しさからも、この取り組みが計画されたようです。2011年末から始まったこの取り組みは、昨年植樹された木が、今年、見事に花を咲かせました。植樹はまだ続いており(今年の分は終了しましたが)、今年植樹されたまだ細く小さな木も、職員さんの手によって守られています。来年には花をつけることでしょう。この170kmに渡る桜並木が、今後、津波の被害を受けることなく、たくさんの方々が、この桜並木を見物したり、お花見を楽しむことが出来たりするとよいですね。遠く秋田にも、いつの日かその桜の香が届くことを期待します。“かすみ立つ 春の山辺は遠けれど 吹きくる風は 花の香ぞする”(在原元方
 
 春夏秋冬 <桜に思ふ> から