トップ会長挨拶医師会事業計画活動内容医師会報地域包括ケア介護保険について月間行事予定医療を考える集い学校保健関連

<春夏秋冬>

発行日2010/12/10
御所野ひかりクリニック  勝田 光明
リストに戻る
病は突然やってきた
 
 病気は勢いがあると本当に恐ろしい、その思いを切に感じた夏だった。
 8月30日診察中に心窩部痛が出現した。耐えられなくなり17時に救急を受診した。原因は総胆管結石で緊急入院となった。ロピオンやペンタジンなど使用しても痛みがひかないまま朝を迎え、採血・CTを行ったところ胆石性重症急性膵炎である。EST施行後、FOY、抗生物質を動注投入処置終え、ICU入室となった。しかし心窩部痛が消えず心配になるほど痛みが強かった。9月2日エコーやるも痛みを示唆するものはなく、硬膜外ブロックを入れることになった。ブロックを入れたあとはほんの少し痛みはおさまっていた。9月4日データが少し改善し一般病棟に上がれるという話で少し安堵したが、痛みは持続し右肩に放散痛が走り、CTで気腫性胆嚢炎(胆嚢炎の重症)になっていた。あまりの病状の変化についていけなかった。気腫性胆嚢炎であれば、緊急開腹である。しかし重症の膵炎があるために、開腹はriskが高すぎる、まずは経皮的ドレナージを行うことになった。しかし、経皮的ドレナージを何回も試みたがドレナージが入らず(術後胆嚢線筋症と分かった)、あまりにも痛みが強く、目の前が暗黒になり、ショックになった。一瞬このまま逝ってしまうのではないかという思いがよぎった。痛みはまったく消えず、フェンタネストを10A以上、ドルミカムなども使用したが痛みのため手術室で全身麻酔を使用するまで意識はほとんどあった。「このままだと敗血症のおそれがあるので、緊急開腹してほしい。」結果的に、深夜に緊急開腹をしてドレナージをすることになった。
 「緊急開腹しないと、今そのままではだめだが、その後も仕事に戻れるかは五分五分である」といわれた。手術前、SaO2が下がっており、抜管できないかもしれないという危険もあった。しかし緊急開腹はスムーズに終わり、抜管もできた。全身状態は徐々に改善した。
 膵炎の症状が落ち着き全身状態の回復がすすめば、やっと通常の胆摘手術がおこなえる。10月4日手術となった。胆嚢結石(黒色石)と胆嚢腺筋症であった。石は非常に細かな砂のような黒色石だった。こんな小さな石が、総胆管にはまり、膵臓にも入り込み、しまいには重症の急性膵炎や、気腫性胆嚢炎を合併して、命をも脅かしたとは、到底考えられなかった。
 今まで病気をしたことがない自分が、30%の致死率である重症急性膵炎や、重症の胆嚢炎を一度に合併するなんてこの先、なかなかないことだろう。入院して患者さんの気持ちが身に沁みて感じた。
 春夏秋冬に個人の内容を書くことはふさわしくなかったかもしれませんが、あまりの劇的な出来事のため記載しました。最後に、一生懸命治療をしていただいた主治医の先生やスタッフの方々、秋田大学2内科の先生方や日赤の循環器を初めとする先生方、平常心で仕事をしてくれた当院クリニックのスタッフたち・そして家族に深く感謝したい。
 
 春夏秋冬 <病は突然やってきた> から