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<春夏秋冬>

発行日2010/06/10
すずき眼科  鈴木 明子
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男女共同参画社会
 
 随分と前ですが、中島みゆきの「地上の星」をテーマ曲としたNHK「プロジェクトX」で男女雇用均等法の設立に尽力した女性たちが取り上げられたことがあります。家庭を持ち、家事、育児にも真剣に向き合い、仕事にも並々ならぬ闘志を燃やすその姿に胸を打たれました。また男女共同参画社会が声高に言われるようになって久しいこの頃でもあります。これまで医者の世界も男社会といわれ「貴女、男性と肩を並べてよくやってるわよね。」と周囲から度々言われました。しかし、その度に私はかなりの精神的な居心地の悪さを感じてきました。周りに迷惑がかからないようにと出来るだけの努力はしてきました。体が比較的丈夫だったこともありますが、母性保護法どこへやらで当直をこなし、産前休暇を短くし、急患の呼び出しにも子供同伴で出勤したりと確かに見た目には男性と肩を並べてと見えたかもしれません。でもその反面、女であることを口実にそこに逃げ込んでいた部分が多々ある私は、「よくやっているわ」などといわれると背中がむずむずしてしまうのです。眼科医である私には総合病院での救急外来当直がストレスで「先生、お願い」と若い男の先生に頼んで逃げまくっていました。論文発表や研究発表も家事や子育てを言い訳にひとの何倍もの時間をかけてやっていました。「出産も育児もあるし焦らずゆっくりやれば良いわ」と自分に言い訳して学位を取るのに12年もかかってしまいました。そして、そんな自分の行動に、一見女だからを前面に出さないように振舞ってきたようなずる賢さというか、何とも後ろめたい一面が見え隠れするようでうんざりしてしまうのです。周りから見ればそんな私の行動は見え見えだったに違いないのに、自分の守備範囲をはっきりさせず、すべてを姑息的に過ごして何一つきちんと形作れなかった、何一つ自分の力にすることが出来なかった、そんな自分にがっかりするのです。
 昨年の会報座談会のテーマは「女性医師大いに語る」でした。そこで見た女性医師たちは女性である事に逃げ込んだり、女性の特性を後に隠したりすることなく、とても自然体で、その時その時の立ち位置に沿って非常に一生懸命であり、さらにその場に応じた守備範囲で専門性に特化したプロフェッショナルでありました。こうあるべきだ、こうあれば良かったとつくづく気付かされた私です。
 先日、「こんな仕事私には無理~!」と頭を抱えていると「先生、男の先生に『おねが~い』って頼めばやって貰えるんじゃないですか?」と言われました。「でも、もうそれが通用する歳じゃないでしょ」というと「そうですね」といとも簡単なご返事。やっぱりそうなんだ。これは大変なことになってきたぞ!女である事に逃げ込み、男女共同参画社会に胸を張って生きてこれなかった私は、ここにきて手痛いしっぺ返しを受ける事になったのですね。


 
 春夏秋冬 <男女共同参画社会> から