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<春夏秋冬>

発行日2009/12/10
すずきクリニック  鈴木 裕之
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インフルエンザ
 
 それは1本の電話から始まった。1O月26日の11時頃、クリニックの受付を担当している事務員が私の診察室にやってきて「県の担当者から電話があり、激怒されました。ここに電話して下さい。」とメモを渡された。そのメモには秋田県医務薬事課の電話番号が記されていた。当日の外来はいつになく混み合っており、1時を過ぎたお昼休みにようやく電話することができた。県の担当者は「すずきクリニックでは新型インフルエンザに対する予防接種の予約をとってないというクレームが患者さんから来ています。早急に予約を開始して下さい」とのこと。激怒ではなかったものの、当院の事務員はもっとキツイ口調で「お叱り」を受けたものと予想された。
 新型インフルエンザワクチンをめぐっては国の方針も挙動もめまぐるしく変わり、県によって実施方法がまちまちになり、インフルエンザの流行が本格化した10月以降、現場はかなりの混乱状態だ。国民への正確な周知がなされていない現状で予約に基づいて発注をと要請されても、対象患者の把握が難しく、全員が自院での接種を希望するわけでもなく、ワクチンの必要量はほとんど当てずっぽうでの発注になる。その上、発注通りに納品されるかと言えばたいてい3~4割少ない本数しか入手できていない。さらに、新型インフルエンザワクチンは返品不可という条件付納品なのである。
 今回の混乱の根本的な原因はワクチン不足にあり、国民との接点である現場を考えない対応がさらに状況を悪くしたと考えている。フランス、イギリス、アメリカ、そして中国でさえも自国民全員に行き渡るだけのワクチンを製造していることからしても日本の対応の拙さが目だっている。今まで季節性インフルエンザワクチンを製造してきたメーカー以外にも参入を促すとか、他国が使った大量生産ができ、免疫誘導も確実な新しい方法を採用するとか、ワクチンの安全性確認試験をもっと前倒しで実施するなど考え得る方法はあったはずだ。とにかく先手必勝でワクチンを必要数準備できなかったものかと悔やまれる。 さて、当院が秋田県からお叱りを受けた背景が後でわかった。実は10月24日(土)に秋田県から配送された文書“新型インフルエンザワクチン接種について”の中に「予約開始:10月26日(月)から」という記載があった。しかし、私がその書類に目を通したのは26日の朝で、その記載を見ても即、対応する必要はないと思った。非がこちらにあることは認めるが、そこまで医療機関に徹底させたいのならもっと行動を促すような表現をとるべきだろうし、週末に曖昧な文章を配布しておいて、週明けからその通りに対応しなかったと責められるのは心外である。私も今までインフルエンザ対策には積極的に関わり、早くこの流行が沈静化することを望んでいるが、現場で働く「選手」の気持ちを理解してくれる「監督」はいないものだろうか?


 
 春夏秋冬 <インフルエンザ> から