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<春夏秋冬>

発行日2008/09/10
秋田県成人病医療センター  阿部 芳久
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竹島?独島?、胸騒ぎのソウル
 
 何だかみんなに見られているような気がする。地下鉄の中で周りの視線が妙に気になる。ここはソウルだ。しかも竹島(韓国では独島)問題で、韓国の学生たちの来日が急遽取りやめになったというニュースからまだ日が浅い。
 日韓(韓日)剣道交流戦の帯同ドクターとして韓国に行ってきました。滞在していた京機道から帰国前日にソウル市内に入り、降って涌いたように三時間あまりの自由時間ができました。買い物部隊やアカスリ部隊などとは別行動で、地下鉄を乗り継いでソウル市内をひとりでブラブラしていたときのことでした。竹島(独島)問題があっても、しゃべらなければ韓国人か日本人か区別できるはずもないと思ったのですが。
 今回は六十数名の選手団で、気がかりは二十名の小学生がいたことです。一緒に行く親御さんは飛行機の関係でひとりだけでした。ドクターが一緒だから両親も安心だねと監督たちは言います。実際空港では、よろしくお願いしますと挨拶する見送りの人たちが何人もいました。よろしくと言われても、専門分野以外で小学生を診たのは二十年も前に派遣された某総合病院の当直の時なのです。周りは安心、私は不安、なにしろ私の勤め先の名前には「成人病医療」と付いているくらいですから。結局、大きな怪我や病気はなく、一番元気だったのが小学生たちで、さすがによく躾けられていると感心させられました。体調に影響があったのはオンドルだったでしょうか。夜は修練院の合宿所で、選手、監督、役員などが一同に雑魚寝でした。堅い床に薄い敷布を敷いて眠るのですが、夏だというのに床下からはオンドルの熱が、ただし、部屋は冷房でガンガンに冷やされ、寒いのか暑いのかわからない状態で一晩を過ごしました。もちろん翌日からはオンドルを止めてもらいましたが。
 出発前には、韓国は危険じゃないかと心配してくれる周りの方々も多かったと聞きましたが、韓国では熱烈歓迎でした。開会式で剣道連盟の会長が竹島(独島)問題に触れ、剣道の修練や交流会はこれとは切り離して考えるべきと、子供たちにも分かるように挨拶したのが印象的でした。同じ対決でもスポーツの世界は違います。試合で勝っても負けても仲良くいられるのは、明記されたルールがあり、公平な審判がいるからです。試合や交歓会で最初に仲良くなるのは子供たちです。何が面白いのか、休憩時間にはキャーキャー言って打ち解けていました。今回の問題は今の大人たちでは解決できなくても、次の世代ではなんとかなるのではと期待してしまいます。
 ソウルでの視線の答えは集合場所での総務の一言でわかりました。「先生のポロシャツ、私のとお揃いですね。」練成会場を出たバスから着替えなしの外出でした。彼の胸には赤い文字がありました。「All Japan」。なるほど、この時期視線が集まるはずだもの。
 
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