トップ会長挨拶医師会事業計画活動内容医師会報地域包括ケア介護保険について月間行事予定医療を考える集い学校保健関連

<春夏秋冬>

発行日2008/03/10
すずきクリニック  鈴木 裕之
リストに戻る
学力日本一、秋田県 -その背景にあるもの
 
 文部科学省が昨年10月24日に発表した全国学力テストの結果で秋田県は小学六年が国語と算数の4種類の問題ですべて全国一位、中学三年でも国語が一位と二位、数学が二位と三位と都道府県別でトップの成績を収めた。
 何かにつけ秋田県は全国順位が下から数えた方が早いのだが、このたびのニュースは秋田わか杉国体での好成績と共に咋年のうれしいニュースの筆頭だった。前東京大学学長の佐々木毅氏(秋田県出身)も「全国学力テストの朗報」と題して「秋田から良いニュースが届いた」と新聞で喜びを表した(2007年11月27日付秋田魁新報「時評」)。最近、秋田県は学力世界一のフィンランドになぞらえて『日本のフィンランド』と呼ばれているそうだ。
 発表直後の新聞によれば「喜びと驚き」(2007年10月25日付秋田魁新報)といった論調が多く、好成績だった理由に関しては「熱心な教師と子供、地域や家庭の支え」(2007年10月25日付朝日新聞)というような漠然とした報道はあるが教育関係者の間でも一定の論拠はないように見えた。
 文部科学省の発表から2か月ほど経って朝日新聞が「学力日本一秋田の秘密」と題して全国版で解析を試みた(2007年12月19日付)。それによるとチームティーチング(二人の先生が同時に授業を受け持つ)、小学校の教員採用試験の狭き門、家庭学習ノート(家庭と学校を結ぶ交換日記のようなもの)などを上げていた。
 さて、たまたまわが子が中学生の問題を実際受けたということもあり、門外漢を承知で自分なりに二つのポイントを指摘してみたい。その一つは今回の順位は公立学校のみの結果であり、国立・私立学校は含まれていないということだ。都市部では国立・私立の有名校が多数あり、当然成績優秀者が多く在籍し、彼らは今回の都道府県別の評価からは除かれているのである。秋田県は国立・私立の学校は全国的に見れば少なく、そういった偏在が少なく、良い結果に結びついたのではないかと私は思った。二つ目は問題が平易であった点である。活用力調べるB問題(基礎的知識を問うのはA問題)でも全国の平均点はほとんど科目で60点を超えている。子供が文部科学省から受け取った資料によれば正答数の多い生徒がグラフの右に集中している(全国の得点分布グラフから数学Aでは満点が中学三年生の受験者数108万人中、約7万5千人いる計算になる)。つまり私は今回の問題で順位を云々するのは少し問題があると考えている。
 いずれにしても、秋田県の学力は全国一というレッテルが貼られてしまったわけで、今後はこの成績を維持するという目標に向けてがんばるしかないだろう。また高校教育で今回の結果をいかに引き継ぐかということも今後の課題だと思う。ひさびさのグッドニュースではあったが、私は素直に喜びたい反面、その評価と今後の課題に一抹の不安を抱いているのである。
 
 春夏秋冬 <学力日本一、秋田県 -その背景にあるもの> から