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<春夏秋冬>

発行日2007/06/10
渡辺耳鼻咽喉科医院  渡辺  仁
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クリの老眼?
 
 10年前、家族に加わったダックス(クリ)も肉体年齢は私を超えてしまったようである。3年ほど前から散歩中に柱や縁石にぶつかる事が多くなってきた。主治医に相談し、『眼圧は正常・眼底にもはっきりとした異常は無く、しかし視力はかなり落ちているであろう、もし心配であれば精密検査のために東京の大学病院でCT等の検査を受けてみますか?』と提案されたが、様子を見ることにした。緑内障や白内障に特徴的な症状や所見もなく、角膜に特に外傷や濁りも、まして脳腫瘍等を思わせるサインもない。犬は人間より遠視が強いため、老眼が進むと近くのものは全く見えないが、少し離れたところは見えている。当院の患者さんである獣医さんにも聞いてみたが、『年だから仕方ない』とのこと。 その後、彼の視力低下は進み、食べ物は音で知らせて、臭いで確認してようやく口に入れるという作業が必要になった。名前を呼べば振り返るものの、こちらと視線が合うことはない。散歩はゆっくりであるが、うっかりすると鼻先を柱や石にぶつけるためコントロールが必要である。階段の上り下りは、出来なくなってしまった。全く見えていないのではないかと思うが、勘のいい彼は家の中ではうまく障害物を避けて歩き回っている。彼本人は、人がそばにいないと今まで以上に寂しそうに声を上げるが、見えないことに対する悩みは無いようである。確かに家族という小さな社会のみに生きているのだから困ることは無いのだろう。
 連休中に久しぶりに桜の散りかけた仁賀保の公園で女房・息子と彼の4人(?)散歩をした。平和主義者の彼(犬のすべて)は自分を取り巻く人間たちが皆で仲良く一緒に遊んでくれることが何よりも楽しく、年を忘れて弾けるように走り、柱や石にぶつかって『キャ~ン』。ぶつからないように気を使い、段差のあるところは抱え上げ、介護しながらの散歩も楽しい時間である。他の事を忘れて体を動かすだけでも、彼には助けられていると実感する。コンパニオンアニマルの健康に与える影響は20年ほど前から言われているが、2004年第10回人と動物の関係に関する国際会議では、ドイツ、オーストラリア、中国の3力国での調査結果としてペットを飼っている人は医療機関に通う回数が15~20%少ないという結果が報告されていて、試算するとドイツではおよそ7,547億円ということである。このような話のほうが、負担を万人に押し付ける無理な医療費抑制よりは受け入れやすいと思ってしまうのは私だけだろうか。
                                          
 
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