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<春夏秋冬>

発行日2005/12/10
白根病院  鈴木 裕之
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研修医がやってきた! ヤァ、ヤァ、ヤァ -臨床~
 
タイトル:研修医がやってきた! ヤァ、ヤァ、ヤァ -臨床初期研修の行方 第3報-

 2005年8月1日、月曜日は白根病院にとって記念すべき日となった。初めて初期臨床研修医を迎えたのである。その朝、8時に約束通り研修医Y先生は院長と事務長と私の待つ医局にやってきた。遡ること約2年。秋田大学医学部附属病院の協力型臨床研修病院として手を挙げて以来、秋田大学医学部主導の元、準備を進めてきたが、正式な白根病院独自の研修プログラムができたのは7月に入ってからであった。
 現在の初期臨床研修医制度における一番の問題点は「責任者不在」、つまり指導医と研修医の関係が希薄で、誰が責任を持って指導するのかわからないプログラムであると私は今まで主張してきた。そこで、白根病院での初期研修はすべて自分に任せて欲しいと提案し、プログラムも自分で作成した。毎日1通の研修レポート提出も課すことにした。すなわち研修に関してはすべて私が責任を負うことにした。研修医にとって指導医は私一人、とりあえず他の医師は見なくていいという方針である。研修医にもそのことは伝え、まず私のやり方だけを見ること、時期が来たら他の医師からも学ぶこととした。
 さあ、いよいよ初期研修開始である。研修医は朝から晩まで常に私の傍らにいる。どんな些細な行動もすべて説明する。診療の分岐点では「さあ、どうする?」とまず研修医の考えを訊く、そしてディスカッションの後、出すべき指示の根拠を示す。これは予想以上にきつい。まず、時間がかかる。白根病院のような時間集約型の病院では可能な限りひとつの業務にかかる時間を少なくせねばならず、この点でどうバランスをとるかが難しい。次に患者さんが研修医という存在になれていない。「大学病院ならともかく、なんでこんな小さな病院に研修医がいるの?」「なんで私が研修医の診察を受けなきゃいけないの?」そんな視線の中で、堂々と研修中であることを表明した方がいいと判断し、患者さん毎に「研修医のY先生です。」と私が紹介してから診療を始める。実際に研修医が診療に携わる場合は前もって患者さんにその旨を説明する。その結果、自分の診療から甘さが消えた。それまで一人で診療していた時はその日の気分や体調、さらには患者さんによって多少、診療に幅があった(本来許されるべきことではないが)。研修医の目が常に私を監視しているわけである。昨日言ったことと今日やることが違っては指導医としての威厳が保てない。私はまったく気を抜けなくなった。しかし、研修医がいろんな技術を身につけ、成長していく姿を見ていると、この日々の緊張感も楽しくなるから不思議なものである。
 白根病院初の臨床初期研修が始まって、4か月が過ぎようとしている。幸い有能な研修医に恵まれ、最近ではパラメディカルも一医師として認め、彼が私から離れて、私の代行を果たすこともある。今後の課題は来年4月にY先生が白根病院から去った後、私が昔のような「助手」のいない環境になんなく戻れるかなということである。
 
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