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<ペンリレー>

発行日2002/09/10
中通総合病院  瀬戸泰士
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4月の診療報酬引き下げについて
 
 秋田県医師会第121回定例代議員会で寺田会長の挨拶に私は質問をしました。
 それはこの4月からの診療報酬の改正(改悪?)に対してであります。私が医師になり50年弱になりますが、今回の様な大幅な診療報酬引き下げは始めてであります。今までの改正はこんなに大幅なものでなかったので、細目発表が3月中・下旬にわたっても、余り周章てる必要もなかったのですが、今年に入り、マスコミ報道などで小出しにその実体がわかって来ました。私はこんな大幅な引き下げならば、各医療機関で対処する方法を考える余裕をもつべく、もっと早く厚労省は発表すべきではなかったのか。現在各医療機関は、右往左往しているのが実体でしょう。
 それに加えて、どうして日本医師会がさほどの抵抗もなく、この引き下げにおうじてしまったのか。私達医師会員には、良くわからない点があります。
 例えば透析(通院)患者に対する食事は給付外という事は、食事は家庭でとっているからというものの、透析患者に対する病院給食は一つの治療食で、家庭で食事をする際のモデルでもなかったのでしょうか。
 この様に医療機関の経営に今度の引き下げはダメージを大きくあたえていますが、患者さんをみてみても大きな負担になっているし、今後の生きて行く方向にも莫大な問題をはらんでいます。
 私達外科がかかえる患者さんの一例を示してみましょう。施設入院の脳梗塞で寝たきりの患者さんが、腸閉塞を起こしました。寝たきりという事もあり患者さんからの訴えも、正常に働いている人より少なかったのかも知れませんが、絞扼性イレウスで、大量の小腸切除が行われた。現在は中心静脈栄養で生命を保っています。脳梗塞の為嚥下障害があり、時々嚥下性肺炎を起こし、気管切開が施行されております。さて一般状態が良くなっても、中心静脈栄養(或は胃痩造設等も考えられるが)を行って、気管切開を施行しているこの様な患者さんは療養病棟始め各老人施設では、空きがないと同時に引き受けていただけません。すると今度の改正で入院6ケ月超は一部保険給付から外され、患者負担が多くなります。一方現在は核家族化が一般化し、家庭での療養・訪問看護の利用などは多く、この様な患者さんは家庭には帰られません。どうずれば良いのでしょうか。『老人難民』という言葉も聞かれます。更に病院側は今度の改正で平均在院日数21日以内と決められております。するとこの様な患者さんの為に在院日数は増え入院基本料が下り、経営にひびきます。
 日本の医療は高い評価を国際的にも受け、世界一の長寿国になりました。しかし私は考えました。今度の引き下げは、日本の医療に大きな混乱を巻き起こすのではないかと。
 
 ペンリレー <4月の診療報酬引き下げについて> から