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<ペンリレー>

発行日2002/07/10
おのば高橋小児科クリニック  高橋 康
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「私と田圃」
 
 こんにちは。昨年10月に秋田市仁井田に小児科を開業した高橋です。いまだに慣れない事ばかりの毎日ですが、そんな折に心を和ませてくれるのが、実は窓から見える田園風景であります。開発が進んでいるとはいえ、医院の裏手から住宅地までの数キロ四方には、清々しい田園が広がっており、季節毎に美しい光景をみせてくれます。今はと申しますと、丁度、田植えが終わり稲がすくすくと伸びている時期で活力を感じます。よく見ますと(名前は分からないのですが)いろいろな野鳥も来ており、また、天気が良いと田園の遠くの空に鳥海山をポッカリときれいに眺めることができて、ちょっとした清涼剤です。
 このようにホッと心を和ませてくれる田園風景は、どうやら自分の人生の節目には付きもののようでありまして、以前に見た田園風景と重ね合わせたりもします。
 私が、初めて「これは気持ちのいい広い田んぼだな一」と心に刻んだのは、幼少期に秋田市の中通り地区から、広面に引っ越した節目でしょうか。今から、30年以上も前のことです。当時の広面は、ほとんどの部分が田んぼでした。いまの広面郵便局のあたりに住んでいたのですが、郵便局の前の道路はまだ未舗装の砂利道で、雨が降るとひどい水たまりがあちらこちらにできていました。丁度、補助輪をはずした自転車で、その水たまりの間を、時々転んだりしながらダートレースのように走り抜けていく爽快感を今も覚えています(一緒に走っていたのは現平鹿病院泌尿器科の石田俊哉先生と弟さんです)。ちなみに、今の秋田銀行広面支店から大学へ向かう道路は、両側が田んぼの全くの細い砂利道で、ここを進んでいくのは結構な冒険でした。大学病院のあたりまでかなり遠く、そこは山肌がでている崖になっており「レインジャーごっこ」よろしく、登ったり転げ落ちたりした記憶もあります。こうして泥だらけになって夕暮れに家に帰るのですが、町中から田舎に引っ越して驚きの毎日だった記憶は、どれも広い田園風景に包まれていて、なぜか心豊かなものです。蛍も、鈴虫も、ゲンゴロウも、雀もそこにありました。
 私が、2度目に田園風景に心を打たれたのは、ずっと後になってからの新婚生活を始めた節目であります。当時、私は新潟県三条市の農協系の病院(三条総合病院)に勤務していました。病院は町のはずれにあり、病院官舎はその裏手にあったために、窓から見える景色は、これはもう一面にどこまで行っても新潟平野の田園風景でした。夏は、蛙の大合唱で眠りがおぼつかないことさえあったのですが(網戸に百匹くらい張り付くことも)、秋の夕暮れは息を飲むような絶景でした。夕日で稲穂が黄金色に輝き、そこに風が吹くと、波を打つ黄金色の海のように見えました。遠くには弥彦の山々が望めることもありました。そこでの新生活の記憶は、やはり広い田園風景に包まれていて心豊かなものです。
 さて、今は「医院開業」という人生の大変な節目にあり、ここで広々とした田園風景がいつも眺められるのはなんとも嬉しいことで、季節ごとに楽しませてもらえそうです。ただし、「いつも」眺められるほど暇になってはいけないのですが・・・(笑)。
 このペンのリレーは、高校時代の同級生の岩淵朗先生にお願いしたいと思います。
 
 ペンリレー <「私と田圃」> から