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<ペンリレー>

発行日2021/04/10
秋田県立循環器・脳脊髄センター  山﨑 大輔
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「密」じゃない趣味
 
 秋田県立循環器・脳脊髄センターの天水先生からのご指名をいただきました山﨑と申します。医師会の会費を病院で負担していただくことになり、晴れて入会することができました。
 生まれも育ちも大学も秋田で県内の病院(秋田厚生医療センター・秋田赤十字病院・由利組合総合病院・大曲厚生医療センター)勤務していましたが、一度くらいは県外に出て手技のトレーニングをしたいと思い3年間東京で勤務しました。もう一年くらい東京にいる予定でしたが、勤務していた病院が民事再生になり混沌としてきたため少し早めに秋田に戻りました。民事再生前の一連の出来事は通常することのできない貴重な経験でしたが、この場で書くことのできない内容なので(一般の方も見るかもしれないので)今回は秋田に戻ってきてからのことを題材にします。2019年11月から当院に勤務していましたが、同年から体制が変わったこともあり入院患者や治療の症例もやや少ない状態が続きました。新規でのPCIやペースメーカー植え込みについては救急搬送がまだ少ないぶん他院に比べればまだ余裕のある状態です。当院の循環器内科は秋田県成人病医療センターからの引き継ぎということもありペースメーカージェネレーター交換だけは今も他院より多く、コンスタントに手術がありました。ちょうど翌年から東京でコロナが流行り始め、秋田県内でもステイホームしないといけない雰囲気になったため、家ではステイホーム、病院では電池交換という感じになりました。
 局所麻酔をしポケットを開け、電池を交換したら閉じるという作業です。下の層は4-0バイクリルで縫合し真皮は5-0バイオシンの細糸で縫うのですが、あるとき針と糸が釣り糸と釣り針に見えてきて以前よく釣りをしていたのを思い出しました。学生の頃は川でヤマメ釣りをしていたのですが、働き始めてからは病棟業務や急患・学会発表・専門医試験などなどでアウトドアの遊びをすることも次第に考えなくなっていました。このコロナのご時世で人混みに行くことが悪のようになっていましたが、一人で山に行って釣りをするのはコロナ禍にはぴったりの余暇の過ごし方です。(ということで結局は釣りの話です。)学生の頃は極細の糸と小さい針、エサはその川の川虫を使用して魚に違和感を抱かせないというナチュラルドリフト釣法 (伊藤稔氏考案) が雑誌で取り上げられており、同方法のエサ釣りで釣りを再開しました。プロにもなると川の流れから魚の居場所がわかり、魚の目の前にエサを流せるために日中でも何匹もヤマメを釣り上げるらしいのですが、私のようなビギナーは早朝や夕方の捕食の時間帯を狙っても多くて数匹といった感じです。仕事も趣味もある程度は数をこなさないと上達しないと思っているので、仕事が定時で終わった日はそのまま仁別の藤倉水源地(当院から車で20分程にある釣り堀の裏の川で漁業券も不要)に直行、暗くなるまでの時間限定で集中トレーニングをするようになりました。エサになる川虫は川底にある少し大きめの石をひっくり返して採取していくのですが、それだけで20分くらいはかかります。それから釣りをすることができるのですが、1時間もしないうちに辺りは暗くなってしまうために釣りをしに来ているのか川虫採集に来ているのか分からなくなり、次第にエサの採取が煩わしくなってきました。今まではエサ釣りが一番釣れると信じていたのですがエサの採取も必要なく仕掛けも単純なため釣り始めるのに時間がかからないルアー釣りに転向しました。
 海でとにかく遠くに飛ばす投げ釣りとは違い、狭く障害物もある川でのキャスティングはトレーニングが必要です。初めの頃は上州屋で買った1000円近くのルアーを着水させることなく対岸の茂みに飛ばして回収できずに糸を切断、ということが続きました。エサ釣りは糸が切れても出費はほとんどないのですがルアーの場合はなくしたときのショックは大きいです。インターネットやYouTubeで勉強するにつれて、釣具店では売っていない安いルアーがネット注文できることが分かってきました(大手の釣具店では取扱いメーカーのしがらみもいろいろあるのでしょう)。魚の形をしたミノーよりも安価でそこそこ釣果のあるスプーンをamazonで注文しキャスティングの練習をする日々が続きました。ヤマメは春先から初夏にかけては川の表層を泳ぐことが多いらしいです。ちょうどそのころはキャスティングも下手くそで投げたスプーンが川の表層を漂っていたためビギナーズラックが続き少し自信がつくとともに、ルアーの方が日中でも釣れやすいという感触を持つようになりました。ルアーをなくすことも減り、今までWeb講演会でたまっていたamazonポイントでルアーや装備を揃えるようになってきました。一番安いセット品から普通の装備になっただけなのですが、少しずつ格上げしていくことも趣味の醍醐味でしょうか。次第に日没も遅くなり最長で19:30頃まで釣りができるようになりましたが、ケアネット・日経メディカル・MedPeerのWeb講演会の時間と重なるようになりました。釣りもしなくてはいけないし釣り道具を買うためのamazonポイントもためなくてはいけません。その頃になるとキャスティングや川の中での動作にも余裕が出てきたため、川の中で腰まで浸かりながらWeb講演会が終了する直前にスマホからログインしてポイントを獲得するという両立が可能となりました。
 東京での3年間は海外遠征や高級店などに連れて行ってもらい華やかな経験もさせてもらいましたが、田舎では当たり前だったことが制限されて不便を感じることもあり、(気になるお店は急に行っても予約で満席、どこに行っても駐車料金でしかも高い、普通のスーパーで売っている野菜があまり新鮮でない、なんで普通の能代ねぎがこんなに高いんだろう、など) この歳になって今更ながら地方と都心のメリット・デメリットを認識できました。当院は一応秋田県内では一等地に建つ病院ですが、それでも仕事帰りに釣りに行けるというのは地方ならではの贅沢だと思います。去年はホームグラウンドを決めてトレーニングをしましたが、今年は県内年間漁業券を購入して他の川にも行ってみたいです。
 私は2007年卒業で、8年くらい前までは同期と大学で学位論文が今年で終わる・終わらないのような話ばかりしていた気がしましたが、歳をとるにつれて開業する人・ある程度決まった病院で落ち着く人・故郷に戻って所属を変える人など進路もさまざまになってきました。そんな中MRさんとの面会で高校からの同級生がクリニックを継承するという噂も耳にしました。というわけで、次は4月から菅原内科クリニックを継承する保泉学先生にお願いします。
 
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