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<ペンリレー>

発行日2020/10/10
秋田県立循環器・脳脊髄センター  堀口 聡
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好きというか中毒
 
  先日ボーッとテレビを見ていたら、Roland氏が「好きなものを好きと言えない男はカッコ悪い」と言って、彼の好きなもの『アニソン』について語っていました。その第一曲めが堀江美都子の「あしたが好き」だったので、すっかりRoland氏を気に入ってしまいました。音楽の力は偉大です。「あしたが好き」は「キャンディ・キャンディ」のエンディングテーマですが、未来への信頼を歌った名曲です。
  エンディングテーマの傑作といえば、「タイガーマスク 」の「みなしごのバラード」です。「タイガーマスク」は途中で原作を追い抜いてしまったため、中盤以降は独自路線を走ります。また、これは最近知ったのですが、トレーシングマシーンというハイテク機器を導入したことで、元々絵柄が原作と大きく異なり、劇画調となっています。そのためか、中盤以降はプロレスアニメというよりは、人間ドラマ、社会派ドラマの様相が強くなります。海外や日本を転戦する中で、人種差別や公害問題、原爆被害などが描かれ、また本拠地であるちびっ子ハウスでは、子供たちの様々な人生模様が描かれ、いろいろなことを教えてくれました。
  例えば、タイガーの弟子となった拳太郎は、街の母の日の喧騒を見て、ちびっ子ハウスに預けている妹の洋子と亡き母を忍ぼうと、白いカーネーションを買ってハウスを訪れます。見ている方とすれば、十分悲しい境遇の二人なのですが、そこで拳太郎はルリ子さんに叱責されます。
「ここには、母親が生きているか死んでいるのかわからない子供たちがたくさんいるの」
  例えば、ハウスのヨシ坊の元に、捨てた父親が訪ねてきます。妻と復縁し生活も安定したので引き取りたいというのです。ところが、この両親のもとには、すでに弟と妹が生まれているのでした。ヨシ坊は、この血の繋がった家族の中に居場所を見つけることができません。大人たちはヨシ坊の蹉跌を理解しますが、子供たちの中にはもうヨシ坊の居場所はないのでした。
  タイガーマスク の原作者は梶原一騎で、今でも安易な道を選ぼうとすると星一徹が鬼の形相で立っている様な気がするし、坂本龍馬はドブの中で前向きに死んだと思い込んでいるのですが、タイガーマスク の後半については、アニメ作成班の斎藤侑という方が主導した様です。この頃はまだテレビアニメの作家性は注目されておらず、演出(いわゆる監督)は14人の持ち回り、脚本も8人の持ち回りで、その中心が斎藤侑さんであった様です。東映動画には映画崩れの演出家が多く、そのことが色濃く作品に反映されている様です。
  「ど根性ガエル」のエンディングテーマの「ど根性でやんす」は楽しい歌で、背景の絵もとても郷愁をそそられます。現在YouTubeでは第一話が視聴できますが、ここでは「演出 長浜忠夫」と大きくクレジットされています。おそらく、視聴者がアニメ演出家を意識する様になった最初の人ではないかと思われます。長浜忠夫氏は早世してしまったため、現在語られることは少ないのですが、巨人の星、ど根性ガエルから、長浜ロマンロボシリーズと、この時代の子供たちには忘れえぬ人です。
  忘れてはならぬといえば、ビープロ(ビー・プロダクション)も語られることが少なく、悲しくなります。特撮といえば円谷プロですが、独特の作風のビープロの代表作は、スペクトルマンでしょう。ややチープな絵面にも関わらず、その内容はむしろハードなSFで、天才怪獣ノーマンの回は「アルジャーノンに花束を」の翻案であることが知られています。スペクトルマンの母星はネビュラ星ですが、これは恐らくアメリカSFファンタジー作家協会のネビュラ賞に由来していると思われ、「アルジャーノンに花束を」は1967年に受賞しています。ちなみに、日本での正式な映像化は、2002年のテレビドラマとなります。
  かようにテレビが好きというよりもテレビ中毒であり、アニメや特撮以外にも、ドラマ、時代劇、バラエティーなどについてもつらつら思い出すのですが、今回はこれくらいにしたいと思います。
  ペンリレーは、同僚であります、秋田県立循環器・脳脊髄センターの羽尾清貴先生にお願いします。

 
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