<ペンリレー>
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発行日2020/09/10
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あきたレディースクリニック安田 安田 師仁
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これからの10年、新しい日常~New Decade, New Normal~
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今年で産婦人科クリニックを開業して10年目になった。年始にはこの1年間をどのように過ごして、どのような診療をするか考えていた。そんな頃に突然世の中が変わってしまった。COVID-19 新型コロナウイルス感染症の出現である。中国湖北省武漢市の武漢華南海鮮卸売市場で初めて同定されたパンデミックである。潜伏性の高いその特性から、全世界が危険に晒され、ロックダウンや入国制限、東京オリンピック延期など、人類が過去に経験していない事態に陥った。ワクチンや抗ウイルス治療薬が現時点では存在せず、対症療法を主眼とした取り組みが行われている。厄介な事に感染者との濃厚接触以外にも感染経路が不明な場合も相当数認められる。 推奨されている予防策としては、手洗い、人との距離を保つこと、さらに感染が疑われる場合には14日間の自己隔離および経過観察期間を取ることなどが挙げられる。われわれ医療従事者、医療機関として感染拡大を予防する対策として何ができるか考えてみた。
1 来院時 貼り紙、ポスター 1.1 入場制限、入室制限などの貼り紙を外来、入退院入口など至る所に注意喚起の貼り紙をしてみた。結果貼り紙で院内が見えなくなるくらいやっても、注意しない入場者には効果は? 2 洗浄・手洗い 消毒用エタノール、次亜塩素酸水 2.1 消毒用エタノールが品薄になり、脚光をあびた次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム液などがあるが、空間への噴霧は危険との通達が出るのと前後して、消毒用エタノールが再び購入できるようになった。今やコンビニやスーパーなどどんな業態の入口でも見かける光景になった。 3 サーマルカメラ、体温計などで来院患者の体温測定 3.1 流行した当初は37.5℃以上の発熱に注意とのことで、それ以来はスタッフ、患者全員に院内に入る際に義務づけている。非接触型の体温計やサーマルカメラにも非常に興味があるが、ハンディタイプはスタッフが取られてしまったり、タブレット型のサーマルカメラの誤差も0.3-0.5℃程度あり、導入を検討中。そもそも測定機器に向かい合う「にらめっこ」が定着しておらず、デモ中にも素通りされること多数であった。 4 予約システム、診療予約電話での時間的分散 4.1 院内の待合室にも限りがあるので、基本的に予約制としている。体調が優れない方の問い合わせには時間をずらすなどの配慮をして柔軟に対応しているつもりだが、受診前に接触者センターに電話確認してもらっているとは言え、発熱がある患者さんの対応はいつもひやひやする。 5 受付時 ビニールカーテン、自動受付機での間接的、非接触での対応 5.1 飛沫感染予防、非接触を心がけるため、ビニールカーテンなどで仕切っている。しかし難点は柔らかいビニールカーテン自体の消毒に難渋している。 6 待合室 椅子の間隔を離してソーシャルディスタンス、空間的分散 6.1 距離を離すより他はないと思うが、限られた待合スペースしかないため、こちらも苦慮している。 7 マスク、フェイスガードなどの飛沫感染防止策 7.1 夏は暑い。熱中症に注意しながら診療するも、聞きづらいと言われる始末。 8 予備問診として、行動把握 8.1 過去14日間は県外に行っていないか、濃厚接触者になっていないかなどを確認しているが、感染経路不明な感染がかなりの割合を占めている段階ではどの程度有効なものか。そもそも秋田県内ももはや安全ではない。 9 閲覧用雑誌、説明用タブレット端末の撤去 9.1 不特定多数が触れるものは撤去し、院内での待ち時間つぶしに無料Wi-Fiを提供しているが、呼び出してもなかなかいらっしゃらない。スマホでゲームに熱中している方多数・・・。 10 診察室 ソーシャルディスタンスおよび入退室時に椅子、ドアノブ、テーブルなどの清拭 10.1 患者様との距離を保つため、以前よりも離れているが、自分の電子カルテをのぞき込んで近づいてくる患者様にどきっとするこの頃。マスクを正しくしていなかったり、距離を保てない方にも焦る毎日。 11 医療事務 会計時の診療費支払、自動精算機 11.1 われわれ医師以上に患者応対をする医療事務は診療費の取り扱いに慎重になっていて、より不安感が増していると思う。お金を触らなくて良いため、セルフレジや自動精算機もこのご時世では好調に売れているらしい。そうかと言って、自分はと言うと、コンビニやスーパーでセルフレジを利用した事はまだない・・・。患者さんにお願いする前に、自分でも使用方法を身につけないといけない。意外に患者側はすんなり受け入れられるようだ。 12 入院患者 面会制限、立ち会い分娩の見合わせ 12.1 病院や有床診療所では面会を制限しているところが未だ大多数と思われる。秋田でもこういう状態なので、感染流行地域では如何ばかりか。感染リスクの高い業種:歯科・医科、なんと医科のなかでも産婦人科!分娩の際に努責するため飛沫感染のリスク大とのことで、全国的にも分娩時のマスク着用率は3分の2を超える。こんな御時世の分娩は痛いし、暑いし、苦しい事、この上ないに違いない。真に同情申し上げる次第。 13 患者向け教室の休講 13.1 妊婦さん向けの集団指導を自粛しているため、患者理解を深めるべく自宅でも視聴していただける動画配信によるオンライン指導をしている。が、きちんとコンテンツを視てもらえて、学習してもらえているかは不安なところである。やはり時間を割いていただき、集中して指導する意味はあるのだろうと考えているため、形を変えてでもできるだけ早めに教室は復旧したい。
正式名称「変なホテル」と言う名のロボットを多用し、効率化、非日常を売りにした宿泊施設があるが、10年後に俗称『変なクリニック』と呼ばれないために『新しい日常』への対応はしていきたいと思う。あの頃はそう言う対策や対応をしていたね、と安心して振り返られる新しい日常を期待する今日この頃である。 次のペンリレーは秋田赤十字病院の長沼 雄二郎先生にお願いいたしました。よろしくお願いいたします。
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