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<ペンリレー>

発行日2020/01/10
市立秋田総合病院   渡部 敦
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幸せな時間の過ごし方
 
  平成最後の春に秋田大学を卒業(2回目)し市立秋田総合病院へ赴任しました。教授からは3年後に完成予定の新病棟への引っ越し要員と言われた気がしますが、きっと重い荷物を持ち運べる体格の良さを買われての事でしょう。期待には応えたいものです。
  血液腎臓内科の科長を拝命し、高齢者の血液腫瘍を中心に診療を行なっています。仕事が充実しているのは喜ばしい事ですが、自分が幸せになれる時間も大切にしたいと思っています。自分に余裕がないとなかなか人に優しくは出来ないものですから、心をリフレッシュする方法をいくつか用意しておく必要があります。お休みをもらって家でゆっくり過ごすのも良い選択肢ですが、ここ数年は夏期休暇を利用して子供達をアイスホッケーキャンプに連れて行くのが夏休みの恒例行事となりました。外が猛暑であってもスケート場の中は寒いくらいで、コートを着てホットコーヒーを片手に観客席に座ります。リンクを見おろせば子供たちがシャッシャッと氷を削る音を立てながら軽快に滑っていて、キーンと澄んだ空気の中でパックとスティックのぶつかる音が心地良く響き渡り、それをただボーッと眺めているだけで心から癒やされるのです。普段とは全く異なる非日常、贅沢な時間の流れに幸せを感じます。
  子供の頃からスケートが好きでした。生まれた町には小さなスケート場があり、小学生の頃から滑る機会には恵まれていましたが、年に数回滑る程度ではそんなに上手になるはずもなく、それでも何とか転ばずに動き回れるくらいにはなれました。同級生の中でもスケート場周辺に住んでいる友達はとても上手で、凄いスピードで移動してきては止まるたびに白い粉雪を舞い上げるのです。私が借りた靴とは刃の部分の形も全然違う、アイスホッケー用だというそのマイシューズを履いた友達がとてもカッコよく見え羨ましいと感じましたが、夜に練習しているというアイスホッケーというスポーツは、当時の私には全く縁がないものでした。
  それから20年ほどスケートに触れる機会はなかったのですが、子供が生まれ一緒に走り回れるようになった頃に、カナダへ留学のチャンスがあるかもしれないと聞き「子供達にスケートを教えなければ!」と県立スケート場に向かいました。リンクの周りにスピードコースが併設された大きなスケート場で、特徴的な天井に感動しながら2シーズンほどかけて子供達が1人で動き回れるように練習しました。スキー場と違い、呼ばれてもすぐに病院に戻れるという精神的な余裕もあり、親子で楽しい時間を過ごすことができました。
  ほどなくカナダに留学し、家族で迎えた最初の冬。気温が-20℃にもなるアパート裏の公園には、小さな屋外リンクができていました。近所の子供やおじさん達が代わる代わる滑りに来るのを見て、ホームセンターでホッケーシューズを買いそろえました。いつの間にか子供達は、極寒の中でも一日中滑っていられるほどスケート好きになっていました。タイミングの良いことに、大学アイスホッケー選手権が地元開催され、家族でチケットを買って初めての試合観戦。夢中になって応援しているうちに留学先の大学チームがどんどん勝ち上がり、優勝する瞬間に立ち会うことができました。大興奮を味わった体験から、家族全員がアイスホッケーに夢中になり、特に次男は帰国してもアイスホッケーを続けたいと宣言したのです。
  秋田に戻ってきてからは、県立スケート場で活動するジュニアチームに所属しました。10月から3月までと冬場だけの活動ですが、週3回ほどの練習を楽しんでいます。練習時間帯が夕方6時過ぎとちょっと遅いのですが、仕事が終わってから駆けつけるとリンクサイドから子供達の練習を眺める事ができ、むしろ好都合でした。アイスホッケーの試合は選手が2?3分毎に交代を繰り返すので出場選手が多いのと、攻守交代が激しく入れ替わるという特徴があります。秋田のチームは残念ながら部員が少ないため、出続ける時間が長く(つまり休憩時間が少ないので)、他県のチームと試合をすると後半の動きで差がついてしまいます。もっと部員が増えて欲しいのですが、アイスホッケーチームがあること自体があまり知られておらず、どこで活動しているの?と聞かれることがほとんどです。他にも、お金がかかるのでは?とか、ケガをして危ないのでは?とか聞かれるのですが、上級生のお下がり防具を無料で貸し出してくれますし、大人のようなぶつかり合いはルールで禁止されているので、防具をつければケガの心配もほとんどありません。興味のある方はぜひ「秋田ブラックス」で検索してみてください。ホームページでは活動時間の案内や試合動画を見ることができます。冬の運動不足の解消を兼ねた楽しみが増えることでしょう。
  朝から晩まで極寒の屋外リンクで一日中スケートしていた次男は、中学生になった今でもアイスホッケーを続け、社会人チームに混ぜてもらいながら練習しています。次男と同じ年の頃に私が憧れていたスケートの上手な同級生は、秋田市に引っ越し今もアイスホッケーを続けています。うちの次男とその同級生が一緒の氷の上で楽しくアイスホッケーをしているのを見ると、中学生の頃を思い出してなんだか不思議な気分になるのですが、「40過ぎたおっさんがよく動けるなあ」という気持ちも3割ほど含まれています。ただそれを眺めているだけでも、幸せな時間だと思うのです。
  今の職場を気に入っている理由の一つが、スケート場に近い事。冬の秋田は娯楽が少ないと言われますが、いえいえ、こんな楽しいスポーツと時間の過ごし方があります。今日もそれを楽しみに仕事に励んで、仕事帰りにスケート場へと向かいます。家族と共有する幸せな時間の過ごし方、興味がありましたらご相談ください。
  次のペンリレーのバトンは、秋田赤十字病院血液内科の野口晋佐先生にお願いしています。
 
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