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<ペンリレー>

発行日2019/01/10
秋田厚生医療センター  下斗米 孝之
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散歩の途中で・・・・・・寄り道
 
  糖尿病などの生活習慣病を診ていると、外来で患者さんに1日1万歩を目標に歩きましょうと話したりする機会が時々でてきます。それで、数年前に実際、自分がどれぐらい歩いているのかを実際に測ってみた事がありました。結果は1日平均6000歩程度しか歩いておらず、外来の日は座っている時間が長くて4000歩台の日もあるという有様でした。2016年の県民健康・栄養調査では秋田県の平均歩数は1日5713歩で全国平均の6463歩よりも少ないのですが、自分も県の平均程度だったので、それからは通勤で片道1時間程度を歩いたり、自転車通勤をしたり、週末に5~10㎞をまとめて歩いたりするように心がけるようになりました。
  さて、歩くようになってからは移動速度が遅い分、様々な光景が目に入ってくるようになりました。とある夏の暑い日に上野周辺を散歩中、汗をかいてのどが渇いた時に北山珈琲店を見つけました。店のドアの前に“当店は珈琲を飲むためだけの店です。ご来店後30分でお開き。読書、携帯、事務処理、商談、待ち合わせ、おしゃべり 以上固くお断りいたします。”と書かれており変わった店だなあと思いつつも暑かったので気にせずに入ってみました。“いらっしゃいませ”と言われるかと思いきや“店の前の張り紙は読んで頂けましたか?”と聞かれて、とっさに頷きながら返事をしたものの、もしかしてまずい店に入ったかもしれないと少し後悔しながら席につきました。しかし、店の中には様々な産地のコーヒー豆の袋がたくさん積まれ、豆の香りに満ちていました。張り紙に書かれていることも全く禁止という訳ではなくて常識の範囲内で可能であり、店主もすごく穏やかな方でした。10年以上熟成された豆で淹れた珈琲は色が真っ黒で苦いかと思いきや味はまろやかで、途中から生クリームと砂糖を入れるとまた別の味わいに変化します。2杯目は薄い若干の渋さがある豆の皮を使った珈琲で、軽くすーっと口の中で消えていきます。最後は親指程度の甘い生クリーム入りのデザート珈琲で、コクのあるハーモニーを味わうことができます。珈琲豆も小売りしていましたが、門外不出の抽出法(抽出中の作業は全く見えません)は真似できるものではなさそうですので、ここで味わうしかないと思います。何はともあれ、珈琲に詳しくなくても楽しめるお店に偶然出会うことができました。
  北山珈琲店をインターネットで調べていると、北山珈琲店は東の横綱で西の横綱は大阪の八尾にザ・ミュンヒという珈琲専門店があることが分かりました。近鉄線でシャープの工場群をみながら駅から15分くらい歩いた住宅街の中にその店はありました。店主は気さくな方で、メニュー、店主の若い頃の写真、店のステッカーなどを渡しながら、珈琲についても色々と丁寧に説明してくれます。注文するまでに30分以上はかかったでしょうか、寡黙な東北人気質にはちょっと辛いと思っていた矢先におばちゃんたちが数名来店して助け舟を出してくれました。挽いた豆をネルに入れると1杯分が150gもあるせいか見たこともない光景が広がります。最初の1杯目まで50~60分かかると言われましたが、実際は店が混んでいたせいもあって、最初の1滴がカップに滴るまで約1時間、出来上がりまで1時間半弱くらいかかりました。1杯目はわずか20mL程度で、ポリフェノールがたっぷり入っているという説明があり、今まで飲んだことのないフワッとした苦みをほとんど感じない味で、2杯目→3杯目と進んでいくうちにいつもの珈琲に近づいてくる印象です。その後、1~1.5kgの豆から100~200mLの珈琲を4時間かけて抽出するスパルタンを20年氷温樽熟成した珈琲があるということでスプーン1杯だけ頂くことにしました。長期間熟成された珈琲は苦みの角が取れて赤の貴腐ワインのような芳醇な味わいであり、まさにここでしか味わえない逸品だと思います。そういえば、珈琲にはクロロゲン酸の他にも様々な代謝物質に影響するという論文があったなと考えつつ、帰り道の途中駅で迷ってしまい、さらに歩数をかせぎながら帰途につきました。
  次回はいつも糖尿病腎症でいつも大変お世話になっている当院腎臓内科の大谷先生にお願いしました。宜しくお願い致します。
 
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