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<ペンリレー>

発行日2018/06/12
しかま医院  四釜 俊夫
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時空
 
  最近の医学技術の発展は目覚ましく、分子レベルでの臓器の仕組みや、臓器相互の関連も徐々に解明されて来ております。また、極微量の血液で癌の診断も可能となることも、そう遠くないようにも思えます。しかし、これらの技術革新による癌の早期発見・早期治療が実用化されても、やはり人は死を迎えるのです。この限られた時間をどのように送っていくのかが、極めて重要な関心事の一つと思われます。
  ところで、時間や空間とは一体どのようなもので、どのような関係にあるのかを、ちょっと立ち止まって私なりに考えてみたいと思います。我々は、何物にも影響されずあらゆる場所で一定の進行で流れる『絶対時間』と、何物にも影響されず、常に静止している『絶対空間』の存在を常識的な共通認識として20世紀初頭まで抱いておりました。つまり、誰にとっても1秒は1秒であり、1mは1mなのだという概念でした。空間という距離と時間が関係すれば、当然『速度』という事項が出現して来ます。つまり、無限に速い速度が存在するのか否かという問題が出現して来ます。ここで、マクスウェルは電磁気学に基づいた『電磁波』の存在を予言し、光も電磁波の一種だと考えました。そして、その速度は約30万km/秒(光速)と算出しました。この速度は絶対空間に対しての速度と当初考えられておりましたが、アインシュタインは、光速はどんな基準から見ても同じと考え、『光速不変の原理』が唱えられました。そして、時間の進行・空間の長さは、見る立場によって変化することを『特殊相対性理論』の中で説きました。簡単に言えば、時間や空間は絶対的なものではなく、相対的なものであり、誰から見ても変わらない時間と空間というこれまでの常識的な考えを否定し、自然界の最高速度は、誰から見ても変わらないということでした。つまり、見る人の立場によって、時間や空間は伸び縮みすることになります。光速に近づけば近づくほど、時の流れは遅くなり、物の長さは縮むことを意味しております。また、光速に限りなく近づく為には、質量を限りなくゼロに近づけなければなりません。この発見は、天動説から地動説が支持された変換以上のインパクトであったと私には思われます。
  さて、『少年老い易く、学成り難し』です。愚考は時間の流れる速度を速め、あっという間に一生が終わりかねません。質量がゼロと思われる心・思考を光速で飛翔させ、時間の進行を出来る限り緩徐にさせて、充実した悠久の一生を送りたいものだと、春の夜に勝手に夢見ております。
 
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