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<ペンリレー>

発行日2018/02/10
秋田赤十字病院  佐藤 隆太
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鯛釣り
 
  2018年の新春を迎えまして、この度は「鯛」の話題に致します。
  「鯛」は一般的に「真鯛」のことを指し、百魚の王であります。海釣りでは難易度の高さから超人気の魚種であり、秋田における鯛釣りは初夏から晩秋まで行われ、大型の天然真鯛が釣れるため、県内だけでなく隣県からも釣り客が訪れます。
  私は30代半ばから、海釣りを始めまして、7年くらい前の夏でしょうか、鯛を釣るということで、鯛釣り用の強い竿、電動リール等々を釣具屋さんで購入し、これで一気に10万円以上かかり、釣り船に乗り(乗船代は大体8千~1万円)、男鹿の北浦沖に出まして、釣りが始まりました。なんて金のかかる釣りなのだろうと思いましたが、天然真鯛は超高級品です。神社に奉納されたり、結納で使用されたり、大相撲で優勝した力士に贈呈されたり、日本人にとっては古来よりとても大切にされてきた魚です。高くついて当たり前です。そして、こんなめでたい魚がそう簡単に釣れるものなのでしょうか・・・。というわけでございまして「釣れるわけないよなぁ。」と心の中で思いつつ、もともと船に乗るのは好きでしたので「忙しい医療のことと喧しい家庭のことは一時忘れて、ゆったり過ごそう。」ということにしました。釣りの師匠である妻の父(以下、師匠)が準備してくれた仕掛けがあり、釣り針には生き餌として5~6匹のアオイソメ(ゴカイみたいな生き物です)を引っかけまして、船から100メートルくらいの長さで釣り糸を海に送り出しました。船のエンジンは切られ、潮と風に船は流され、仕掛けも自然と移動する・・・、そんな感じで時間も流れていきます。「目を閉じて風を感じ、このまま昼寝をして・・・、いやいやそれじゃ釣りにならないぜ。」と、しばらく過ごしていましたら、なんか竿先が静かにトントンと軽く叩いている感じがしました。「なんだ、波のせいか・・。」と思って黙っていたら、師匠と船頭さんの表情が変わりまして「今、あたっているぞ、少し待て。」と言われ、その後、トントンという叩きが強くなって「さあ、巻け!」とファイトが始まりました。竿を持って電動リールを巻き始めると、重い。叩いて休んで叩いて休んでというのを繰り返してきます。「引っ張るな!早く巻くな!巻くのをやめるな!」(何をすればいいのだ!?)という言葉が飛び交い、釣り糸は100メートルも出されておりますので、長時間のファイトになりました。電動リールでじっくり巻き続けましたら、40cmほどの天然真鯛が釣り上がりました。嬉しいひとときでしたが、それと同時に「鯛が仕掛けの餌を食ってくれて、ただ巻き上げてきただけなのでは?」と思ったりして、釣ったという実感が湧かなかったのも事実でございました。
  釣り番組や釣り漫画では、魚が仕掛けにかかり、豪快に竿がしなり、リールをギリギリと巻くといったアグレッシブな映像や画像を見ますし、釣りと言えば誰もがそんな釣りを期待します。確かにその後に始めたジギングで、稚鰤(ワラサ)や鰤(ブリ)の釣りでは、細い竿を豪快にしならせながら魚を釣り上げるというアグレッシブなファイトで楽しんでおります。しかし、鯛は、じっくり待って静かに戦い、時間かけてやっと1日で4~5匹、ひどいときは1日で1匹となるので、当時30代の程よく若かった私には徐々に飽きがきていました。
  しかし、転機が訪れます。私は齢40代に入り、釣り歴も7年を超え、何となく鯛を生き餌の仕掛けではなく、ルアーで釣るという野心が出ました。昨年の初夏に鯛専用のルアー(「鯛ラバ」といいます)と鯛専用の竿を購入して、鯛ラバでの鯛釣りをトライしてみました。まさかのボウズ(「0匹」)で終了し、初めてのボウズでした。「これまではやっぱり鯛が餌を食ってくれていただけなのだ。」と思いました。そしてまたすぐに海に打って出ようとした矢先、私はまさかのアデノウィルスの感染をうけ、結膜炎だけでなく喉頭炎も生じてやや重症化し、約1ヶ月近く病院勤務を休むはめになりました。ベッドで寝込む日々が続き、スマホで何となく色々な事を検索しては、何となく眺め続ける生活が続きました。釣りも行けないためいつの間にか、鯛の生態、鯛ラバでの釣り方などを調べて読むようになりました。分かったことは、1) 鯛は水深30メートルくらいから100メートルくらいに生息し、夏には大型の鯛はやや深めのところにいる、2) 警戒心が強く、周囲に違和感を察知したら退避し、ベイト(「日常食事する餌」のこと)に違和感を察知したらすぐに見切ったりするという知能の高さを持っている、3) ベイトは、蟹、蝦などの甲殻類、ゴカイ、小魚など様々であり、その日の状況により食べるベイトも変わる、4) 狩猟と食事については、堅いヘッドと泳ぐパワーでベイトに体当たりしたり噛みついたりして、その後、鋭い歯と強い咀嚼でガブガブとベイトをかみ砕いて食事をする、とのことでした。1)と2)から、柔らかいがコシもある細くて長い竿で、極力細くて丈夫な釣り糸を長くリールに巻き付けておき、鯛ラバを静かに自然に動かすためになるべくしなやかに釣り糸を巻き取れるリールを使用して、3)から鯛がその日に食べたいと思っているベイト、若しくは好んで食べるベイトを選択できるように、たくさんの種類の鯛ラバを準備し、4) 竿に当たりを感じても鯛がまだ噛んでいるだけであるため、針に引っかかるまで我慢して待って、引っ張り込まれたと感じたら、竿を振り上げて釣り針を鯛の口に刺して巻き上げる、という釣りの方法が良いということにたどり着きました。
  アデノウィルス感染も完治し、8月初旬、天候は晴れ、最高気温30度、紫外線とても強。私は、相変わらず忙しい医療と更に喧しくなった家庭を一時だけ忘れるため、再び男鹿の北浦沖の洋上にいました。海は一見穏やかですが潮の流れが出ており、釣り場も水深70メートルの深場です。船のエンジンが切られて静かになり、鯛釣りが始まりました。鯛ラバの色と重さを決め、鯛ラバを海底まで落とし込み、着底したらすぐに15~20回くらいリールを巻いて、また鯛ラバを落とし込む、この単純な繰り返しです。「この鯛ラバに気付いて、そしてベイトだと思って噛んで、ガブガブ噛んで・・・。」と願っていると、ブルブルっと竿が震えてきまして、これはまだ噛んでいる途中であり、釣り針にはかかっていませんので、我慢して巻き続け・・、そして竿と糸が強く引き込まれたのを感じ取って、竿を一気に振り上げ、鯛の口に釣り針を確実にフックさせました。「乗った!」と叫び、そこからファイトが開始です。小さな手巻きのリールを使用しており糸も細いため、長時間の巻き取りです。両足で踏ん張り、左腕で竿を操作して右手でリールを巻き、ついに海面に浮かび上がってきたのは、75センチメートルの淡いピンク色の美しい真鯛でした。この日は、他に60センチメートル級の真鯛を5匹、40-50センチメートル級の真鯛を10匹、クーラーボックスが満杯になり、実質の釣り時間は4時間で終了し、帰途につきました。軽く裁いて、秋田市内にいる親や親戚、そして日頃お世話になっている先生方にプレゼントして周ることができました。努力の成果でもあったため、この日はとてもありがたい日となりました。
  今年も皆様にとりまして、ありがたい年でありますように願っております。今年も何卒よろしくお願い申し上げます。
 
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