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<ペンリレー>

発行日2017/10/10
秋田赤十字病院  畠山 卓
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PCの日本語入力環境についてアレコレ
 
  佐藤先生が精魂込めて作られたお野菜を、うちでも美味しくいただいたことがあります。その節はありがとうございました。先のご寄稿では実用的な、かつ造詣の深いトリビア的なお話を色々と伺うことができ、非常にためになる記事でした。^^

  それに引き換え小生。前回(平成26年3月号,http://www.acma.or.jp/isikai/pen_m.cfm?cd=376)中田ヤスタカネタを書いてみましたが、やはり「非実用的な」特殊な分野の話題であったからか、「一緒に傷を舐め合う同志」には今の所巡り会えておりません(泣)。でも、同じ病院にP.T.A.会員(詳細略 笑)がいると同僚から聞き、少し勇気付けられている今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
  また今回も締め切りが過ぎてしまいましたが、皆様がお楽しみになられるような話題を多分持ち合わせていない私。しょうがない。残念ながら今回もオタッキーな話題で駄文を提供してみます。お目汚し御免。

  実は最近、如何に楽に・効率的に・快適にパソコン(PC)で日本語入力を行うか、ということにプチ嵌っています。

日本語入力方式とキーボード配列(特に「親指シフト」)
  今時ほとんどの方は、PCでの日本語入力にはローマ字かな変換を利用していると思います。また多くの場合、入力モードを切り替えることによりJISかな入力(旧JISかな)ができるようになっていると思います。
  ローマ字入力であれば、あ行以外のかなの入力には必ず1文字あたり2打鍵以上を要するのですが、かな入力であれば少数の例外を除きほとんど1文字1打鍵ですむため、思考がスムーズに入力に反映されやすいというメリットがかな入力にはあります。
  一般に普及しているキーボードは、JISかな入力に対応したJIS配列(JIS X 6002-1980)キーボード(別名「旧JIS配列キーボード」)です。皆様ご承知の通り、かなにはアルファベットよりもかなり多くの種類があるため、キーボードの3段の中には全てのかなを割り当てきれず、かな入力モードになると通常は数字や記号が割り当てられている4段目にもかなが割り当てられてしまいます。この4段目が問題で、ホームポジションから離れてしまうためミスタイプ率が高いということと、数字や記号が入力しづらくなることが、JISかな入力のデメリットとなります。英字配列とは別に不規則な並びのかな配列を覚えなければならないという敷居の高さもあり、今やかな入力をしている人を見かけるのはかなり珍しくなってしまっています(2015年1月のとあるネット調査では、JISかなユーザー比率が5.1%という数字が出ています(参考:http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/318/318179/)。ちなみに、小生の妻はJISかなユーザーです。
  「旧JIS」とあれば「新JIS」もあるのか?と思われると思います。ありました(笑)。上記デメリットを解消すべく、シフトキーとの組み合わせで何とか3段内に全てのかなを納めた配列がかつて規格化されたのですが、詳細は存じ上げませんが何でも小指を酷使するらしく?結局ほとんど普及せず、現在JIS規格からは削除されてしまっているようです(涙)。

  ところで、親指シフトもしくはNICOLAという言葉を皆様ご存知でしょうか?
『親指シフト(おやゆびシフト)とは、日本語の「かな」を入力するため、1979年(昭和54年)に、富士通が考案したキー配列規格の一種である。ほぼ同時期に確立したQWERTYローマ字入力や、それ以前から存在したJISかな入力などと同様に、親指シフト規格は「かな漢字変換」のためのかな入力手段(日本語入力)として使用される。NICOLA(ニコラ)は、日本語入力コンソーシアムが親指シフト規格のうち一部仕様を変更した規格である。』(「親指シフト」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2017年8月26日 (土) 15:15 UTC、URL: http://ja.wikipedia.orgより引用)
  昔OASYSというワープロ専用機(懐かしい…)が富士通から出ていましたが、そのOASYSで主に導入された日本語入力方式が親指シフトです。
  親指シフト(NICOLA配列含む;以下略)キーボードの特徴は、親指の通常はスペースキーに当たるところに、左右に分けたシフトキーを持ってきたところにあります。このおかげで、JISかなでは4列にまたがっていたかなキーが3列に収まっています(新JIS策定のきっかけになった配列なのかもしれませんね)。
  通常のシフトキー入力は、皆様ご承知の通りシフトキーを押しながら文字キーを押すという打ち方になりますが、親指シフトの場合はシフトキーと文字キーを同時に打つような打ち方になります。厳密にはシフトキーもしくは文字キーのどちらかが先に押されることになりますが、数十ミリ秒程度の時間差は無視されるようにできていますので、シフト入力のストレスは皆無です。あたかもピアノで和音を奏でるように、優雅に(笑)入力することが可能です。親指シフト以外は通常のキーボードとほとんど同じです。英字入力モードもQWERTYのままです。
  上記「日本語入力コンソーシアム」の会員企業一覧には、富士通はもちろんですが、意外にもソニーやAppleなどの名前も見受けられます。実際、ソニーから親指シフトキーボードのワークステーションが発売されたこともあります。

  その後PCにも親指シフトキーボードモデルは拡大しました。私が大学生の時に、今は亡きFM TOWNSという富士通製のPCを購入する際、どうせ富士通なら親指シフトにでもチャレンジしてみるか、と軽い気持ちで親指シフトキーボードモデルを選択したのが、親指シフトに触れる最初のきっかけでした。しかし、その後専用キーボードは一般に広く普及するまでには至らず、今では作家やブロガーなどのごく一部の愛好家の間で細々と使い続けられているに過ぎません。
  FM TOWNS事業の縮小・廃止に伴い、小生のPC環境も富士通からソニー製(当時)PCのVAIOに移行。常駐プログラムの使用で親指シフトを継続する選択肢もありましたが、常駐プログラムによると思われるシステムの不安定さが当時はしばしばあり、環境アップデートなどに伴う管理の煩わしさ、業務端末での対応の困難さ、などの理由から、やむを得ずローマ字かな変換入力に回帰。以来10年以上、親指シフトから遠ざかっていました。
  それからさらに時は経ち、VAIOからMacに移行してしばらくたった2年前のある日、ふと目にした某ホームページで、普段利用していた常駐ソフト(Karabiner)で親指シフト配列を簡単に実現できるのを偶然知り、それをきっかけに親指シフトを試しに再開してみました。10年以上のブランクがあるので全部はさすがに覚えていませんでしたが、意外とホームポジション付近のキーは何とか覚えていました。以来、Mac環境ではしばらく親指シフトでやってみようと思い現在に至ります。
  先に述べた通り、親指シフトでは両親指にそれぞれ専用のシフトキーを割り当てなければならないのですが、JISキーボードではスペースキーの両脇に「変換キー」と「無変換キー」が配置されており(Macでは「かなキー」と「英数キー」)、キーボードの形状に合わせてこの2つの特殊キーとスペースキーの3つのうち2つを親指シフトキーに割り当てることになります。“親指シフトには専用キーボードが必要”と誤解されているのを時々見かけるのですが、JISキーボードであればほとんどこのやり方で対応可能です。実際この文章を、MacBookのJISキーボードを用い、親指シフト入力で作成しています。キータッチのスピードは一見傍目にはゆっくりですが、それでも今ではローマ字入力でビシバシ打ち込んだ時とそんなに変わらない入力速度を得ています。
  ローマ字入力では左手に特に負担がかかっているのを痛感しています(肉体的負担)。使うキーの頻度を考慮してない配列だからなのでしょうね。親指シフトでは、ホームポジションのある真ん中の段だけで約63%、上の段と合わせると約90%の日本語が打てるようになっているとのことです(参考:http://nicola.sunicom.co.jp/thumb2.html)。
  また、無意識にローマ字入力出来ているように感じていても、親指シフトに戻ると、“かな→ローマ字”の脳内変換のストレス(精神的負担)から解放される自分に気がつきます。これ、ホントですよ。^^
  というわけで、この入力方法はストレスが少ないというのを最近改めて実感しています。入力が快適なので、一旦文章を書き始めると、しばらく筆が止まらなくなってしまいます。かな入力を大なり小なり会得している人でないと、この感覚はわからないかもしれませんね。

かな漢字変換ソフト(IME)
  私のPC主要環境はMacですが、MacにもATOKがあり、以前はATOK passportを契約して、MacとWindows、そしてiPadなどで共通の辞書を運用していました。Google日本語入力なんてのもありましたね。
  そうこうしているうちに、OS X(macOS)がEl Capitanから搭載したライブ変換に遭遇。その変換精度は私の想像をはるかに超えるものでした。本当に変換キーを打つ必要がほとんどないのです。入力していく側から句読点を待たずにひらがなが漢字に勝手に変わっていく様は、本当に衝撃的でした。親指シフトで“かな→ローマ字”の脳内変換から解放され、ライブ変換では漢字変換・文節区切りからも解放される、という繋がりで親指シフト・かな入力との親和性も高いです。全く変換修正が不要となったわけではないので、ちょっと言い過ぎか。でも、あまりにも感激したあまり、勢いでATOK passportを解約してしまったくらいです。Windowsで使えるわけではないんですけれども。(^^; それくらい個人的には大ヒットでした。変換動作が比較的遅いということで回避されることもあるみたいですが、自分くらいの入力スピードだと丁度いい塩梅の様です。

キーボード
  入力に色々こだわってくると、キーボードもいいものに変えたくなってきます。一般では数千円で買えるキーボードが主流ですが、数万円する高級キーボードもあります。
  キーボードにお金をかけることに対して、贅沢だのなんだのと揶揄されることもたまにあるわけです。確かにWebブラウジング程度にしかPCを使わないのなら、キーボードにお金をかけるのは勿体無く感じてもしょうがないでしょうが、入力の量をこなせばこなすほどキーボードの品質の違いはボディーブローのように効いてくる様に思います。親指シフトキーボードもまだいくつか販売されていますが、MacBookで操作するときの違和感を最小限にするため、JIS配列キーボードであることを前提にいくつか試してみました。

Microsoft Sculpt Ergonomic Keyboard
  このキーボードは手首に負担がかからない形状となっており、当初はかなり楽に打ちやすく感じたため、自宅用に追加購入したりもしました。Macは対応機種ではありませんが、ほぼ問題なく使用することができます。
  ただ使っているうちに、小指が短いこともあり3、4段目左右の端付近のキーに指が届きにくいところとか、メンブレン方式キーボードのため打ち損じが少なくなく、知らず知らずに力が入って疲れてしまうところとか、やたらでかくて場所をとるところとか、色々気になりだしたため、別のキーボードの物色を始めることになります。

Happy Hacking Keyboard Professional JP
  ScanSnapなどでおなじみのPFU(富士通の子会社)から発売されている、知る人ぞ知るキーボードらしいです(よくHHKBと略されます)。写真の通り、HHKBの最大の特徴はそのコンパクトさにあります。テンキーレスとかいう以前にファンクションキーすらないという徹底ぶり!(小生は親指シフトを行う関係上JIS配列モデルを使っていますが、US配列モデルにはカーソルキーすらありません(^^; )。それ以上に重要なのはキースイッチの方です。静電容量の変化でキー押下を検出する静電容量無接点方式をキースイッチに採用しており、原理的に取りこぼしやチャタリング(1打鍵で複数回のキー入力がなされてしまう不具合)、経年変化などが起きにくいという優れものです(因みに同じ方式のキーボードに東プレのRealforceというものがあります。東プレの方が本家でHHKBは東プレのOEMという話もあります)。
  キーの取りこぼしが本当にないので、かなり軽く力を抜いて打っても大丈夫で、結果的に手が疲れにくいのです。一般のキーボードのメンブレン方式では、力を抜き過ぎて打つとよく入力を取りこぼしてくれるため、結果的に力が入ってしまい疲れてしまいます。皆様のお近くにも、バチバチとマシンガンのごとく音をたてて入力している方がいるでしょう? そして締めにエンターキーの「バシーン!」(笑)。HHKBなら、たくさんの文字を力を抜きつつ楽に入力できます。高価なキーボードですが、仕事で文章をたくさん打ち込むのですから、もっと早くに導入しておくべきでした。

Mistel Barocco MD600
  昨年あたりから一部ギークの間で話題になっていた、HHKBが左右分離するような形状のキーボードですが、親指シフト対応化成功の報告をいくつか目にするようになり、我慢できずにポチってしまいました。左右のキーボードのそれぞれにスペースキーがあり、本体内蔵のカスタマイズ機能により各々に違ったキーを割り当てられるので、親指シフト化にうってつけなのです。
  HHKBとは異なりCherry MXという有名な高級メカニカルスイッチを採用しており、静電容量無接点方式とはまた違ったキータッチですが、色で区別された数タイプの中から好みのタッチのスイッチを選択できます。「青軸」を選択したところ軽いキータッチがHHKBと遜色なく、さらに軽いクリック感が心地よく感じ、個人的にぴったんこでした。キータイプのたびに快感を覚え、タイプがより楽しくなってきます。
  基本US配列キーボードなので、変換・無変換キーに該当するキーが存在せず、キーボード本体内蔵のカスタマイズ機能だけでは対応しきれない部分があるため、親指シフト入力に使用するためには常駐ソフト等の力を借りて不足分を補う必要があります。
  左右のキーボードをつなぐケーブルがしばしば邪魔になるのが玉に瑕。無線化したモデルが出たら多分また買っちゃうだろうなぁ、べらぼうに高くなければだけど。
  将来的にはこんな感じ(上の写真)でも使える様にしたいと考えています。あちこち持ち歩きたいので、台を着脱可能にしたいなぁ、などとイロイロ妄想が…(^q^;

かえうち
  クラウドファンディング“kibidango”で、今年5月から始まったプロジェクトです(https://kibidango.com/project/505,https://kaeuchi.jp)。
  USBキーボードであれば、PC本体とキーボードとの接続の間にこれを噛ませれば、ハードウェアだけで親指シフトができるという優れものです。常駐ソフトなどでPCに手を加えることなく実現できるということが重要で、募集開始後わずか1時間で、目標額の20万円を突破したとのことです。いかに潜在需要があったかということでしょうか。
  実は、マイナーな日本語入力方法には、親指シフト配列だけではなく飛鳥配列、月配列、新下駄配列など他にも多数存在します。専用キーボードなど存在しないこれらの配列も、「かえうち」を利用すればハードだけで対応が可能ということらしいです。USBキーボードと「かえうち」さえあれば、OSがいかようにアッブグレードしようともマイナーな入力方法が使えなくなることはないわけで、小生の様な人間にはとても心強い味方となります。将来への不安のために習得を躊躇していたような人達にとって、「かえうち」は今後他のマイナーな入力方法にチャレンジする決心を後押ししてくれるきっかけとなるかもしれません。
  実はローマ字入力のユーザーにも「かえうち」は役に立ちます。ホームポジションに指を置いたままカーソル移動やカットアンドペーストなどができるショートカット機能がPCにはありますが、WindowsとMacとではそのキー割り当てに違いが存在します。「かえうち」を使えば、それらの環境の違いを吸収し、操作体系を合わせることができます。ダイヤモンドカーソルなどに未対応のソフトを、無理やり対応させることも可能ということになります。
  勿論、動作原理上はどうしても外付け有線USBキーボード以外では使えないという限界がありますが、ノーパソ内蔵キーボードはしょうがないとしても、今後Bluetoothキーボードへの対応などがなされればさらに活躍の場が広がるのではないかと、今後の展開に勝手に期待している次第です(ちなみに逆のパターンで、USBキーボードとUSB2BTとの間に「かえうち」を入れて、タブレット端末にBluetooth経由で入力する動作報告もFacebookに上がっていました)。
  今後ますます夢が膨らむ、拡がる日本語入力環境。皆様もいかがですか?なんてね(笑)。
長々と綴った駄文に、最後までお付き合いくださった方々には感謝いたします。親指シフトに馴染んでしまうと、ついつい文章が長くなってしまいます(汗)。
  次回は当科のエースDr.、朝倉受康先生が引き継いで下さいました。朝倉先生、宜しくお願いいたします。
 
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