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<ペンリレー>

発行日2017/09/10
たかはしこどもクリニック  高橋 郁夫
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「観る将」の楽しみ
 
  この度島田堅一先生からのご指名をいただき、筆を執らせていただくこととなりました。市医師会理事在任中「聴打診」には何度か執筆させていただきましたが、このペンリレーには久々の登場。15年以上前、開業したばかりの頃に自己紹介的な一文を書かせていただいたのみで、しばらくご無沙汰をしておりました。もともとの筆不精で、寄稿のお誘いには遠慮させていただくことが多いのですが、今回は研修医時代から大恩ある島田先生から直接お電話をいただき、「はい、喜んで!」と即答させていただきました。
  さて何について書けばよいのかと悩み、小児科医会の活動の紹介?などのまじめ路線も考えましたが、最近の藤井聡太四段の活躍もあり盛り上がっている将棋をテーマに取り上げることにしました。とはいえ専門的な技術の話ではなく、ビール片手にプロ野球を観戦するような内容ですので、将棋に興味がない方にもお読みいただければ幸いです。
  医師会員の中には将棋が強く、大会などでも活躍されている先生が多くいらっしゃると思います。私自身将棋は子供のころから時々遊びとしてやる程度で、専門的に勉強することはありませんでした。秋大時代、下宿の朝食が出ない日曜には(まだコンビニもない頃で)駅前金座街まで出かけ、懐かしのUCCコーヒー店でモーニングを食べながらスポーツ新聞を読み、日本ハムファイターズの成績に一喜一憂しながら、次は将棋観戦記を読むのが楽しみでした。(バブル期の学生にしてはオヤジ的と突っ込んでください) 棋譜上の熱戦もさることながら、勝敗にまつわる人間模様などについても書かれていて、将棋界に興味が湧いてきた切っ掛けだったかと思います。医師になってからは忙しく、時間があるときにTVでNHK杯将棋棋戦を観たりするのみになっていましたが、棋戦タイトルの動向については興味を持ちチェックしておりました。
  開業して暫く経った2008年、子供たちも大きくなって休日も親には付き合ってくれなくなったころ、一つの新聞記事が目に入りました。「第21期将棋竜王戦、最終局が天童温泉で開催!」この年は若い渡辺明竜王に羽生善治名人が挑戦し、7番勝負に勝ったほうが永世竜王に就任するというゴールデンカード。年代的に近い羽生さんを応援していた私は、3連勝のスタートを見て永世竜王就任は間違いないと思っていました。しかしその後渡辺竜王の逆襲で3連勝後の3連敗となり、タイで迎えた最終戦。その一戦が隣県で行われ、それも当院休診日の水曜に第一日目が開催となっています。これは行かずばなるまいとスイッチが入り、前日開催の市小児科医会忘年会を(会計担当係であったにもかかわらず)急遽キャンセル。火曜日の診療終了後に車を飛ばして天童温泉へ向かいました。(総務担当の湊先生、後をお願いしてしまって申し訳ない!) 初めての突然の棋戦観戦で、当然会場の温泉「ほほえみの宿滝の湯」は宿泊できるわけもなく、近くのルートインにチェックイン。改めて翌日会場へ行き、勝手がわからずうろうろしましたが、当然対局室は観戦できないものの、午後から開催の大盤解説を聴講。藤井猛九段と中村桃子女流のわかりやすくまた棋士のエピソードなどを交えた軽妙な解説を聞き、「大盤解説って堅苦しくなくこんなに楽しいのか」と実感しました。空き時間には将棋の駒つくりの町天童市を散策、名物のそばも食べ、会場の雰囲気を楽しんで満足して帰ってくることができました。将棋は二日制で翌日に熱戦が終結しましたが、渡辺竜王の勝利でタイトル5期連続防衛、永世竜王就任の結果となりました。将棋タイトル戦において3連敗後4連勝の大逆転はいまだこの一回のみであり、大変記憶に残る観戦となりました。(野球日本シリーズでは3連敗後4連勝は時々見られますが)
  これに味を占め、この後も天童での人間将棋、明治記念館での女流王座戦、六本木ニコファーレでの電王戦、秋田市で開催のNHK将棋の日イベントと、年に一回程度ではあるものの日程の都合が合う棋戦・イベントに参加し、いずれも楽しく記憶に残っています。
  例えば鉄道ファンであれば「乗り鉄」「撮り鉄」「駅弁鉄」などのジャンル?があるようですが、ネットなどの進歩で将棋にもいろいろな楽しみ方が出来てきたようです。将棋教室などに通う正統派のほかに、外野でプロ棋士の戦いを応援するような「観る将棋」というものが在ってもよいのかと思い今ネットで検索してみると、有りました! 「指さずに観るだけの将棋ファン『観る将』が急増中!NAVERまとめ」 その他「撮る将」や対局中に出前でとる「将棋飯」注目派もあるようです。ファン急増中にはきっと藤井聡太四段や加藤一二三九段(ひふみん)の活躍の影響も大かと思いますが、俺はもっと前からだぞの気持ちでもう少し書かせていただきます。
  以前は新聞や将棋専門雑誌でしか知れなかった対局内容が、今はリアルタイムで映像とともに知ることができます。将棋連盟公式ライブ中継のほかに、ニコニコ生放送、囲碁将棋チャンネルのTVやネット配信、最近はインターネットテレビのAbemaTVでも将棋専門チャンネルができています。私はこれらのほとんどにプレミアム会員となっていて視聴可能のため、この前の藤井四段の29連勝目の対局時の夜は各局の放送を3つ並行でPC画面に並べ、解説の面白そうな所を次々見るという、贅沢なような実は忙しない見方をしていました。勿論ほとんどの対局では長時間ずっと観る時間はとれませんので、タイムシフト予約をして飛ばしながらの観戦になりますが、解説役の棋士と聞き手の女流棋士のやり取りもわかりやすく面白く十分楽しめます。
  将棋の妙手に感心したり大逆転の展開に息を飲んだりする楽しみはもちろんですが、やはり将棋は人が指すもの。勝敗にまつわるドラマに一喜一憂したり、棋士の個性を知り応援することも「観る将」の楽しみです。対局者だけではなく、解説者役を務める棋士の方も多士済々で、その話術に聞き入ることもしばしば。木村一基九段の味のある解説や豊川孝弘七段のおやじギャグ満載の解説はお薦めです。聞き手を務める女流棋士の方もみな聡明で、解説をうまく盛り上げてくれますし、加えて最近の女流棋士は女子力が高くきれいな方が多いのもオジサンには嬉しいところです。
  昨今のAIの進歩で、悲しいかな将棋も人間よりコンピューターのほうが強いと考えられる時代になりました。しかしやはり将棋は人間同士が指すから面白く、ドラマも生まれます。コンピューターに名人が負けても、将棋ファンはかえって増えています。今後も「観る将」の楽しみは続くことでしょう。
  先日県医師会代議員会の帰り道、御野場たなかレディースクリニックの田中秀則先生とご一緒する機会がありました。先生の息子さんは現在将棋奨励会の初段で、プロ棋士を目指し邁進中。私も定期購読の雑誌「将棋世界」が届くたびに彼の活躍をチェックしています。帰り道の途中の短い時間でしたが、息子さんや藤井四段のことなど将棋関連についてお話しすることができ嬉しい時間でした。息子さんの対局を「観る将」できる日を楽しみにお待ちしております。

  ペンリレーの次の担当は、県立医療療育センター副センター長の澤石由記夫先生にお願いしました。年二回は恒例の小児科同期生の集まり「10期会」でお会いしており、今回その席でお願いしたところ快諾をいただき、感謝です。さきがけ新聞にもコラムを書かれている澤石先生、こちらもよろしくお願いいたします。
 
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