トップ会長挨拶医師会事業計画活動内容医師会報地域包括ケア介護保険について月間行事予定医療を考える集い学校保健関連

<ペンリレー>

発行日2017/08/10
秋田赤十字病院  佐藤 宏和
リストに戻る
家庭菜園、ほんとかいな。
 
  家庭菜園歴は30年になりますが、今でも勉強中です。これまでになるほどなと思ったことや、ほんとかいなと驚いたことをご紹介したいと思います。

枝豆の旬はビールの季節ではない
  枝豆の旬はズバリ秋です。ちなみに枝豆は秋の季語で、昔は立秋以降の食べものだったようです。大豆を未熟なうちに収穫したものが枝豆であり、放っておくとどんな枝豆も完熟・乾燥して大豆になります。国産大豆の主な用途は、豆腐、納豆、煮豆、味噌・醤油などですが、元々このような大豆は枝豆としては食味が悪いため、枝豆専用品種が開発されました。岩手県の佐藤種苗店で開発された「秘伝」などはこれにあたり、枝豆としての収穫時期は9月下旬頃です。ところが、ビールのお供と認識された枝豆は、これでは間に合いませんので、早生(わせ)品種がどんどん開発されました。そこで従来の枝豆は晩生(おくて)と呼ばれています。皆さんは枝豆を買う時に品種を気にしたことがありますか? 早生品種は味では晩生にはかないませんが、早く播種すると早く収穫できます。一方、晩生は播種の時期に関わらず品種ごとにだいたい同じ時期に収穫されます。そのため、夏までは早生の同じような品種がずっと売られていますが、秋になるとピンポイントが旬である色々な種類の晩生が出てきます。私のお勧めは早生ならサッポロミドリ、中生なら湯上り娘や秋田香り五葉、晩生なら秘伝ですかね。我が秋田県は昨年、枝豆出荷量日本一を達成しました。県一丸となって努力した結果だと思いますが、理由の一つに秋田農業試験場開発の秋田県オリジナル品種の貢献があると思います。「あきたさやか」「あきた香り五葉」「あきたほのか」などがそれです。「秋田香り五葉」は秋田で古くから栽培されてきた在来の五葉豆(葉が5枚)の改良版で、甘みが強く秋田のおいしい枝豆の代名詞です。これまでの話はいわゆる緑豆の話ですが、それ以外にも茶豆や黒豆も枝豆として食します。茶豆のツートップは皆さんご存知の山形だだ茶豆と新潟茶豆でしょう。私自身も現在10種類以上の枝豆を作っていますが、それぞれ個性的な味で、初夏から晩秋まで楽しめます。食べ方ですが、面倒でもさやの両端を切り、塩水が浸み込みやすくしてから茹でます。塩はやや多めに。余熱でも火が通るのでまだ少し硬いなという所で上げてちょうどアルデンテです。扇風機で一気に余熱を取り、冷ましてから冷蔵庫へ、食べるのは翌日です。塩味が浸み込んで一層おいしくいただけます。

どのジャガイモがうまいのか
  個人的な見解ですが、私は「北あかり」を食べ始めてからは、男爵やメークインを作らなくなりました。北あかりは黄色で、加熱をすると甘くなり、ホクホクとした食感が味わえるため「黄金男爵」、「クリジャガイモ」などとも呼ばれています。ちなみに男爵はアメリカ産、メークインは英国産、北あかりは日本で改良された男爵の交配腫です。このホクホク感から、ジャガバターやフライドポテトにするととてもおいしいです。しかし何と言ってもお勧めなのは、ポテトサラダです。茹でて半潰しにしたポテサラは、北あかりの甘さが引き立つ一品です。先日収穫したばかりの北あかりでポテトチップスを作りましたが、これまた美味でした。どうしても肉じゃがやカレーなどで煮崩れが嫌だという時だけメークインを使うというスタンスがいいかもしれません。

トマトは水をあげないと甘くなる
  これは最近テレビでも取り上げられ、ご存知の方も多いと思います。トマトは元々アンデス山脈の高原地帯原産のため、比較的痩せた乾燥した土地に適しています。そのため、乾燥下で育てると、果皮は固くなり、小玉となりますが、糖度が上がります。甘いトマトの見分け方はトマトのお尻のスイーツマークです。トマトのお尻に星型の放射状の白い線が伸びているのが糖度の高い証拠です。どうしてもこのようなトマトを食べたい時は完熟したものを通販で取り寄せるのがポイントです。完熟に勝るものはありません。スーパーで売られているトマトは潰れないように完熟前のやや青い状態で収穫しており、スイーツマークは意味がありません。当家では取れすぎた完熟トマトは湯剥きして、トマトソースで冷凍保存します。庭先のオレガノ、バジル、パセリなどの粉末を適宜加えていただきます。

採りたてがうまいのはトウモロコシと枝豆である
  野菜には取ってから熟成するものと、どんどん糖度が落ちていくものがあります。後者の代表がトウモロコシと枝豆です。枝豆は湯を沸かしてから収穫しろとまで言われる野菜です。朝取り〇〇と銘打って売られる野菜は多いのですが、トウモロコシ・枝豆に関しては、茹でるまでの時間も極めて重要です。茹でてしまえば、呼吸をしなくなりますので糖度は下がらなくなります。「嶽きみ(だけきみ)」は岩木山の嶽地区で栽培・収穫されたとうもろこしの総称で、嶽きみという品種があるわけではありません。毎年友人からいただくのですが、寒暖差が生み出す最高糖度は18度とのことで、フルーツのような甘さです。朝が最も糖度が高いので理想は朝取り、朝茹でですが、実際には難しいので、茹でるまで低温保存しているかが重要です。スーパーによっては、トウモロコシを保冷剤や氷の上に置いて売っているところもあり、気配りを感じます。

ズッキーニはカボチャである
  キュウリに似た外観のズッキーニは実はカボチャの仲間です。簡単に言うと、蔓のない細長いカボチャと言えるでしょう。南仏の野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」には欠かせない食材で、油との相性がバッチリです。当家ではオリーブオイルを塗り焼くか、ナスと炒めてトマトソースでいただきます。2-3日取り遅れるとミニバットのような大きさになります。

新キャベツと新タマネギは初物ではなく品種が違う
  我々がよく知っているキャベツはやや扁平で巻の硬い冬キャベツ(寒玉)です。一方、新(春)キャベツは巻が緩く丸い形をしており、柔らかいのが特徴です。冬キャベツを春に収穫したのが春キャベツではなく、全く別の春収穫用の品種なのです。葉が柔らかく、サラダなど生食や油炒め、浅漬けなどに適しています。一方、冬キャベツは煮崩れしにくいので、ロールキャベツなど煮物に使えますし、甘み・歯ざわりがあるのでコールスローでもいけます。トンカツの付け合せはこちらです。夏にも扁平なキャベツが売られていますが、これは高原キャベツ(夏キャベツ)で、寒玉の改良品種です。長野や群馬などの高原で栽培されていますが、秋田ではあまり見かけません。タマネギも新タマはタマネギの早生品種で甘みがあり生食に適しますが、保存性が悪いため、当家では作りません。余談ですが、新ジャガや新ショウガは初物で特別な品種があるわけではありません。

除草剤は台湾製
  草取りが大変で、畑の周囲に除草剤を使うことがあります。ホームセンターなどでよく売られている農耕地用の除草剤と言えばラウンドアップが有名ですが、ちょっと値段が高めです。主成分はグリホサートで、現在特許が切れてジェネリック品が半額以下で出回っています。また、成分は同じですが、農耕地用として認可申請していないため非農耕地用として販売されている台湾製などはさらに半額くらいです。グリホサートは液がかかった雑草を枯らしますが、地面に落ちたら効き目がなくなり分解されます。雑草を枯らした後、種まきもできますが、私は野菜の安全を考えて、周囲の除草のみに使用しています。

最後に
  巷にはいろんな情報があふれています。食育が重視され、スローフードの時代と言ってもいいでしょう。私自身も家庭菜園を始めた理由の一つに食育があります。色々な野菜を作る時、ネットで得た知識は役に立ちますが、場所によって気候も違い、同じ秋田県内でもどの場所かによって播種や定植、収穫の時期が異なります。このような細かな情報はなかなか得ることが難しく、自分の経験則でやっていくしかない部分が多いのです。同じものを沢山作ると消費しきれなくなり、よく妻に叱られます。そこで、多くの種類の野菜を消費できる分だけ作るのですが、これがまた多くの手間を生み、大変なのであります。腰痛と農業は相いれず、車への積み込みを考えて、今年はついに軽量の耕運機に買い換えました。これからも長く農業と付き合っていきたいものです。次回は、秋田赤十字病院腎臓内科の畠山卓先生にお願いしました。いつも遅くまでコツコツと仕事をする堅実派です。先生の異なる一面を知る機会と期待しております。よろしくお願いいたします。
 
 ペンリレー <家庭菜園、ほんとかいな。> から