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<ペンリレー>

発行日2017/08/10
秋田赤十字病院  大内 慎一郎
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久しぶりの友人の電話
 
  先日、久しぶりに学生時代の友人から電話があった。
  この友人には学生の頃から、随分お世話になった。私は羽越線沿線の片田舎の生まれで、長期の休みになると川反や大町で、高校の頃からの気の合った友人達と酒を飲んだ。当時、最終列車は21時を過ぎたころで、宴も盛り上がるころには帰らねばならず「俺のところに泊まって行けよ」と言ってくれる友人の言葉に甘えて、一晩お世話になった。
  電話の主は何回か、その宿を提供してくれた気のいい友人である。泊まった夜は、窓が白々とする頃まで、取り留めのない話をしたものであった。
  そのお母さんがまたいい方で、突然の来訪にも、いやな顔一つせず、フカフカの布団と翌朝の温かいみそ汁と美味しい焼き鮭の朝食を用意してくれた。本当に恐縮し感謝したことを、今でもよく覚えている。
  その友人は頭も良かったし、東京の大学を卒業し、東北には支店のない大手の会社に勤務した。最近、会った時には、執行役員と書かれた名刺をもらっていた。
  その彼からの電話、「今、入院しているんだ。実は俺、もうステージⅣなんだよ。先がそう長くないんだ。」といわれ、頭が真っ白になった。
  ステージⅣはそう長くはないものか。おおかたの消化器疾患では確かに予後は不良である。胃癌のステージⅣ術後の5年生存率は11.0%で、大腸癌は13.2%と報告されている。しかし、少数ではあるが、長期生存する場合がある。日赤病院で経験した症例を紹介したい。
  症例1:50歳女性、S状結腸癌・肝転移で両者を切除、術後15年経過して再発なし。
  症例2:70歳男性、残胃癌・肝転移で残胃と肝臓を切除。術後10年経過し再発なし。
  症例3:70歳女性、胃癌・皮膚転移で胃切除。皮膚転移はS-1による抗癌剤治療で消失し、12年経過して再発なし。
  症例4:53歳男性、直腸癌・肺転移+脳転移、直腸癌と肺転移は切除。脳転移はガンマナイフを施行し10年再発なし。
  高度進行再発例であるが、手術や抗癌剤、放射線による集学的な治療で治癒できたと考えられる症例である。今後、遠隔転移を伴うステージⅣの消化器癌に関しては、有効な抗癌剤の出現や手術により、その治療方針や治療成績が変わっていくものと考えられている。
  友人は消化器癌よりは生物学的悪性度の低い癌で、有効な分子標的薬の開発も進んでいる領域であった。是非、稀なケースの仲間入りをしてほしい。
  ペンリレーとしては、少しかたい内容になってしまった。趣味は?と聞かれて、しいて言うなら「スポーツ鑑賞」の自分には、なかなか気の利いた文章を書くのは難しいものがあり、結局、仕事に関わる内容になってしまったことをお詫びしたい。次回は、いつも何かとお世話になっている「やばせ内科クリニック」俵谷博信先生にお願いします。
 
 ペンリレー <久しぶりの友人の電話> から