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<ペンリレー>

発行日2017/06/10
秋田厚生医療センター  添野 武彦
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電信柱に花が咲く?街路樹無惨
 
  桜が咲いたと思ったら、木々が一斉に芽吹いてきた。新緑とはいうが、実に様々な緑が野山を覆っている。鮮やかな明るい緑はもとより、白っぽい緑、深い暗めの緑、さらには赤を含んだ緑(?)など。新緑の季節というよりは《萌え木の季節》とでも言うのが適切だろうか。新しい緑に囲まれているとそれだけで心が和む。
  しかし、落葉後の冬期間の街路樹を見たとき、非常な違和感を覚えることを一再ならず経験する。プラタナスや欅などの街路樹の多くが幹だけ、または大きな枝を残すだけの状態に変わっているからである。プラタナスは樹齢の若い時は《鈴掛け》などともてはやされ、歌謡曲にもなったこともあるが、元来巨木になる種類である。喬木となるに従いその太い枝は幹から近い部分で再三に亘って切断され、腫瘍状に節くれ立った切断端から時期が来ると辛うじて細い枝が出てくる。もっと悲惨なのはケヤキである。ある病院の近隣公園にある道路沿いの欅の巨木は、小枝はおろか大きな枝も大部分切除され、樹高を抑えるためか幹も三分の二程に切断されている。殆ど幹だけの状態である。昔、小学生時代、運動会での応援では上級生の音頭取りに従って、『もしも○○が勝ったなら、電信柱に花が咲く!焼いた魚が踊り出す!絵に描いたダルマさんが笑い出す!フレー!フレー××!!』と、仕様も無い応援歌で相手チームを揶揄し、味方チームを鼓舞したことを思い出す。将に、『電信柱に花が咲く?』の感がする。樹勢が強いので相当剪定しても樹が弱らないと判断されてか、または落ち葉の季節に、路面を多量の落ち葉が発生するのを予防するためであろうか、かなり太い枝だけに切り落とされた街路樹は無惨である。
  これらの木々は、しかし、新芽を出してからは生存の為に涙ぐましい努力をするように、私には思われる。晩春から初夏にかけて、日照時間が長くなった時期、切り残された幹あるいは太い枝からは、光合成を盛んに行う為であろうか、葉数が異様に多い小枝が無秩序に生え出し、風に吹かれて枝葉をなびかせている。かつてホラー映画で、長い髪を振り乱した女性が恨みがましく井戸や、テレビ画面から現れ出てくる不気味なシーンが放映されたことがあるが、この様相を彷彿とさせる。過剰に剪定された街路樹が、恨みを込めて小枝と葉を茂らせ身震いしている感じがする。長年見慣れた山野の樹木とは余りにかけ離れた状態なので、見ている方も美しく心和む樹木という感じは、全くおこらない。就学前の幼児が描く拙い樹木のような異様さで、心が痛む。
  学生時代に、林学科の先輩と県人寮で同室となった事があったが、その時教えられたことは、森林1ヘクタールは、年間1トンの酸素を生み出しているとのことであった(記憶に間違いがなければ)。このように樹木は景観ばかりでなく、環境改善にも関わっているのである。道路管理、アメシロなどの寄生虫問題、落ち葉対策などの環境整備など、樹木を管理する行政にもそれなりの根拠があって剪定しているのであろう事は理解出来る。しかし、それならば将来を見越した樹種選定、植樹間隔、剪定方法などを充分検討した上で街路樹管理をしてもらいたいものである。電線埋設施策により電柱が姿を消しつつある一方で、太い枝だけに切り揃えられた街路樹を新たな電柱にしてはならない。もっと樹木を大切にしたいものである。
  次は、外科医仲間で秋田赤十字病院副院長の大内慎一郎先生にお願いします。
 
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