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<ペンリレー>

発行日2016/12/10
武田胃腸クリニック  武田 正人
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「ひつまぶし」と内科専門医試験
 
  専門医制度の変更に伴い診療所の医師でも内科認定医の資格を持っていれば、経過措置で総合内科専門医試験を受けられると聞いた。「おっ!これは美味しい」まるで大好きな「ひつまぶし」が目の前に出されたような感覚を覚えた。(尚、ご存じの方ばかりだとは思いますが「ひつまぶし」とは蒲焼にしたウナギの身を切り分けてお茶漬けにして食す名古屋の郷土料理である)
  他にも「美味しい」と思った方がいるのでしょう、受験者数も以前の10倍以上に増加しているとの事。
  しかし、これが考え違いであることにそう時間はかからなかった。勉強し始めてみると、まるで「浦島太郎」状態。日常的に遭遇する頻度の高い消化器、糖尿病、循環器疾患はなんとかついていけるものの「自己免疫疾患」などは抗体の名前がチンプンカンプン。神経内科もMRI画像を読みこなせなければ解けない問題ばかり。
  驚いたのは救急の「骨髄路」(ivではなくio)との言葉。それ用のキットが開発されているとは・・・!
  また「ひつまぶし」ではなく「マブ」の名前のついた分子生物学的製剤が次々と出現。当然、診療所レベルで使用するような物ではない。「インフリキシマブ」「オマリズマブ」「メボリズマブ」「リツキシマブ」「ニボルマブ」。いかがでしょうか。明確に答えられる診療所の医師は尊敬に値する。
  もはや「美味しい」ではなく「マズイ」状態。「アチャー完全に時代から取り残されている」「無知の知」「年寄りの冷や水とはこのことか」との思いが沸々と湧いてきた。
  しかし、既に三万円の受験料を払い込んでいる。「やるだけやるか」「やった分だけ前進する」と我が身を励まし勉強に取り掛かった。2ヵ月前から、まるで医師国家試験並みの猛勉強とあいなった。
  「つらい」「苦しい」「すぐ忘れる」いやはや・・・。だが、同じことも4回、5回とやるとさすがに記憶の定着度が上がってきた。錆びたハードディスクが少しずつ回転数を増してくる感覚?
  どうにか平成28年9月11日の受験日を迎えた。品川駅前のビル内。周囲を見渡せば三十代、四十代の新進気鋭の者ばかり。わしが最高齢か?
  試験は全250問、2時間×3(休憩、昼食時間あり)、計6時間の長丁場。一問あたり1分30秒以下で解かなくてはいけない。全てマークシート。例えば、先に「画像」を見、「回答の選択肢一覧」を眺めて答えが瞬時に思い浮かばなければ正答は難しい。症例を説明する問題の本文はその確認のために読むようなもの。これに気が付くまで暫く時間を浪費した。残念。
  勉強していないところは、いくら考えても解らない。フルマラソンを走り終えたかのような疲労困憊状態で終了。羽田に向った。
  家に着いて久しく飲んでなかったワインに口をつけたが「不味い」「苦い」。脳が疲れすぎて味を感じられないのか、それとも試験の結果の為か。
  「学は光、無学は闇」との言葉がある。今回の試験が単なる「ひまつぶし」・・・・・でなく日々の診療に役立つ事を祈るのみ。
  次回のペンリレーを、いつもワイン会で御一緒する「おのば腎泌尿器科クリニック」佐藤良延先生にお願いしました。
 
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