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<ペンリレー>

発行日2016/08/10
市立秋田総合病院  小泉 ひろみ
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「『おそ松さん』と女子中高生」を考える
 
  平成17年から、「子どもの心の相談外来」をやらせていただいている。だんだんその割合が増加してきて、今では平日の午前午後すべてで、この外来ばかりをやるようになっている。
  最近の外来で。ある中学生の女の子が「話の合う友達がいなくて、学校はつまらない」「好きなアニメは、『おそ松さん』」と。
  最近、アニメを見ていない私は、「あー、あの六つ子?」「みんな女子なの?」と、聞いたところ、「あの六つ子が、大きくなって『おそ松さん』になった」と。
  別の日。不登校傾向の別の女子中学生。「アニメが好き。『おそ松さん』が好き」と。なんなんだ?この「おそ松さん」て?何が、そんなに女子中学生をひきつけるの?
  過日、同僚の姪御さんの女子高生(首都圏周辺地域在住)も、お金を握りしめて「おそ松さんフェア」に行くというのも小耳に挟んだ。
  当然、お得意のAmazon.coで、注文。もちろん、大人買い。全DVD、マンガ、関係本などを買う。「おそ松くん」をご存知の皆様、あの兄弟6人が、成人になって、全員ニートなのです。なぜ、それで女子中高生に受けるんじゃ?ちなみに比較のため、「おそ松くん」も注文。こちらは、かつてよく見てはいたが、それほど思い入れはないので、少しだけ、購入。

まず、違いについて:
 ①以前のおそ松くんたちは、両親が間違えてしまうほど、同じ容姿で、「おそ松か?」「いや十四松だよ」みたいなギャグ(ギャグか?)。一方、今のおそ松さんたちは、顔もキャラクターも6人6様。ニートなので、全員なさけないのではあるが、長男ぽいおそ松、クールぽいカラ松、常識人ぽいチョロ松、暗い一松、異様に明るい十四松、末っ子気質を発揮しているトド松と、キャラ分けされている。顔も洋服の好みも、イメージカラーもちがう。
 ②これまでのホームアニメは、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」に代表されるように、「毎回同じであること」「パターンがあること」が大事だったと思われる。私も東京で1人暮らしをしていた時、なんだか「サザエさん」を見たくなるとか、「あー、日曜日ももう終わりか?」とつぶやいてしまったりと、これらのアニメは、昭和の家庭の原風景のようなものだった。しかし、「おそ松さん」は、毎回ちがうのをコンセプトにしているかのように、とにかく内容も画面もほぼ毎回ちがう。

女子中高生に受ける理由:
  ①の「全員、容姿もキャラもちがう」って、嵐やなんちゃらウエストみたいに、今の日本では、普通の光景だということではないか?
○人組の男子のグループ、女子のグループの写真や画像を目にしない日はない。女子中高生にとって、おそ松さんたちが、ニートであろうとなかろうと、彼らが個性的であること、グループであることが、素敵なのかもしれない。前述の女子中学生にインタビューしたところ、「十四松が好き」と言っていた。
  ②の毎回ちがうというのも、今はアニメでは普通の手法なのかもしれない。おそ松さんたちの顔や線も、時々変わるが、これもたぶん他のアニメでも見かける気がする。これって、ポケモン世代にとっては、通常のことかもしれない。すべてのポケットモンスターたちには、変化型があるから。
また、内容も結構「下ネタ」満載の日もある。きわどい言葉も飛び交う。くだんの女子中学生いわく、「そんなの普通だよ」「ほかのアニメでもやっているよ」と。そうなんですか?としか言えない。
  その他では、「とにかく声優さんが豪華」と。調べてみた。確かに、6つ子全員、主役をはれる方たちのようだ。みんなイケメンである。歌も歌うようだ。脇役のイヤミ(本人は、「かつてミーは、主役の6つ子より人気があった」と)も、有名な声優さんらしい。6つ子が全員アイドル風の容姿になる時があるが、そのような時、たしかにそれぞれ「王子キャラ」をやれそうなかっこいい声を出す。これも女子中高生に人気の所以か?
  また、グッズが多い。しかもそれぞれ、6種類(つまり6カラー)製造されている。普通に買える。先週仙台駅でもみた。残念なことに、朝土崎駅から秋田駅の電車通学の女子高生を観察した限りでは、カバンにつけている子はまだ見ていないが。

  だんだん「おそ松さん」についてわかってきたが、外来の2人の女子中学生が「好きなアニメは『おそ松さん』」という時の、なにか少し「斜めな笑顔」がちょっとだけひっかかる。教室でそのように言ったとき、周りの反応はどうだったのだろうか?周りの女子中学生は、嵐とかなんとかウエストとか、そんな話題が多いのだろうか?大体、あの子たちは、クラスメートの前でそんなことをもう言わないのかも。勝手に想像してしまった。「おそ松さん」好きって、少しだけ日陰なのだろうか?
  でも、私がこのペンリレーを書くために、外来を再診した女子中学生に、「おそ松さん」についてインタビューしたときのその顔が、ちょっとはにかみながらもすごくキラキラしていたのは、良かったなあと思っている。

  次回のペンリレーは、医学以外にも広く博学でいらっしゃる市立秋田総合病院消化器内科の千葉満郎先生にお願いすることができました。ありがとうございます!!
 
 ペンリレー <「『おそ松さん』と女子中高生」を考える> から