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<ペンリレー>

発行日2016/07/10
秋田赤十字病院  谷 貴行
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初めての自転車
 
  子供の頃自転車にはだいぶ世話になったが、初めて乗れるようになった時の記憶は全く無い。何回も転びながら練習したのか、いつ何処で誰とどうやって練習したのか、何歳だったのか、何も覚えていない。両親に聞いてみたところ、「あ?どうだったかな?覚えていないけど、教えてはいないな」「昔は近所の子供同士で練習したんでないか」とのことであった。
  自分の子供には子供同士で練習できる様な環境を与えてやることはできなかったが、この5年の間に年の近い3人の子供と一緒に初めての自転車の練習をする機会を持てた。この春には下の子が一人で乗れるようになり、無事に3人とも一人で乗れるようになった。何も準備なしでのぶっつけ本番、行き当たりばったりの練習であったが、十分結果は出せたので、どうやったのか振り返ってみる。
  自転車自体は小さな14インチ位の大きさで行った。足さえつけばなんでも良いと思われる。補助輪は外してしまって使わず、最初から普通の2輪の自転車に乗ってもらう。上の子が補助輪付きの自転車にうまく乗れなかったのがきっかけで、一旦傾くとそのまま倒れてしまい「もう嫌だ、こんなの取ってくれ」と泣かれたので、それ以来やめてしまっただけである。練習法はごく単純な方法であった。後ろから覆いかぶさるようにして、ハンドルを手で支え、ひたすら押して前に進むのみである。やってみてわかったが、小さな子供が補助輪なしで初めて自転車に乗る場合、事前に練習法を下調べしておくか、練習用の自転車を準備して臨まない限り、この方法でしか練習のやりようがない。子供は自分ではハンドルを支えられないので、ハンドルを代わりに持って進行方向を保持してあげなくてはいけない。ペダルを漕げなければ前進できないので、代わりに押して前に進む必要がある。その状態を続けることで、ハンドルを保持してバランスをとることと、ペダルを漕いで前に進むことを同時に体で覚えてもらう。はじめのうちは「絶対離さないでよ、離すなってこのバカー」と叫びながら、ほぼ何もする事ができない。励まして、押して、進み続けていくと、徐々に感覚をつかんでくる。すると、子供の方から「もう離してといいよ、もう大丈夫」と行ってくるので手を離すと、ヨロヨロしながらも、自分一人で進めるようになっている。ほぼ確実に、時間にして30分くらいであればここまでできるようになる。あとは「もう一人で大丈夫、触らないで、あっちにいってよ、邪魔だよ」と行ってきたら、ひたすら練習して乗れる距離を伸ばしてもらうだけである。
  この方法には欠点が2つあった。1つは押す側が体力的に相当きつい事である。ハンドルを支えるにはかなり前屈姿勢になる必要がある。その状態で、ペダルを漕ぐよう声をかけながら、走り続けるのはかなりしんどい。慣れてくるとスピードも上がるので、最後にはもうついていけなくなってしまう。もう1つのほうがより問題で、ブレーキをかけて減速する事、危ない時にしっかり止まる事が教えにくいのである。このやり方だとバランス取る事とペダル漕いで進み続ける事の2つを同時に行うので、減速と止まる事が疎かになってしまう。すると一人で長い距離を乗るようになった時に危険が待ち受けている。カーブを曲がり切れなくなったり、危険な時でも止まれない事になってしまう。我が家では3人がそれぞれ、カーブを曲がれずに藪に突っ込む、大きな木に顔面から激突する、ブロック塀に真正面から大の字で突っ込む、ことになってしまった。いずれも大事には至らなかったもの一瞬青ざめた瞬間であった。子供自身も恐怖心と、痛い思いをすると学習するらしく、不思議と同じ失敗は繰り返さない様であった。
  後日知ったことなのだが、最近では初めての自転車の練習法として、誰でも効率よく短時間で乗れるようになる方法が知られていて、練習専用の自転車もあるようである。ネットで調べれば簡単に情報を得ることもできる。ペダルを取っ払って練習するのが最も確実かつ効率のいい方法なようで、親が支えたり押したりする必要もなく、子供が自分で自然に覚えていくことができるらしい。かえって面倒な気もするが、もしもまた教える機会があったらこうした方法も試してみたいと思っている。
  次は秋田赤十字病院呼吸器内科の守田亮先生にお願いしました。よろしくお願いいたします。
 
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