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<ペンリレー>

発行日2015/11/10
こしむら糖尿病内科クリニック  越村 淳
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フン害に憤慨
 
  クリニックを開業して1年が経ちました。勤務医時代とは全くちがう環境にようやく慣れつつあります。開業前からいろいろ準備してきたつもりでしたが、いざ始まってみればアクシデントの連続です。夜間急患や重症患者で呼び出されることはなくなりました。しかし経営や労務、税や保険や年金、薬品などの仕入れや広告、はては草むしりや雪かきなど、悩むことは幅広くなりました。なかには全く予想していなかったトラブルに苦しめられることもあります。それが「フン害」であります。
  開業当初は気付きませんでした。いつからかクリニックの玄関に立つと、懐かしい長野の田舎の「こやし」の香りが漂いはじめました。特に疑問を感じなかったのですが、冷静に考えるとクリニックの周辺は住宅街であり畑はありません。というか、かなり近いところから臭いが発生していることに気づいてしまったのです。ありました。フンが。クリニックの玄関横の低い木が植わっている花壇にかくされていました。その数多数。丁寧に砂でかぶせられている事から犯人は猫であることが推察されました。
  そういわれれば心あたりがあります。野良猫がうろうろしています。灰色のやや大きいのが1匹、黒い小さめのが3匹(おそらく兄弟)。首輪をしていないので野良だと思います。もちろんフンをしている現場を目撃した訳ではないのですが、現場付近をよく歩いており、かなり怪しい。フンの処理があまりに臭くてつらい事や、玄関先であり患者さんにも不快である事などにより対応にせまられました。猫を飼ったことがないので、まず猫のお勉強です。猫は場所に執着し、フンも決まった場所でおこなう。さらさらした土(砂)を掘り、まず尿をしてから排便、その上に土(砂)をかぶせる、と。悲しいことに、私の命のクリニックは彼らのトイレになっていたのです。撃退法ですが、残念ながらPubMedでは検索できませんでした。ペットボトルに水をいれて置く、ミカンの皮を敷き詰める、などは効果が薄いとヤフー知恵袋にあります。お金をかける必要がありそうです。
  近所のホームセンターに行くと、猫対策グッズのコーナーがありました。猫だけでなく、ネズミ、蛇などいろいろな害獣、害虫用があることに驚かされました。まずはシンプルに「砂利を敷き詰めて簡単に土を掘れなくしよう」と考えました。砂利、ふぞろいな粒20キロで400円くらいで販売されています。意外に安いのですが、とにかく重い。何とか2袋買って敷き詰めたら花壇の面積の半分くらいで無くなってしまいました。全然足りない。当然砂利のないところにフンされて撃沈。後日、3袋追加し全面に敷き詰めましたが、翌日それを掘り返されフンがありさらに撃沈。猫は賢く、手ごわい。
  そこで奮発して猫の糞尿臭消しの液体約2000円と猫がいやがる顆粒状の物質2000円以上を購入。植物にやさしい成分とのこと。これらをたっぷりまきました。翌日フンがなく、「人間の科学の勝利だ!」と酔いしれていたら3日後フン多数発見し撃沈。「間違いない。奴だ、奴が来たんだ」と戦慄する私。
  次はどうするか。センサー内蔵で猫がくると自動でスプレーを発射する機械は6000円以上もします。無効だった時のダメージは大きい。もっと過激にBB弾で撃ったり、殺鼠剤入り団子を置いたりする事も脳裏をかすめましたが動物愛護団体に怒られます。もはやこれまでか。けっこうストレスになりました。
  しかし正解は100円ショップにありました。別件でたまたま立ち寄った100円ショップで、偶然猫対策用のプラスチックの格子で無数の棘がでている商品をみつけました。これを4つ花壇に敷き詰める。なんとこれだけで猫があきらめたのです。歩くと棘が肉球にささる(といってもプラスチックなのでさほど鋭くないのですが)らしく、また土を掘ろうにも格子が邪魔してうまくできない。こんな簡単な道具で解決したのです。必要経費たった400円。今までの出費は何だったのでしょうか。しかしあの格子状の猫グッズを作った人は本当にすごいと思います。商品名は忘れました。
  毎朝クリニックの玄関を開けるとき、必ず花壇を見ます。フンがないと爽快な気分で1日がはじまります。ここ3週間はフンがありません。でも奴らはどこでフンをやってるんでしょう?と心配になり別の庭などを偵察にいく日々です。悩みはつきません。この原稿が掲載されるころに新たなフンが発見されないことを祈っています。
 
 ペンリレー <フン害に憤慨> から