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<ペンリレー>

発行日2015/10/10
鈴木内科医院  鈴木 和夫
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鉱石ラジオはいかがでしょうか?
 
  鉱石ラジオをご存知でしょうか?
  1906年、ピカールが鉱石検波器を発明して以来、真空管ラジオが普及するまで、ラジオといえば鉱石ラジオでした。同調回路(コイル、コンデンサー)、検波器、イヤホン(レシーバー)などわずか数点の部品からなる最も簡単な受信機です。
  私は、10歳の誕生日に鉱石ラジオのキットを買ってもらい、方鉛鉱や黄鉄鉱といった鉱石が電波を検波し音声に変える摩訶不思議な現象にとりつかれていきました。工作少年だった私は、並三ラジオ、高1ラジオ、5球スーパーと徐々に複雑な回路をもった受信機の製作にはまっていき、小学校高学年の頃には、アマチュア無線やら管球式アンプの製作にまで触手を延ばしていました。しかし進学するにつれて、他のことで忙しくなり工作とは疎遠になってしまいました。
  転機となったのは数年前、東京へ行った際、神田の古本屋でのある無線関連雑誌の記事でした。昭和30年代、鉱石ラジオでスピーカーを鳴らす試みが掲載されており、広い土地に空中線アンテナを張り巡らし、検波器を2個使用した倍圧整流という回路でスピーカーを鳴らしていました。増幅回路を持たない鉱石ラジオでスピーカーを鳴らすことはできないと思い込んでいた私には、かなり衝撃的な記事でした。
  どうしても自分でやってみたくなり、同様の回路を作ってみました。部品が少ないので、現在でもそろえるのは比較的容易でしたが、巨大な空中線アンテナはとても無理でしたので、導線をループ状に巻いたループアンテナで代用してみました。しかし、イヤホンで聞くことはできても、スピーカーは全く鳴りませんでした。
  何とかならないかと四苦八苦しているうちに、コイルの巻き方やコンデンサーの選び方(エアバリコンやポリバリコンなど)、また、各々の部品の合わせ方によって、受信状態が大きく変わることが分かってきました。立地条件や電波環境によっても変わると思います。アンテナも同軸ケーブルを利用すると、感度をかなり改善できることを知りました。このようなノウハウは工作本や無線関連雑誌を読んでもまったく記載されておらず、自分の経験と勘で見つけていくしかありません。たかが鉱石ラジオ、されど鉱石ラジオです。
  今のところ、同軸ケーブル利用のアンテナとホーンスピーカーを使い、静かな部屋であれば、2~3メートル離れてもはっきりと聞くことができます。放送されている限り、まったくの無電源で、延々と鳴り続けます。聞きたくない時もありますので、スイッチが必要です。
  このようなこだわりは、完全に趣味の領域であり、そんなことに固執して何になるんだと言われればそれまでですが、災害時には役に立つかもしれません。
  複雑な回路を持たない鉱石ラジオの音は、ひずみのない素直な音で、独特の癒し効果があります。iPhoneやiPadを自在に使いこなす息子世代からは、生きた化石のような目で見られますが、このようなアナログ的こだわりからは、生涯ぬけられそうにありません。
 
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