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<ペンリレー>

発行日2014/07/10
秋田赤十字病院  齋藤 宏文
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山菜四天王
 
 春を象徴する期間限定のわくわくする風物詩といえば、筆頭に挙がるものが桜の花でしょう。天候や地形でばらつきがありますが、桜の開花時期は秋田県中央部ではおおよそ4月の下旬から5月上旬で、見ごろは概ね10日間程度でしょうか。私も4月に入れば桜の開花を待ちこがれてわくわくしますが、この時期花見以上に楽しみにしている風物詩があります。今回、私は秋田赤十字病院の血液内科の仲間である山中康生先生からペンリレーのバトンを頂きましたので、季節外れとなってしまいましたが私の春の楽しみである山菜について紹介させていただきます。
 山菜は、山野に自生する可食性の植物と定義されます。その種類は数百種類に及ぶといわれ、植生は丘陵地、渓流、山林にとどまらず海岸線、土手、空き地にまで及びます。その中でも味、知名度、採取の手軽さとしてメジャーなものはワラビ、ゼンマイ、たらの芽、タケノコ、コゴミ、ウドなどが挙げられます。今回紹介させていただく山菜4種は、手軽さと知名度はこれらメジャーな山菜に及ばないものの、味と香りはまったく引けをとりません。山菜関連の本を読むと、これらは大体“山菜の王様”とか“山菜の女王”と名づけられていますので “山菜四天王”と名づけさせていただきました。

1.ヨブスマソウ(キク科)
 秋田ではホンナの呼び名の方が馴染み深いでしょう。葉はムササビのように展開します。茎の中心は空洞になっているので根元から折ると“ポン”と心地よい音が鳴りそれと同時にキク科特有の上品で爽やかな香りが漂います。ホンナの名前はこの茎を折る時の音に由来するとの説があります。魅力は香りと食感で、薄味のお浸しがおすすめです。渓流を挟む斜面や林の縁で、湿った柔らかい土壌に好んで生えます。

2.モミジガサ(キク科)
 秋田ではシドケの呼び名の方が馴染み深いでしょう。しかしモミジガサとは言い得て妙で、葉はもみじにそっくりで、葉は傘が順番に開いていくように展開します。シドケの魅力はいかにも山菜らしい独特の香りとキド味で、薄味のお浸しがおすすめです。植生はホンナに類似しており、渓流を挟む斜面や林の縁で、湿った柔らかい土壌に好んで群生します。極めて稀ですがトリカブトの誤食例がありますので、慣れないうちは葉の形を良く確認して摘みとった方が良いでしょう。

3.ミヤマイラクサ(イラクサ科)
土手や荒れ地に生えているイラクサの仲間です。ミヤマとは深山の意で、シドケやホンナのように渓流を挟む斜面や林の縁で、湿った柔らかい土壌に好んで生えます。秋田ではアイコと呼ばれています。ギザギザな縁取りの楕円形の葉が対を成して展開し、茎には無数の小さなトゲが付いています。このトゲが曲者で、素手で触ると電撃痛が走り痛痒さがしばらく続くので摘み採る時は軍手着用が必須となります。おすすめの食べ方は薄味のお浸しです。葉を切り取り茹でてから皮を剥いて食しますが、加熱の過程でトゲは何処かに消えてしまいますので茹でた後は素手で扱っても大丈夫です。魅力はほのかな甘味としゃきしゃきした食感で、茹でが完璧だと味付けがいらなくなるほど美味になります。

4.シオデ(ユリ科)
秋田ではヒデコと呼ばれています。秋田民謡のひでこ節はこの山菜を唄ったものです。見た目はアスパラに似ています。味もアスパラにそっくりですがより濃厚です。おすすめの食べ方は炒めものや塩茹でです。狙って採れるものではなく、群生もしないためなかなかまとまった量が採れません。それゆえ幻の山菜とも呼ばれており、市場にもなかなか出回りません。日当たりのよい荒れ地や林の縁で見つかることが多い印象があります。

 以上、山菜四天王を紹介させていただきました。他にもミズ、イワダラ、ニオサク、ワサビ、カタクリ、サシボ、ウルイ、シャク、フキ、アザミ等々紹介したい山菜がたくさんありますが本当にキリがないので割愛させていただきます。山菜四天王はスーパーマーケットではなかなか売られていませんが、シーズン中は市場や道の駅や地域の特産物販売所で見かけます。もし食する機会がありましたら、是非その個性を堪能していただきたいと思います。また、斜面での採取に臨む装備が必要となります。山菜採りを始める場合は、ベテラン同伴で経験を積むことをお勧めいたします

 次回執筆者として、高校の同級生で祐愛会加藤病院院長である加藤倫紀先生にバトンを渡します。
 
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