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<ペンリレー>

発行日2014/03/10
秋田赤十字病院  畠山 卓
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中田ヤスタカ氏のこと
 
 市川先生から私メにバトンが渡されはや2ヶ月余り。あまりにも有り難かったため大事に温め過ぎ、既に原稿〆切が遙か彼方に過ぎ去ってしまっていました(泣)。ついに今日は原稿の催促。担当編集さん、ごめんなさい。さて、何を書いたものか。
 今回の執筆にあたり、今までのペンリレーを参考のためにざっと読んでみましたが、音楽ネタはやはりClassicやJazzネタが多いようです。さすがハイソな集団! そこで、私は敢えて場違いなJ-POPネタを書き散らしてみたいと思います。書き散らすというか、最近は殆ど中田ヤスタカworks一択だったりするのですが。いや、もちろん彼は知り合いじゃないし、自分が偉い音楽評論家でもないので呼び捨てもどうかとは思うのですが、かといって芸能人のことを書くのに「さん」づけもへんかなぁ、と。で、「氏」付にしてみました(笑)。
 きっかけは2007年の夏、最近の金太郎飴J-POPに満足できず、なにか面白い音楽はないかと当時のYahoo!動画(現GyaO!)をあさっていて、Perfumeのページにたどりついたのが最初だったと思います。Perfume? そう、3人組テクノポップ・アイドルの、昨年でNHK紅白連続6回出場の、最近の◯ョコラBBのCMのアレです(◯ーザイさん、ありがとうございます)。当時はまだ「ポリリズム」をリリースする前で世間的には無名の時代でしたが、MVが無名アイドルのくせに妙に格好よくてノリノリなのがひっかかり、バイト先へ向かう車の中でヘビロテするようになりました。「テクノポップ〜」と銘打ってはいましたが、やっていることはYMO的なソレではなくて(メジャーデビュー以前はそうだったようですが)、広義のテクノではあるのでしょうがクラブでかかるようなビートと低音の効いたハウス系音楽が主体でした。いや、クラブなるところへは行ったことがありませんが(汗)。そこへ「ポリリズム」のリリースでした。この曲はテレビでは最初披露されなかった間奏のポリループ部分がミソで、この部分を初めて聴いた時には正直ぶっタマゲました。アイドルでここまでやるのかと。かつてプログレの変拍子などを聴きまくっていた時の昔の血が騒ぎましたねぇ、ええ。この曲がきっかけで彼女らはブレイクしました。その人気が拡大していく様子を脇からやきもきしながら眺めていたわけですが、ライブ会場が次々と大きくなっていく様は実にロック的かつドラマティックで、なかなか興味深かったです。ただ、ライブは大都市圏でしかやっていないので、仕事柄行く暇がないです。BDやDVDが多数発売されており、その様子をみることはできます。生演奏ではないのでCD鑑賞会・学芸会との批判もありますが、日本の最先端クリエイター達が結集してライブを演出しており、1度は生で見てみたい気もします。尤も、チケットは簡単にはとれないようです。メロディーに80’s popsを彷彿とさせるものが比較的目立つからか、客層に40歳前後のおっさん・おばさん(失礼)が意外に多いのだそうです。アイドルに免疫がある世代なのですかねぇ。特にシングルカットタイトル曲よりC/Wやアルバム曲に佳曲が多く、バリエーションも豊かです。よく全部ピコピコして同じに聞こえると批判されますが、興味が無いとそんなもんなんでしょうか、私にはその感覚が信じられません。初めて通販でCDを買ったのも彼女らの作品でした。店頭では恥ずかしくて買えなかった、ってここに書いているし。毎回新曲リリースのニュースがあるたびに、発売日をいつも楽しみにしています。最近Perfumeも露出が減ってきて、CD売上も減少傾向にありますが、まだまだ東京ドーム2daysを満員に出来るだけの根強い人気があります。所属事務所アミューズの現会長大里洋吉氏がキャンディーズのマネージャーだったことも有名で、3人に「平成のキャンディーズになれ」とハッパをかけていたそうです。だからといって、突然「普通の女の子になりたい」といわれても困りますが(笑)。いずれ中田氏とのタッグが続く限り、私はフォローしていくつもりです。ファンクラブには入っていませんが(笑)。
 きゃりーぱみゅぱみゅ氏も中田氏が音楽プロデュースをおこなっており、どちらかと言うと彼は最近こちらに入れ込んでいる感もあります。中田氏はちゃんと彼女のコンセプト理解して曲を作っているので、Perfumeと同じような楽曲が実は余りありません。ま、この世界は個人的に趣味ではないですが、やっぱりよく練られた曲の構成だと感心することもしばしばあります。YouTubeでMV再生回数が多いらしく、海外からのアクセスも(宣伝の「世界的に大人気!」というのはかなりオーバーだとは思いますが)日本のアーティストとしては多いようです。これは中田氏の楽曲よりも、増田セバスチャン氏によるアートディレクションによるところが大きい気がします。「PONPONPON」のMVは、それは衝撃的でしたから(ご存知ない方にももしかしたら一見の価値はあると思います)。
 かつては鈴木亜美氏やMEG氏にも楽曲提供をしており、あまりヒットしてはいなかったようですが良曲がたくさんあります。エレクトロしていない曲もたくさんあります。コルテモニカは隠れたおすすめです。
 で、中田氏ですが、彼のメインプロジェクトは、「CAPSULE」です(ちょっと前まで、小文字の「capsule」でしたが、レコ社移籍に伴い変更したようです)。こしじまとしこ氏との2人組ユニットですが、こしじま氏はボーカル担当、といっても中田氏の作る曲の音素材といった扱いが最近は多く、ほとんど中田氏のソロ・プロジェクトに近いです。昨年3月まで、秋田朝日放送の「サタナビっ!」のテーマソングに彼らの楽曲が使われていました。他にもテレビ番組のBGMやジングル、SE等で彼らの楽曲が使われていることが結構多いです。業界にファンが多いのでしょうか。
 彼のすごいところは、DTM(DeskTopMusicの略:パソコンを中心とした機材を使って音楽制作をすること)でマスタリングまでの最終プロダクトを、自分で一気にやってしまうところがその1。Autotuneでボーカルを「ケロらせる」のも今では珍しくなくなりましたが、これをJ-POPで一般化させたハシリは彼です。しかも、いかにもケロらせました的な使い方はせず、自然でうまい。彼はdesktop musicianの星ですね。幼少時にはピンポン録音でお菓子箱を叩きながらなどの多重レコーディングもどきもやっておられたそうです(自分も同じようなことをしたことがあります)。昔はDTMといえば、今のカラオケのようにGS/GM音源をMIDIで鳴らすようなのを言っていましたが、今ではパソコンだけでデモテープどころか売り物になるような音源まで制作できるくらいになっているのですね。
 ハウス系楽曲が多いためループが多用されがちな曲作りがしばしば行われ、それが退屈との評を受けることも多いわけですが、「Aメロ-Bメロ-サビ1-Cメロ-サビ2」的なJ-POPのformatに縛られず、自由な曲構成を自然に聴かせてくれるのが彼の真骨頂です。これがすごいところその2。
 で、CAPSULEではちょっと前まではクラブで踊れるような曲が中心でしたが、昨年10月にリリースされたアルバム「CAPS LOCK(ユニット名の大文字化にひっかけたのでしょう)」ではそれまでの雰囲気がガラッとかわり、まるでプログレッシブ・ロックのようなかなり前衛的な音作りとなっています。聴いてみて「これは売れない」と思いましたが、やはり売れませんでした(オリコン週間ランキング13位が最高:それまでは3〜5位)。大体クラブでこの曲では踊れないだろうと。でも、売ることよりも作りたい音楽を作ることを優先して作っているのがよく分かる作りです。曲名もアルバムタイトルにちなみキーボードトップの刻印にしたり、iTunesなどでの曲のバラ売りが一般化した現代においてもなお、曲順や構成などのアルバムコンセプトにこだわったりと、彼の音楽的ポリシーがよく現れた(問題作でもありますが)良作といえます。彼は2時間で1曲を作ってしまえるそうですが、作り直しも珍しいことではないようです。その時の気分が違えばベストなエディットも違うのだそうで、そのこだわり方はハンパないです。この音楽に対するこだわりがすごいところその3でしょうか。かっこいいわぁ。
 拙文を読んだ上で興味をもたれた方がおられましたら、レンタルでもいいから曲順を変えずに(ここがポイント)是非彼のアルバム作品を聴いてみてほしいと思っています。プログレ耐性のある方なら、私の言っていることがわかるのではと思います。
 というわけで(?)、拙文でこの神聖なる場を汚してしまい恐縮です。ごめんなさい。同好の士が仮におられましたら、ぜひご連絡下さい。一緒に傷を舐め合いましょう(笑)。お口直しに当院血液内科のホープ、山中康生先生にバトンをスルーします(汗)。

 
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