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<ペンリレー>

発行日2014/02/10
秋田県赤十字血液センター  長沼 雄峰
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学術講演会荒らしはもう止めて、いまは日本医師会雑誌の生涯教育カリキュラムに熱中中
 
 
 テレビドラマみたいな長いタイトルになってしまった。心あたりのある方は、もうこの先を読まずとも察しがつくことでしょう。
 以前は毎月送られてくる日本医師会雑誌の論文に目を通し、理解できたとか、難しかったとか、感想を書いたハガキを投函すれば点数が稼げていた。
 平成22年度から制度が変わった。落とし穴が仕掛けられてある問題にいちいち答えなくてはならない。
 具体的には、或るテーマに沿って特集が組まれている。そこから出題される設問は1カリキュラムごとに5問ある。そのうち3つ以上正解だと0.5単位が付与される。毎号2カリキュラムずつある。年間12号のほかに特別号が2号あり、全部合格点をとると年間14単位を取得できる。
 今までは学術講演会にも小まめに通っていた。帰りがけに情報交換会と称する晩酌付きの夕食もでるので、タクシー代をかけてでも元はほぼ回収できる。専門分野とかやや関連のある話題のときはよい。無闇に通いつめていると、また食事代を浮かせにやってきたかと勘ぐられそうで、座り心地がよくない。それもあるけど、夜おそくまで精をだすと翌日に響くようになって、学術講演会荒らしにはだんだん足が遠のいていった。
 その一方、誌上の生涯教育の結果はどうか。
 平成22年4月のスタートから一度も見逃したことはない。5問中2問しか正解が無く0単位が1回あった。3問正解してやっとパスしたのが8、4問正解が29、満点で合格したのが60。それはそれとして、この3年半で48.5点を取得した。
 こうして居ながらにして所定の生涯教育カリキュラムを習得し、なんとか医師であり続けている。ちなみにこの15年間、1人も病人には手を触れていないけれど・・・
 これからもほとんど役に立たないだろうに、何時、何処で、何故にこんなことに熱(いき)り立っているのか、その様態を想像できるでしょうか。
 日本赤十字社に仕事を得てから11年がたつ。献血してくれるお客さんは徐々に減っている。その分だけお茶を引いている時間は増える。ポツリポツリ読んでいた文庫本も積み重ねると背丈ほどになった。もうそれにも飽きた。
 そこからゲームが始まった。日本医師会雑誌はいつも鞄の中にある。次号がくる前に今のを仕上げておかないと滞ってしまう。追い立てられているうちに、いつの間にか追いかける立場になっていた。これ程に力んで勉学に熱中している自分を今まで見たことがない。意外な持続力におどろいている。
 テレビで踊っているAKB48とも見紛うような、たとえばCCR4とか、CD20とか横文字と数字が並んだ新医学用語には手をやく。不合格になったあれは、そんな時のことだったかもしれない。
 当初は難問も多かったが、読者からの悲鳴が届いたのだろうか、このごろは素直でやさしくなったように思う。
 ときにはナウい知識にであったりして得をしたような、いい気分にもさせられる。まんざらでもない。
 ところでこのゲーム、いつまで続くのか。我が命果てるまでか、それともこの制度が廃れるまでか、当分は日本医師会との意地の張り合いが続きそうである。



 こんなことを書く羽目になったのには、ある女性が係わっている。いつもやさしい笑顔のその人から、突然電話があった。「お願いがあるの」という甘い声に耳をくすぐられた。「助けてほしい」と今にも消え入りそうな声。何かと問えば、ペンリレーを引き受けてほしいという。断る理由も見当たらないし、心情にひかされてOKしてしまった。
 ほっとした様子の彼女、「実は受けてくれる人がいなくて困っていたの」と告白するではないか。“しまった”と気付いたがもう遅い。他人に何かを押しつける術は、彼女よりもずっと苦手だからだ。
 それにしても編集者は頭がよい。憎いほどにだ。はじめに1回ボタンを押せば自動装置が働いてくれて、あとは何もしなくてよい。次から次へと、永遠に。
 はい、次は秋山まり子さんです。どうぞよろしく。
 
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