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<ペンリレー>

発行日2013/12/10
今村記念クリニック  後藤 敦子
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アルカリと酸と石鹸と
 
 
 最近、アルカリと酸と石鹸にはまっています。
 二年ほど前、乾燥肌なのに背中は脂っぽいのが気になって、ボディソープをナチュラル系のものに替えたら、肌のストレスがなくなりました。いいと思ったら徹底的にやってしまう性格はどうしようもありません。化粧品や洗剤などもオーガニックで肌にも環境にもやさしいものに替え、成分表示を気にするようになりました。洗濯洗剤は合成洗剤から液体石鹸に替えました。
 ところが、洗濯したはずのタオルが、ずんずん黒ずんでくるんです。どうしてどうして? と、インターネットで検索すると、石鹸洗濯は洗濯槽の汚れが増すとのこと。これはまずいと、ストックしてあった洗濯槽洗剤で、一晩、洗濯槽を浸しました。結果、世にも怖ろしいものを見ることに。
 朝、洗濯機の蓋を開けたら、ふわふわと、ヘドロのような茶色いものが浮かんでいるのです(巷ではこれを「ピロピロワカメ」というそうです)。こんな汚い洗濯機で洗っていたのか!と、背中が寒くなりました。ピロピロワカメは網ですくいとり洗濯槽を洗いましたが、洗濯機を見る度に背中がぞわぞわして困りました。
 ちょうどこの頃、わが家の末っ子猫が遊びモードに入っており、遊んであげないと布団におしっこ攻撃をするという事態が続いていました。カバーや毛布や布団をしょっちゅう洗わねばなりません。少人数用の洗濯機で布団は洗えないわと理由を付けて、大容量の全自動縦型洗濯機に買い換えました。ピカピカの真新しい洗濯機のどこにももう、あのピロピロワカメはありません。すっきりです。金輪際ピロピロワカメを発生させないぞと意気込んで、石鹸洗濯について調べまくりました。
 洗濯の歴史を勉強してわかったことは、軽い汚れならアルカリで洗濯すればいいということ。昔は日本でも灰を使った洗濯が普通に行われていたんですね。油汚れには石鹸がいいけれど、石鹸はアルカリ性の水でないと泡立たず、泡が汚れを落とすのだということ。家庭で使うアルカリ剤には、pHが高い順に、炭酸ソーダ・過炭酸ナトリウム・セスキ炭酸ソーダ・重曹といろいろあって使用法も違い、ついでに、トイレ・浴室清掃やポット洗いにはクエン酸や酢酸が有効とのこと。いいと思ったら、とことんです。これらの酸・アルカリが、わが家の洗剤棚にずらりと並びました。pHと化学式までラベルにつけそうになって踏みとどまりましたが、ありし日の化学実験を思いだしてにんまりです。で、今は、セスキ炭酸ソーダに酵素を加えたセスキプラスというアルカリ剤で洗濯し、週に1-2回、汚れの目立つ時だけ、洗濯石鹸にアルカリを加えたもので洗濯をするというスケジュールになっています。
 サンマを焼くときには、グリルの受け皿に重曹をさらりとしいてから焼きます。受け皿は油でべたべたになるけれど、重曹は研磨作用もあるから、そのままタワシで洗えばオッケー。アクリルたわしを自作して食器洗いもグリセリン入りの液体石鹸で洗っているので、手荒れも少なくなりましたし、なにより、グラスがいつもピカピカです。
 先日、年越しの大掃除でもないのに、換気扇洗いを思い立ちました。大きな換気扇フードの中に頭を入れて換気扇とフード全体を洗う大仕事です。どう攻略したら効率よくきれいになるかと作戦を立てました。まず、シンクで洗えるものは外して、全体にセスキ炭酸ソーダ水溶液をスプレーし、油汚れを緩めます。小さなバケツに石鹸のあわあわを山ほど作って、ゴム手袋で泡を全体に塗りつけます。換気扇の下には新聞紙を敷きましたが、石鹸泡は強力で、ほとんど下に落ちませんでした。しばらく放置してからぼろ布で汚れを拭き取り、ハブラシ(タフトブラシという小さなもの)も使ってすみずみまで汚れを搔きだし、布で磨き上げます。昨年暮れに掃除していたせいか、汚れが少なくてちょっと達成感がなかったかな。でも、作業のあとのビールは最高でした。
 次にどんなマイブームが来るのか予想がつきませんが、以前マイブームだったフライフィッシングとサッカー観戦は夫との共通の趣味になって、認知症の母と脳梗塞の父を介護中ですが、癒しの時間を作ってくれています。児童文学はセカンドキャリアを目ざしているのですが、今年の1月から毎日小学生新聞で「小児病棟504号室」というファンタジーが3ヶ月間連載されました。まもなく、「いのちの大切さ」「アトピー性皮膚炎のケア」を子どもたちに伝えるアンソロジーが国土社から出ます。食物アレルギーによるアナフィラキシーショックのことを保育園児に伝える紙芝居が童心社から出ます。
 そんなことばかりしていないでちゃんと仕事せよと突っ込まれそうですが、この歳になって自分自身がいちばんわからない、というのがちょっと楽しみでもあります。
 今、どなたの文章を読みたいかな、と考えたときにまっさきにひらめいた、小児科の大先輩、日赤血液センターの長沼雄峰先生に、次のペンリレーをお願いしました。

 
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