トップ会長挨拶医師会事業計画活動内容医師会報地域包括ケア介護保険について月間行事予定医療を考える集い学校保健関連

<ペンリレー>

発行日2013/11/10
市立秋田総合病院  津田 聡子
リストに戻る
どっちの秋刀魚がおいしいか
 

 この会報が届く頃秋田はそろそろ木枯らしの季節であろうが、私が頭をひねりながら作成している今は街路樹が日に日に緑から橙赤色に変化している秋本番である。
 子どものころから魚を食べるのが好きで、秋の魚といえばサンマが好きだった。これは東西変わらないようで、宮城生まれの夫もサンマが好物である。頭と尾ひれ、背骨以外猫もなめるところがないだろうと思えるくらいきれいに食べる。夫の母も夫の同郷の友人も同じようにきれいに食べる。地元の魚であるサンマへの愛着の表れだろうと私はひそかに尊敬している。ペンリレーで指名して頂いた千葉先生も宮城のご出身である。千葉先生にもサンマの食べ方を聞いてみようかしら?
 スーパーの魚コーナーに行くとサンマを売っていて、よく夫は「脂がのってて旨そうだな」とか、「こっちの方が脂がのってそうだよ」とか言う。その通りに選ぶのだが、私は歳のせいかもしれないが、最近胸やけをするようになってきた。そんな時、実家で食べていた脂ののっていなかったサンマを思い出してしまう。その名の通り日本刀のようにすらっとして、厚みのないやせたサンマだった。
 オホーツク海からはるばる親潮に乗って南下してくるサンマは三陸沖から銚子沖のあたりでは肥えているのに、伊勢湾沖から紀州沖に来る頃にはすっかりスリムになっている。養殖される予定もないから、サンマの生態はあまり研究されていないらしい。そのスリムなサンマを焼いて大人はおかわり当たり前、一人2、3匹は食べていた。脂っこいと思った記憶はない、むしろさっぱりした魚で子供心においしいと思っていた。軽く塩でしめた塩サンマも定番の夕食メニューだったが、こっちでは生が十分おいしいせいか、スーパーでもあまり見かけない。缶詰やみりん干しはあるけれど、めったに見ないのが、サンマの開き、つまり干物。アジやカマスの干物と並んで干物の定番中の定番。しかし、全く見かけないのはサンマの丸干しであろう。どんな味がしたかもう忘れてしまったけど、祖母が七輪で焼いていて番を頼まれ、退屈でちょっと目を離したすきに野良猫にかすめ取られた、幼い頃の記憶は残っている。
 秋に実家に帰ることはないので、やせたサンマも実は高校卒業以来食べていない。今なら私はどっちのサンマをおいしいと思うだろうか?
 子ども達は小学生になり、骨を取ってあげるという親の申し出を断って、大胆にサンマと格闘している。哀れな姿になったサンマがかわいそうだが、これも成長の1ページだろう。いつの日か夫のように上手に食べられるようになってほしいものである。彼らが大人になって思い浮かべるのはやっぱり肥えたサンマだろうか?
 今年は二十年に一度の伊勢神宮遷宮の年にあたり、大いに賑わっているらしい。いいところなので是非大勢の方に訪れてほしいと願っている。少し足を延ばしてもらえば、故郷の松阪である。駅前は百貨店がつぶれて更地になり、本居宣長愛用の鈴の形の噴水を残してきれいさっぱりなにもなくなったが、松阪牛がある。霜降りの脂がすごい。私のように胸やけしやすい方には網焼きがお勧めである。
 次回は同じ病院で、診断に迷った時など相談にのってくださり大変お世話になっている、血液・腎臓内科の市川喜一先生にお願いしました。
 
 ペンリレー <どっちの秋刀魚がおいしいか> から