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<ペンリレー>

発行日2012/06/10
秋田赤十字病院  花田 巨志
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自転車で松島に行ってきました
 

去年の8月13日に思い切ってロードバイク(スポーツ自転車)を購入しました。20万円もしたけれど、ロードバイクの中では入門用に分類される比較的安価な機種です。主要な部分はアルミ製で重量はたったの8.4kg。一般的な自転車が20kg前後なので半分以下の重量です。タイヤの幅は親指ぐらいで、靴とペダルをビンディングで固定して走ります。最初に乗ったときの感想は「飛ぶように速い、そしてちょっと怖い」でした。短時間であれば30~40km/hのスピードを簡単に出すことができ、今までの自転車とは全く違う乗り物であることを知りました。
その後、徐々に長距離走行に慣れてきて、この自転車で仙台に行ってみたいと考えるようになりました。秋田から湯沢へ行って国道108号線で南東に進み、鳴子経由で古川へ行き、そこから仙台へ南下するコースだと約230km。途中で一泊して帰りは電車に乗れば何とかなりそうな距離です。今年のゴールデンウィークは前半にお休みをいただいたので、この機会に計画を実行に移すことにしました。ただし、目的地は仙台から松島へ変更しました。路上駐車の多い街中を自転車で走るのは危険なので。

4月29日(1日目)
 リュックサックを背負って自転車を漕ぐと体力を消耗する上に背中が蒸れるため、荷物は全て車体に固定することにしました。オルトリーブのサドルバッグ(L)を購入して座席の下に固定。これ1つで2.7リットルの容量があります。パンクしたときのために予備のタイヤチューブを2本、タイヤをはずすためのレバー2本、六角レンチなどの工具、ワイヤーロック、登山用の雨具の上下、速乾性のTシャツ、手拭い、携帯電話、予備の乾電池を入れてもまだ余裕がありました。車体には財布と水筒、携帯用空気入れを取り付け、ハンドルに速度計、前照灯、GPSを固定しました。ヘルメットをかぶり、胸に心拍数計を巻いて、ピタピタのサイクルジャージを着て、背中のポケットにカロリーバーを8本入れて準備完了です。支度に手間取り朝9時50分に秋田市の自宅を出発しました。
最初は交通量の多い国道13号線は使用しないで、農道を使って湯沢に向かうことにしました。メインで使った出羽グリーンロードは山を切り崩して作った直線的な道路なので自動車では快適に走ることができますが、アップダウンが多いため自転車にはしんどい道路であることが後になって判明しました。

13時58分(84km)
 湯沢に到着。コンビニでから揚げ弁当を食べました。発汗量が多いため甘いものより塩味を体が求めていることに気付きました。

15時ごろ(100km)
 道の駅おがち「小町の郷」を通過。観光客で賑わっていて駐車場に車が止められない状態でした。今までに1日で走った最長距離が106kmなので、ここから先は自分にとって未知の領域です。道の駅を通り過ぎてすぐに国道13号線から国道108号線へ分岐しました。日が傾いて気温は徐々に下がりはじめ、前方に見える山々を見て陰鬱な気持ちになりました。いよいよこれから峠越えです。

17時24分(128km)
 秋田県と宮城県の県境の仙秋鬼首トンネルを通過。トンネルの歩道は自転車が通れない幅でおまけに路肩も狭く、80km/hで走るトラックにビュンビュン追い抜かれて危険でした。トンネルの長さは3,527mもあり、このトンネルだけは二度と走りたくないと思いました。

18時50分(155km)
 鳴子に到着。コンビニで本日2個目のから揚げ弁当を購入。日没は18時30分なのでかろうじて周囲が見える状況です。暗くなってからロードバイクに乗るのは危険ですが、古川に行かなければ宿泊場所がないのであと30kmがんばります。寒いので雨具も含めてありったけ厚着をして出発しました。

20時41分(185km)
 途中で肉まんとシュークリームを補給して古川に到着。ここで宿泊場所を見つけられないと野宿になるので焦りますが、折角ここまで走ったのだから200kmの壁を越えたいと考えて古川の街中をぐるぐると走りました。21時30分に距離計が200kmを越えたので、目をつけていた宿泊施設に入りました。ちょっと恥ずかしいのですがラブホテルです。1階が駐車場で2階が客室になっていたので、盗難防止のために自転車を2階まで運びあげて玄関に入れました。しばらくするとフロントから電話がかかってきて「お車が無いようですが、タクシーでいらっしゃったのですか?」と聞かれたので、ドキドキしながらまあそんなところですと曖昧に返事をしたら、「お車でないお客様は最初に1万円をお預かりしています」とのこと。自転車で来たことを咎められることもなく、ホッとしながらお金を渡しました。その後、広いお風呂で衣類を洗って、冷蔵庫のビールを飲んでリラックス。倦怠感はあるものの10時間以上走った割には元気でした。持参したカロリーバーを1本食べて就寝。明日はいよいよ松島です。

4月30日(2日目)
 早起きして出発する予定が、チェックアウトぎりぎりの10時00分出発に。農道を走って古川から松島へ向かいます。走り始める前は体のあちこちが不平不満をブーブーつぶやいていたのですが、走りだして体が暖まってくるとみんなあきらめておとなしくなりました。

12時15分(35km)
 途中のコンビニでから揚げ弁当(今回3個目!)を食べて松島へ到着。天気はあいにくの曇りでしたが観光客が多く活気がありました。写真を撮って、今来た道を古川まで戻ります。

14時00分(66km)
 途中でいなり寿司とシュークリームを補給して古川に到着。ここから秋田に帰る手段は2通りあります。一つは自転車でさらに30km走ってJR鳴子温泉駅まで戻り、16時14分発の陸羽東線に乗って、新庄で奥羽本線へ乗り換えて秋田へ行くルート。料金は3570円だけど4時間47分もかかります。もう一つはJR古川駅で14時56分発の東北新幹線やまびこに乗り、盛岡で秋田新幹線こまちに乗り換えて秋田へ行くルート。3時間2分で着くけれど料金は9590円で最初のルートの倍以上かかります。迷ったけれどここは早くて楽な新幹線ルートを選ぶことにしました。携帯のモバイルsuicaを使って特急券と乗車券を購入。1290円安い8300円で買えました。これから自転車を分解・梱包して電車に乗せられる状態にしなければいけません。我々が「輪行」と呼ぶ手段です。まずGPSやバッグなどを自転車から外し、車体の上下をひっくり返してハンドルとサドルで立った状態にします。ロードバイクは車輪が簡単に外れる構造になっているので、これを外して前輪と後輪をワイヤーロックで束ねます。次に近くのコンビニで買ってきたゴミ袋とガムテープで車体と車輪を別々に梱包します。これで電車に乗れるはずです(混雑時には自粛すべきですが)。そして、ピチピチのサイクルジャージは恥ずかしいので雨具の上下を着込みました。改札を通り抜けるときにドキドキしましたが特に注意はされませんでした。袋に入った自転車は特例として「手回り品」として認められているため、追加料金は不要です。やまびこの指定席は3列シートの一番後ろを選びました。なぜならシートの後ろの空間に自転車を入れることが出来るからです。車内は空いていてすぐに盛岡に到着しました。次にこまちに乗り換えて、同じように最後尾のシートの後ろに自転車をしまおうとしたのですが問題が発生しました。こまちのシートは2列なので自転車がはみ出してしまうのです。これでは他のお客さんに迷惑がかかります。仕方がないのでデッキの端に自転車を置いて立ったまま秋田へ向かいました。

17時58分
 秋田駅に到着。ここで自転車を組み立てて2km離れた自宅に戻りました。2日間の走行距離は268km、休憩時間を除く走行時間は13時間28分、平均時速は19.9km/h。消費カロリーは約7500kcalでほぼ体脂肪1kg分でした。基礎代謝の分だけ食事をしていたら1kg痩せるはずですが、たくさん食べたので無理でしょう。機会があったらさらに遠くまで足を延ばしたいと考えております。
次回は秋田赤十字病院整形外科の鈴木哲哉先生にご執筆いただくことになりました。どうかよろしくお願いいたします。
 
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