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<ペンリレー>

発行日2011/08/10
あきたレディースクリニック安田  安田 師仁
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世界遺産巡り
 
 先日、日本でも相次いで登録された平泉や小笠原諸島は記憶に新しいが、文化遺産、自然遺産そして複合遺産などとしてユネスコから認定されているのが、世界遺産である。
 そんな世界遺産巡りが趣味になったのは、いつからだったか…思い返してみれば、NHKやTBSのシリーズものの影響だったか、勤務医時代から年に1回の夏休みの過ごし方を有意義に過ごすためだったように思う。海外旅行に行くときにはのんびりとリゾート気分でなどと思っていたが、普段から病院でせかせかと働いているせいか、数日で飽きてしまい、なんだか落ち着かない。そんな時、もっとおもしろいものがないかと考えていた。美しい風景や荘厳な建造物は数多くあると思うが、少ない時間を有効に、見ておくべきものを目に焼き付けておきたい…そんな気持ちからだと思う。

 オーストラリアには数多く、グレートバリアリーフ、ウルル-カタ・ジュタ国立公園(エアーズロックなど)、グレーター・ブルー・マウンテンズ地域、クイーンズランドの湿潤熱帯地域、シドニー・オペラハウス(!)などがあり、広大で美しい自然遺産が多い。
 インドネシアではジャワ島の大地震で寺院の石塔の一部が崩れるなどの被害を受けたボロブドゥル寺院遺跡群がある。
 タイにあるアユタヤー遺跡群はチャオプラヤー川周辺にあり、タイ人の人間性も相まって非常にゆったりとした時間、空間を体験した。
 イギリスでは古き良き大英帝国の繁栄を忍ばせるバースやストーンヘンジの遺跡は見事であった。
 スコットランドのエディンバラ(旧市街と新市街)はたまたま学会で訪れたが、新旧双方の調和の取れた町並みは、日本の京都を彷彿させ、数日間の滞在にもかかわらず再び訪れたいなと感じることしきり。

 などなど毎年テーマを決めて夏休みを過ごしていたわけではあるが、ここ10数年来、毎年候補に挙がっては消えていたのが、アンコール遺跡である。場所がカンボジアであり、比較的日本から近いが直行便は現在のところなく、タイのバンコク経由で行くことになる。自身の夏休みのシーズンは雨季で観光のローシーズンというのもマイナスポイント。また、近くに(日数の少ない夏休み気分を味わうための)リゾート施設もないと思っていた。しかし、大きな間違いであった。それ自体が世界遺産であり、美術品・芸術品であり、リゾート施設でもあった。昨年末の開業が決まり始めた時、もうしばらく世界遺産巡りなどできなくなりそうとの思いで、1週間すべてアンコール遺跡と言うプランを立てた。

 世界最大の宗教建築といわれるアンコール遺跡群。802年に創設され、12~13世紀に栄えたアンコール王朝の都城である。もっとも有名なアンコールワットは1113年に完成し、寺院、宮殿、霊廟のすべての役割を果たしており、ヒンズー教のヴィシュヌ神が祀られている。ユニークで独創的な造りはヒンズーに基づく世界観を表し、回廊は“陸と山”、周囲の堀は“海”を表現しているとされる。

 また、20世紀後半に20年以上続いた内戦で荒れ果ててしまったアンコール遺跡の修復には、大きな難問があった。内戦前まで遺跡の修復をしていた保存官たちがポルポト派に処刑されたため、地元の技術者がいなくなってしまった。この遺跡の修復には、石を扱う高度な技術が不可欠であり、人材を育成するため現地へ出向いたのが小杉さんという日本の石職人が活躍され、さらには上智大学などの日本のチームも丁寧な修復で評価が高いのも現地で知った。

 日本にも屋久島、姫路城や知床、先日加えられた2つなどすばらしい遺産がたくさんある。そのいずれも強く心惹かれるものである。人類共通の自然、文化遺産を訪れるにつれ、他のも観てみたいと言う衝動に駆られる。今のところ次のターゲットはモンサンミッシェルだが、産科診療を行っている間は秋田を離れることができないので、天気予報のバックに映る江ノ島に思いを重ねる日々であった。
 
 ペンリレー <世界遺産巡り> から